Phase3-4 必殺! 2人でムカデ殺し & ミヅカのポテチ騒動
小倉にいた、ミハヤを中心とするグループは、枝光駅まで戻っていた。ムカデが残した爪痕は大きく、線路がひん曲がり、九州工大前駅の駅舎も、ズタズタになっていた。
「線路沿いを走っているけど……これは、結構復旧に時間がかかるね……」
道路の横に、枕木やバラストが飛散した線路がある。そこを巨大ムカデが通ったというのは、すぐに分かる。
「うっわ……」
「他の所の被害は?」
「えーと……八幡駅ビルが倒壊、黒崎駅駅舎の損傷、アンダーパスの崩落……これはひどいね…………」
デバイスに追加された、情報検索機能で、タツヤが被害状況を確認する。それは、しばらくの間、電車が使えない程の被害だった。
「明日の文化祭どうするんだよ……」
「……バス?」
「延期だろ……」
「うわぁ…………」
4人の雰囲気は、非常に重苦しいものであった。
と、ミハヤがあることに気づいた。
「リョウ達……大丈夫……???」
直方市に突入した辺り。サユリは、リョウがムカデに喰われかけた所を助けた。
「遅れてしまって、ごめんなさい」
「何故……ここに……」
その質問に、秒を数える間もなく、サユリが答えた。
「だって、私は"望団の団長"ですから。この状況を、指をくわえて見ている訳にはいきませんから」
サユリは、座り込むリョウの横に座った。リョウは、サユリに…………
「その…………しつこく質問攻めして…………すまなかった」
謝罪した。リョウが、謝罪した。
「いいんです。変わらないといけないのは、私ですから……」
「そっちもそうなら、お互い様だな」
「リョウくんも、変わろうとしているのですね」
「ああ。望団に入って以降、今までの俺から、変わって言っている気がするからな」
ムカデが動けない間、2人が話し合う。そして。
「交際の話ですが、あれは…………」
「何だ?」
「…………あ、ムカデが立ち直りそうですね」
「邪魔しやがって。やるぞ」
「………はい!」
「背板を壊して……」「そのまま潰す!」
2人がレバーを動かした。必殺技を解き放つ。
「メタルニードル・スラッシュ・シューティング…………なんでもいいや!!」
鋼鉄で作られた巨大な針、刀、銃などで攻撃していき、それを内部から燃やしていく。それに耐えるムカデに、上から…………
「メタルマンホール!」
サユリが巨大な円盤を生み出し、それでムカデを潰した。さらに、リョウがそれを熱し、さらに追い打ちをかける。
「……オーバーキルな気がするが、生体反応が消えた。これで終わりだな」
「そうみたいですね」
「なーにいい感じになってるのー!?」
「ちょ、俺達が戦えない時に、そんな関係を……」
嫉妬しているかどうかはわからないが、ミユとハヤトが機嫌を悪くして戻ってきた。さらに。
「大丈夫!? 通信かけたけど応答しないし……ァ“?」
「仲が良さそうで……(ニッコリ)」
「爆ぜろ」
「さっきも似たような光景を……」
ミハヤ組も合流した。4人とも、リョウを睨んでいる。……これで望団が、久しぶりの全員集合となった
「で、2人はどうするの?」
「っ……」
ミユが、リョウとサユリに問いかけた。
「それは、文化祭の閉幕式で話します」
「……分かった。で、文化祭はどうなる? あの様じゃ、電車は使えないぞ」
電車は、しばらく使えない。この戦闘の影響で。……この辺りも、架線が千切れてしまっていた。
「あ……ちょっと連絡取らせて」
ミユが変身を解除し、電話で確認を取る。そして、その答えが出てきた。
「仕方が無いので、来週のどこかに延期して、電車が復旧しなかったら、バスを大量に借りてどうにかするって」
『何じゃそりゃ……』
…………文化祭は、延期となった。
"北原の力"を使って呼び出したバスに乗って、リョウ達は北附に戻っていた。
「そういえば、ミヅカはどうしてるのかな……?」
「あいつのことだ。拠点室で待ってるはずだ」
《珍章・ミヅカのポテチ騒動》
その頃、対策拠点室では…………
「ふぁ~~……うわ、もうこんな時間かぁ……」
机に伏せる形で寝ていたミヅカが起きた。時刻は、午後7時。
「遅いなぁ……あの機械で生存確認出来るかな?」
装飾を退かして、機械の電源を入れたミヅカ。付け方は、リョウが起動しているところを見ているので分かる。
「えーと……『現在地』でいいかな?」
そのボタンを押すと、画面に地図が出てきた。そして、赤や青などの点もあった。
