Phase2-2 発覚! 食堂キッス
「あの赤い子と……キスしてたよね?」
「!?」
リョウとのキスが、カスミにバレたサユリ。北附は、恋愛禁止ではないが、サユリにとっては、弱みを握られたも同然だった。
「何で知っているの……!?」
「ちょうど見ちゃっていたのよね。いやー、あっついキスだったねー^^」
サユリが赤面し、手を振り続ける。
「まだ言わないでよ!?」
「まだ言わないよー(言うには早すぎるし)」
カスミは、少し視線を外して、そう約束した。
一方で、1年5組。
「ちょ、リョウ……昨日、会長に呼び出されてたけど何があった!?」
「まぁ、"そういう事"だったな」
「ぐわぁぁぁぁぁ! 狙ってたのにぃぃぃぃぃ!!」
「おいおい……まぁ、先手必勝と言ったところか。俺が打った手ではないが」
リョウが、ハヤトにブイサインを見せ付け、若干口角を上げた。目は笑っていないが。
「めっちゃ腹立つなぁ……」
ハヤトは、そんなリョウをしかめっ面で見ていた。
昼休み。唐突に雨が降り、食堂で弁当を食べる望団とミヅカ。
「兄貴、ここで……キスしたの?」
唐突に、ミヅカが昨日の件の事を聞いてきた。
「ブフォッ!?」
「うわぁ!? タクミ!? カツ丼噴いちゃったよ!?」
ミヅカの発言に、食べていたカツ丼を噴き出したタクミ。
「げふぉっ……いや、お前、彼女いるのかよ!?」
むせながらも、事の真相を聞き出そうとするタクミ。
「まぁ、な」
「嘘だぁぁぁ……」
頭を抱えながら、ブリッジの状態になったタクミ。
「あらら……。取り敢えず、掃除しておいてね? タクミくん?」
「ハイ……」
思考停止した状態で、返事をするタクミ。
そんな有様を、食堂にいた全員が見ていた。気持ち悪がる者、腹を抱えて笑う者、食欲をなくしたのか、返却口に食べかけの丼を持っていく者と様々だった。
(皆に言わないと…………やっぱりダメですよね……)
少し時間が経ち、リョウとサユリは、2人きりで雨の中の巨大階段で話をしていた。リョウが差しているのは、2人が入りきるサイズの傘だ。2人は、その中で話している。
「大きな傘ですね」
「ミヅカは天気を読めない。昼から雨が降ることなどは知らない。その時の為の者だ」
「あら、そうですか。それはともかく、どうしてここに呼び出したのですか?」
「聞きたいことがあったからだ」
「ここで話さくても……」
「雨は……まぁ、なんとなく好きだ。夜には適わないけどな」
そう言って、傘をサユリに渡し、何故か雨に打たれに行くリョウ。
「雨に濡れる。それが、雨というものの真価だと、俺は思っている」
「風邪引きますよ……?」
「寒さとかで、俺は風邪を引かない。というか、寒いと元気になる」
「暑いと……?」
「まぁ……結構危険だな。話に移る」
サユリの方を向き、リョウはこう言った。
「何故……食堂で"あの事"を言わなかった?」
昼食の時、サユリは、「リョウと付き合っている」ということに触れていなかった。
「……ぃからです」
「雨の音のせいかは分からないが、声が小さすぎて聞こえなかった」
そう言われたサユリは、傘を投げ捨て、理由を再び言った。
「バレたくないからですっ!」
「何故だ」
「何故って……」
「――――何故だ」
「それは……まだ言えません」
「そうか……。と言うか、何故、俺に対して敬語を使う?」
サユリは、これまで望団の団員らには、必ずと言ってもいい程、敬語を使っている。
「敬語じゃないと……不安なんです。親友にはあまり使っていないのですが」
「親友>彼氏……か」
「そういう訳では無いのですが…………そうなのかもしれませんね」
サユリが、その場から立ち去った。
リョウも、投げ捨てられた傘を拾って、校舎の中へと入っていく。
(何かあるのだろうな…………)
何かがある。リョウは、そう察していた。
「ほーう……面白いことになってるね」
何人かの生徒が注目しているが、その中で、カメラを構えた者もいた。
放課後の対策拠点室。そこに、サユリの姿はない。
「あれ? 会長は?」
「何で居ないの?」
いつもは居るのに、今日は居ないサユリ。
「――やっぱりか。何かあるに違いない」
やっぱりか。リョウはサユリに何かがあるとそう確信した。
「やっぱりって?」
「今日の昼食だ。その時、サユリは俺と付き合っているということを全く口にしなかった」
『はぁ!?』
「いや、彼女って、会長かよ!?」
「ちょっと、あんた! 何を言っているの!?!?」
「リョウ!?!?!? 嘘でしょ!?!?!? 私と結ばれる運めiグファァァ!!」
リョウがミユにデコピンをかまして、続けてこう言った。
「それについて、昼食後に本人に聞いた。その答えが『バレたくないから』らしい」
「何それ?」
「知るか。それで、今回の活動だが、"サユリの親友"と接触することから始める。そいつに出会えば、サユリの本心が分かるだろう」
「どうしてそう言えるの?」
「サユリは、普段、俺たちに敬語を使っている。だが、その"親友"にだけは使っていないと、本人が言っていた」
「じゃあ、今日の活動は決定だね」
ということで、"サユリの親友"を探しに行くことにした。
「先生に聞いてきたけど、どうやら3年3組の"下田カスミ"って人がそうらしいね」
ミユがリョウの元へ駆けつけ、報告した。
「そいつは今、どこにいる?」
「写真部って言っていたね」
この学校には、写真部と、それに付属する新聞部がある。その2つは、教室棟Cにある"北附ギャラリー"で活動している。
「そこに行くか」
ということで、望団総出(ミヅカ含む)でギャラリーへと向かうことになった。
ギャラリー。ここには、写真部が撮った写真や、過去の新聞、そして、これまで北附の部活動で手に入れたトロフィーや賞状が飾られていた。それらの飾り方も、回転したり、宙吊りと様々だ。
「あそこにいるのは……カスミ……さん?」
窓際に立つ、黒い髪でショートカットの女子。外を見ている。
「望団……部活に用? それとも、私に用?」
彼女は振り向き、そう言った。