Phase3-3 暴走! 線路上のムカデ
翌日に文化祭を控えた北附。
――――それでも、サユリは来ていない。
「明日、会長が来なかったら……文化祭が成立するのかが分からんぞ」
「………仕方が無いから、僕達で店の準備をしようか」
サユリを除いた団員全員に、ミヅカが加わって、望団の出店を作っていくことにした。
対策拠点室を改造している間に、時間はあっという間に過ぎて、気付けば、午後7時を回った。
「どうにか、出来上がったな」
「弄りすぎじゃない?」
「ま、様になってるからいいか」
"ノゾミノエデン"。それが、望団がやるコスプレ喫茶の店名だ。
「コスプレ衣装持ってきたよー」
ミユが、コスプレ衣装が入った紙袋を、6袋持ってきた。リョウ、ミユ、ミハヤ、ヒカリ、サユリ、そして、団員でもないのに参加するミヅカの、計6人分だ。
「私の分は『メイド』で、ミハヤの分は『ツンデレ魔法使い』で、ヒカリの分は『天使』で、ミヅカの分は『バニーガール』……背丈合うかな?」
「合うんじゃない? 合わなかったら、スッポンポンで接客するけど」
「馬鹿野郎。そんなの俺が許さんぞ。お前の全裸を見ていいのは俺だけ…………あっ」
ミヅカの冗談に付き合ったリョウ。口を滑らせて、とんでもなく変態的な発言をしてしまった。
『このシスコンめが!!』
「あぁぁ……」
一斉に浴びせられたツッコミを受け、リョウが膝立ちの状態で、頭を抱えて唸った。
と、ここで微妙な大きさの揺れが。
「地震?」
「(震度)3ぐらい?」
「今までの"非日常"が起きた時の揺れは、こんな揺れではなかった。まさか……」
リョウが恐る恐る窓の外を見た。その、衝撃的な光景にリョウが言葉を失った。
巨大なムカデが、線路の上を走行していた。時速130km/h程のスピードだ。
「ムカデ………………何を考えている!? あれは線路の上にいる! 急がないと……」
「線路の上!? どっち方面にいってるの!?」
「2匹いる。それぞれが別方向に行っている」
2匹の巨大ムカデは、スペースワールド駅で離合(すれ違いのこと)し、互いに別方向へと進んでいく。駅舎は、ムカデの脚によって破壊され、架線もちぎられていく。
「前のムカデよりも、大きい……」
以前、ミユ達が倒したムカデよりも、一回り、二回り……いや、六回りぐらい直径が大きく、長さは15倍。電車で考えると、20m級車体15両分の長さ。関東基準で言うと、東海道本線とかの電車と、ほぼ同じ長さである。
「あんなものが小倉や博多に突っ込んだら、駅ビルが崩壊するのは確定事項だ! 3,4人の二手に別れて行動する!」
ミヅカを置いて、7人が屋上に出た。そして、右腕のデバイスのボタンを押す。それを、ミヅカは覗き込むように見ていた。
(兄貴……大丈夫かな……?)
ミヅカの表情は、不安で埋め尽くされていた。
7色の光と、7色の浮いている装甲が、北附の屋上を埋め尽くす。リョウ以外が、左腕のデバイスのレバーに手を掛け、例の掛け声を発する。
「「「「「「Go! RisingStreet!」」」」」」
「ぇ!? ……ぁあッ!」
何か取り残された気分になるリョウは、力に任せるようにレバーに手をかけた。
7人がレバーを倒し、浮いていた装甲が体に密着していく。基礎の装甲を装着し、独自の外装が着けられていく。
「うおぉ……痺れるカッコ良さだ……」
「そんなこと言っている暇はない。俺とミユとハヤトで博多方面に向かう。他は小倉方面へと向かえ。時間が無い」
『了解!』
リョウ達は、分担して2匹のムカデを倒すことにした。
アヤカは、そんな光景を校舎内から見ていた。
(早いね……私の出る幕は……)
「アヤカ~? ちょって来てー?」
「分かったわ」
(3人と4人……出る幕は無しのようね)
…………アヤカは、文化祭の準備を優先した。
次回は、Phase3-3.5ですが、Kokura Sideと、Nogata Sideの2つがあります。
まぁ、読み進むのに問題は無いので、安心して下さいな。