Phase3-After 説教! ポテチ事件
ミヅカは階段横のスペースで正座させられて、リョウに説教させられていた。"謎の箱"も、そこに置かれている。
「お前なぁ…………通りで、最近ポテチが無くなっている訳だ」
「だってぇ……腹減ってたんだもん…………」
「腹減ったとかの問題ではない。約束を破ったことが問題だ」
「ごめんなちゃい(´・ω・`)」
「謝る気ねーだろ」
「チッ……」
ミヅカは、どうにか許してもらおうと反省するふりを見せたのだが、すぐに見抜かれた。
「とにかく。この箱の中身。これ全部、俺が買ってやった奴だろ」
箱の中には、お○ぎ○せんべい、カ○ル、カ○○ーチョなどと、大量の菓子類があった。しかも、箱には酸化防止剤をが10個ぐらい貼り付けられていた。保存する気満々だ。
「仕組んでるなぁ……。こんなに持ち込んで、どうするつもりだ? 団員でもないのにさ……」
「非常しょk」
「何を言ってるんだ……。もういい」
そうして、リョウが下した判決は…………
「しばらくの間、俺は菓子類を買わない。お前の小遣いで買え。あと、こいつらは家に持って帰る。仮に、また持ってきた場合は……」
「は…………?」
「永久的にお菓子を買わないし、買わせない」
「ウボァァァァァ…………」
正座していたミヅカは、そのまま前に倒れ込んだ。気を失っている。
「何をそうする必要が……お前ら、見てたのか…………」
気付いたら、団員がこの光景を見ていた。
「あんた、母親みたいね」
ミハヤが、苦笑いしながらそう言った。
「黙れ」
『シスコンめ!』
団員が口を揃えて、リョウに既成事実を投げつけた。
「あぁ…………」
リョウも、気を失って倒れてしまった。
「本当に……双子ですねぇ…………」
「まぁ…………ね」
鹿児島本線の復旧は、急ピッチで進んでおり、現在は代行バスでどうにかしている。区間は小倉・折尾間と、折尾・直方間。
そして、延期された文化祭の前日の金曜日。ミユとサユリは、出店の最終確認が終わった後、2人だけ対策拠点室に残っていた。
「いや~。今日まで学校に来れずじまいだったからね。明日は、小倉駅と黒崎駅からバスを貸切って動かすけど……どうなるかなぁ?」
「まぁ、最終的にはいつも通りの文化祭になりそうですね」
「だね」
部屋の電飾を消し、照明を切り、2人は部屋を後にした。
場所は変わって、皿倉山。ここは、北九州市内を一望できる観光スポットだ。夜景は、全国屈指のものである。リョウは、そこの展望台の望遠鏡を使って、街を覗き込んでいた。まもなく、日が完全に沈む。
(こう見ると……先週と比べて、結構復旧が進んでいるな)
山の頂上から見える、鹿児島本線。ムカデ戦が終わった直後と比べて、復旧が進んでいる。線路は、新たに敷き直されている。
「街の光は……川崎にいた頃を思い出すな……」
幻想の中に浸かりきっていたリョウの肩を、誰かが叩く。
「誰……何だ、サユリか。何故そこにいる?」
「なんとなく会いたくて、ミヅカさんに電話で確認したら、『兄貴は皿倉山に行って、幻想に入り浸っているよー』と言ってましたから」
「そうか。……明日、本番だな」
「そうですね」
「会長として……どうする?」
「会長として……成功させなきゃ……」
「馬鹿を言え」
「えぇ!?」
まさかの回答に、サユリが声を裏返らせる程に驚いた。
「成功も失敗も、それぞれの店の話だ。美味しかったり、楽しかったりすれば、売れる。不味かったり、つまらなかったりすれば、売れない。盛り上がるかどうかは、それぞれの問題だ。会長としてなど、有り得ない話だ」
「そうなのですか……?」
「さあな。ただ……『最後まで笑っていろ』とだけは、会長に願いたい」
「……了解しました! 最後まで笑っています!」
街が闇に染まり、街の光が主張する景色を眺めながら、2人はそんな話をしていた。
「明日、文化祭が終わったら、ここでバーベキューでもしてみるか?」
「はいっ!」
「それまでは……笑っていろよ? 泣いたり怒ったりするなよ?」
「勿論です!」
――――明日は文化祭。明るく、楽しい文化祭。平和な……文化祭。
いよいよ文化祭が始まります。
ここまで辿り着くまで、かなり長かったなぁ……