「この点々が、現在地かな?」
適当に、ボタンを触るミヅカ。『照覧』というボタンを押した。
「あ、今帰ってきてる。黒崎辺りだから、もうすぐだね」
ミヅカは気を抜かして、椅子にもたれかかった。
(あー……かなり酷い被害になってるんだっけ……腹減った)
そう言って、対策拠点室の隣にある、『対策倉庫』に行き、そこにある謎の箱を開けた。その中には…………
「やっぱ、堅〇げポテトっしょ」
特大サイズのポテチを取り出し、倉庫の周辺を物色しながら(教師などに警戒しながら)急ぎ足で対策拠点室に戻る。部屋に入った瞬間に、袋を開けてポテチを食べ始めた。
「ブラックペッパーこそ至高~~」
幸せそうに、ポテチを嗜むミヅカ。
「ミヅカ……あいつのことだからな……心配しているだろうな……」
ミヅカのことを心配しているリョウ。
「兄貴……ま、待ってりゃ帰ってくるか。せっせとポテチを食べないと、バレちゃうバレちゃう……」
"謎の箱"の存在がバレることを危惧しているミヅカ。
「学食も開いていない。あいつのことだ。腹を空かせて待っているのだろうな……」
ミヅカの空腹を心配するリョウ。
「うっめぇ~~」
ポテチで腹ごしらえをするミヅカ。
「もうすぐ着くな。急いで戻らなければ……」
信号待ちしている間に、出口付近に立つリョウ。
「あー……時間が時間だ……バリケード作っとこ。バレたらまずいし」
リョウがいない間に、装飾された対策拠点室の出口(と入口)に、机などでバリケードを作るミヅカ。
「着いたな。先に行ってくる。待ってろよ、ミヅカ!」
ドアが開いた瞬間、リョウが全力疾走で校舎に入った。
「うげっ!? こんなに早く着くの!? ちょっと待ってよ、兄貴!」
リョウが全力疾走校舎内に入っていくのが見え、ミヅカが慌ててバリケードの質を上げた。
(申し訳程度に、サイダーでも買うか……)
足を止めて、自販機でサイダーを購入したリョウ。ミヅカの空腹を心配している。
(これで、バリケードは完成……早く食って、バリケードを解かないと……)
かなり焦って、ポテチをラッパ飲みしていくミヅカ。リョウにその存在がバレることを心配している。
「待ってろ……ッ!? ――――ミヅカの為なら……足を捻ってでもッ!!」
足を捻って転んでしまったリョウ。だが、ミヅカの為ならと、何事も無かったかのように走っていく。
「ゥゴゴゴゴ…………グフッ!? ――――バレるくらいなら……床に落ちたヤツも食ってやる!!」
硬いポテチが、刺さったように喉に突っかかったミヅカ。咳き込んだ勢いで、袋を落としてしまった。だが、バレない為ならと、床に落ちたポテチを、餌を喰う犬の様に食べる。
――――リョウが、対策拠点室に着いた。
「何故開かない!? ミヅカ!? おい!?」
開かないドアに、混乱するリョウ。
「ちょっと待って……マジで待って……」
小声で、思ったことが口から漏れたミヅカ。まだ、床に落ちたポテチを食べている。狩った動物を喰う獅子の様に。
(まさか……いや、そんな馬鹿な……飢え死に…………いや、置いていったことを苦にして…………!?!?!?)
ありえない事を考え出すリョウ。
(バレたら……てか、このお菓子、兄貴に買って貰ったやつだからなぁ……『家で食う』という約束付きで…………バレたら、二度とこれが食えない………………!?!?!?)
ありえる事を考え出すミヅカ。
「もういい……強行突破だ!」
後ろに行き、一息をついて助走をつけるリョウ。
「待って待って待って待って……………………」
とにかく全力で、ポテチを土下座する様に食べるミヅカ。
「おらァァァァァ!!!!!」
凄まじい勢いで、ドアを蹴飛ばしたリョウ。
「うっ!?」
飛んでくる、バリケードの部品(?)から逃げるミヅカ。袋は持ったままだ。
「ミヅカぁぁぁ!! 許してくr…………は?」
「うひぃ!? …………ワンワンっ! (∪^ω^) もぐもぐ……」
まるで、犬みたいなポージングをして、ポテチ片手に吠え(?)、口に何かを含んでいるミヅカを見てしまったリョウ。
「お前何食ってんだぁぁぁぁぁ!?!?」
廊下に響き渡る、リョウの怒鳴り声。その声は……
「あら……なにかつまみ食いしてたみたいですね」
「え? 対策拠点室には、何も無いはずだよ? メニューの材料も、明日搬入予定だったし」
「持参したのかな?」
のんびりと戻ってきていた、他の団員にも聞こえていた。