Phase3-3.5(Kokura Side) 激戦! 小倉駅には行かせない
Phase3-3.5は、2つに分けています。
巨大ムカデの一匹は、貨物線を経由して、小倉方面へと向かっていた。流石に疲れたのか、ムカデの移動速度は、130km/hから50km/h程になっていた。
「あっちにいったようね。戸畑で待ち構えるよ!」
「おっけー!」
「了解!」
「分かりました!」
ミハヤを中心とした小倉方面組は、戸畑駅でムカデを待ち構えることにした。
枝光駅の隣、戸畑駅。島式ホームの駅の下の方に、貨物線が通っている。そこで待ち構える4人。
「すごい地響き……そろそろ来るよ」
長さ約300mの巨大なムカデが正面から迫り来る。トラウマ確定のこの構図を目の当たりにしても、4人は怯えることは無かった。
「ムカデには……もう慣れた!」
「やらないと、色々終わる気がするからな!」
4人は、武器を手にして、ムカデへの攻撃を開始した。
「この電気も使えるよな!?」
タクミが、貨物線の架線に手をかけ、その電流を刀に蓄え、それをムカデに向けて放つ。攻撃を受けたムカデは、足を止めてその場に留まった。
「よし、思いっきり断ち切ってくれ!」
「分かった!」
タツヤが、クローでムカデを切断していく。切断と言っても、クローの冷気でムカデの一部を冷凍し、それを割る形である。これによって、ムカデの全長は、300mから70mぐらいになった。
「よっしゃナイス! ヒカリ、矢で動きを封じて!」
「ラジャー!」
ミハヤの指示で、ヒカリが矢を放ち、それがムカデに当たり続ける。しかし。
「うっわ!? なんか暴れてるよ!?!?!?」
切断したはずのムカデの残骸が、未だに動いていた。
「ムカデの生命力……ここまでだとは思わなかった」
「あーもう! 私が消す! 呑まれちまえ!」
ミハヤがレバーを動かした。杖を地面に突き立てて、必殺技を放つ。
「ハザードスパイラル!!」
地面に、巨大な渦巻が発生し、ムカデの残骸を飲み込んでいった。230mという長さの残骸は、その渦巻の中に消えて無くなった。
「エネルギー使いすぎた……。しばらく攻撃できそうにないかも」
「私に任せて! 早く処理……うわっ!?」
動きを封じられていたはずのムカデは、矢が刺さったままの状態で動き始めた。速度は、さっきよりも速く、200km/h程だ。
「速すぎるぞ……」
「どうすれば……」
絶望するタクミとタツヤ。しかし、ヒカリは……
「追っかけて足止めするから、急いできてね!」
そう言って、新幹線をも超える速さで、ムカデを追いかけていった。
「「うわぁ…………」」
あまりの速さに、2人は絶句していた。その視界には、もうヒカリはいない。
ムカデは今、九州工大前駅付近にいる。あと4km進むと、小倉駅に到達してしまう。200km/hで小倉駅の駅ビルに突っ込まれると、基礎から建物が崩壊する可能性がある。だから、4人は必死にムカデと戦っている。
ヒカリは、ムカデを全力で追いかけていく。時間が経つ毎に、ヒカリの移動速度が上昇していく。これも、光のデバイスの機能。
(急がなきゃ、小倉駅に……。何としてでも倒さなきゃ!)
さらに速度を上げていくヒカリ。その速度は、おおよそ400km/hだ。
一方で、タツヤが作った氷の足場の上を、氷の塊に押してもらいながら移動するミハヤ達。
「楽しー!」
「もっと速くできないのか!?」
「これが限界だよ!?」
150km/h。それが、3人の移動の限界速度。
楽しむミハヤ、急かすタクミ、頑張るタツヤ。そんな3人を、氷の塊が押していく。
西小倉・小倉間にある、北九州の代表格の川である紫川の上に架かる橋の辺り。
「おりゃあああああああ!!!」
少し速度を落として、300km/hで、横からムカデを蹴り飛ばすヒカリ。ムカデは、川の中へと飛ばされる。
「まだ終わらないよ!」
ヒカリが、川の中へと飛び込む。10秒後、ムカデが橋の上に打ち上げられ、ヒカリが水中から飛び出てきた。
「やっぱ、水中は……面倒臭いなぁ……」
そう言いながら、レバーを動かすヒカリ。
「今日も、私が…………輝くっ!!!!!」
矢を構えるヒカリ。弓のしなりは、限界を越えようとしている。そして。
「ライトニングストレート!!」
矢を放った。光の速さで、ムカデに矢が当たる。そして、爆発…………しなかった。
ムカデは、腹を立てたのか、ヒカリに突撃していった。
「嘘!? 何で!?!?」
この状況が理解出来なかったヒカリは、ムカデの突撃を正面から受けて、吹っ飛ばされた。
(このままじゃ……小倉が…………)
飛ばされたヒカリは、戦闘の行く先を嘆いていた。
ヒカリは、着弾するように小倉城下に墜落した。その衝撃はあまりにも大きく、ヒカリの変身は解除されてしまった。体への負荷が大きく、無傷なのに動けずにいた。と、そこに……
「ちょ、大丈夫!?!?」
「ミハヤ……ちゃん……」
ミハヤ達が到着した。急いで、ヒカリの元に駆け寄る。
「衝撃と負荷で動けないだけみたいね……。2人共、ヒカリを見ていて」
「「分かった」」
「ミハヤ……ちゃん……頼むから……おね……がい…………」
ヒカリは、ミハヤに小倉の運命を託すことにした。
「ヒカリをこんな目にあわせやがって…………この代償は大きいよ…………」
怒りに震えるミハヤは、即座にレバーを動かし、必殺技を発動させた。
「くたばれ……!」
杖を捨て、右手を空に挙げたミハヤ。その手には、おぞましい見た目の魔法弾。それは、次第に大きくなっていく。
「ハザードクラッシュ…………!!!」
ミハヤは、ムカデにその魔法弾を投げつけた。それが直撃したムカデは、溶けるように死んでいった。
「これで……おしまいみたいね」
変身を解除したミハヤは、ヒカリ達がいる小倉城下へと向かった。
「カッコよかった……!」
「ナイスだ!」
「凄いですね!」
小倉城下にいた3人は、戻ってきたミハヤを、明るく迎えた。
「どうにかなってよかった。ヒカリが居なかったら、今頃…………」
そう言ってミハヤは、ヒカリに抱きついた。
「だから……ありがとう」
「へへー。というか、ミハヤちゃんが居なかったら、どうなってたんだろうね……だから、ありがとう」
ミハヤとヒカリは、強く互いを抱擁し合った。
「あら^~……ははは…………」
「わぉ……」
タクミとタツヤが、その光景を見て顔を赤くした。
小倉方面へと向かう巨大ムカデ戦は、こうして幕を閉じた。
次回は、Nogata Sideです。