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Phase1-2 思索! 将来と模擬店

「私が死んでしまったら、望団はどうなりますか?」


リョウが、サユリに衝撃的な質問をぶつけられた。


「死ぬなど……デバイスを使用している以上有り得ない話だ。数字で見ても、攻撃を受けて死亡するのは天文学的確率だ」

「もしも、それを引いてしまったら……?」

「…………考えるだけ無駄だ。生きることに集中すべきだ」

「そうですよね。あと……」


サユリがリョウの肩に手を乗せて、こう言った。


「敬 語 を 使 う こ と を 気 に か け ま し ょ う ね ? ? ?」

「っ!?!?!?」


思わず、リョウが頷いた。久々に感じた、殺意に近い威圧。


と、ここでチャイムが鳴る。午前8時35分よりHRとなる北附では、20分と30分に予鈴が鳴るシステムとなっている。


「あと15分で始業ですね。そろそろ教室に戻りましょうか」

「また、放課後に対策拠点室で……」




HR中の、3年1組。ここが、サユリが在籍しているクラスである。


「文化祭の内容は、書類上は『たい焼き屋』で、実際には『タイ料理店』ということでいいか?」

『問題なしでーす』


このクラスでも、書類上で行うことと実際に行うことが異なるようだ。


サユリは、クラスの事は学級委員らに任せている。このクラスの模擬店計画においては、モブキャラのような存在である。


(タイ料理ですか。望団の模擬店の候補にはなりませんね……。刺激が弱すぎる気がしますね。学級にあまり関わらない自分が言えたことじゃないですが)


サユリは、そんなことを考えていた。そして、例の話についても考え込んでいた。


(私が団長である望団……。団長がいなくなった場合、望団が成立するかの話ですよね……。リョウくんは団長になるには無理がありますし……ミユちゃんか、タクミくんかのどちらかですかね……。それとも、考えても無駄なのでしょうか……。難しい話――――)

「おーい上村ー。どうしたー?」

「あっ、すみません」


考え込みすぎていて、話を全く聞いていなかった。


「生徒会とか望団とかの話は知っているが……少しは学級の店にも参加してくれよ?」

「あ、そうですよね……」


サユリが苦笑いしながら返事をした。




一方で、リョウとハヤトが居るクラス、1年5組。


「文化祭のお店のどうしようかねー?」

「去年一番盛り上がったのは、チアリーディング部に水着バーだったっけ。史上最速で売り切れたんだって」

「そんなこと出来るわけないじゃん」

「今年はそれは出来ないよ。あまりにも強すぎて、反則行為になったから」

「まじでー?」


女子達が、クラスの模擬店について考えていた。と……


「あ、待ってよ……?」


そう言って、話に参加した女子全員がリョウを見た。リョウは、机に伏せる形で寝ている。


「リョウの見た目を活かせば……!」

『なーるほど!』

「これは優勝確定かな」


リョウが知らないところで、クラスの模擬店の話が進んで行く……。




放課後、対策拠点室にて。


「ということで……ネタは見つかりましたか?」


朝に、「どういう模擬店をするか盗み聞きしてこい」という任務が与えられていた団員。まずは、タクミとタツヤが言及する。


「メイド喫茶、女装&男装カフェ、ライブハウス……2年は非常にバラエティに富んだ内容となるそうですね」

「やはり喫茶店が多いのですか……。他になにかありませんか?」


全員、首を横に振る。これ以上は、何も無い。


「うーん……リョウくんの見た目なら、客寄せは確実に可能ですね。ですが、喫茶とは言っても……あ、コスプレ事件の時のアレは残っていますか?」

「あぁ、そうだ……ミヅカが捨てるなと言うから……」

「そうですか……あの姿、可愛らしかったですよ?」

「うわぁぁぁぁぁ!」


リョウが、頭を抱えて対策拠点室から逃げ出した。


「あらら……流石に言いすぎてしまいました様ですね……」

「まぁ、リョウの性格が性格だからね……」


その場にいた全員が、ミユの発言に頷いた。




「まじで何なんだ……」


走り続けて、リョウが辿り着いたのは、食堂だ。この時間は、学食などの提供は行っていないが、展望室として機能している。そこには……


「何故、あなたが此処に居るのかしら?」


室内に差し込む夕日を背に、リョウに近付いて来るアヤカが居た。


「お前こそ、何故此処に居る」

「質問に質問で答えて貰いたくないけど……この景色。ここからは、汚い人間が作り上げた街がよく見えるわ。あったはずの自然を破壊し尽くした結果が、ここにある。こんな世界は……本当に嫌いだわ」


聞いてもいなのに、急にアヤカはこの世界に対する憎悪を言い放った。


「ああ、そうか。だが、お前もその世界で生きているだろ」


その世界に生きている。その言葉を聞いたアヤカが、高笑いした。


「笑わせてくれるわね。当然じゃないの。そうでもしないと、変な目で見られてしまうじゃない。全く持って不本意だけど」

「全く……どういう育ち方をしたら、そんな思想になるのだろうな」

「やはり、あなたも私の事をひねくれた目で見ているのかしら?」

「まあ、俺だってひねくれているのだろうし、似た者同士って所か」

「あなたと似ているだなんて、これほど屈辱的なことは無いわね」

「全く……お前はいつも俺に対してはこんな態度だよな」

「“あんなこと“があったら、あなたを嫌うのは当たり前でしょ……」


独特の雰囲気の中で、2人は会話をしていた。


「さて……俺はそろそろ対策拠点室に戻る。お前はどうするつもりだ?」

「望団に用は無いわ。では、さようなら」


アヤカは、足早にその場から離れた。


「“あれ“は……俺のせいじゃない……」


リョウの脳内には、とある記憶がフラッシュバックされていた。




学園法人北原学園が運営する孤児院、『天使の花園』に入っていた、リョウとミヅカ。


ある日、同じ孤児院にいたアヤカとリョウが話していた。


「リョウ……本当に、人間共は汚いよね」

「そうだな。勝手に息子を捨てるクソ親がいる訳だし、そういうことなのだろうな」


この時までは、2人の仲は良かった。だが……



2013年12月24日、クリスマスイブ。


「ちょっと、リョウ!? 何故、私のクッキーが……」

「知るか。誰かが間違えて食べたのだろうな」


自分のクッキーが無いと訴えるアヤカ。それに答えたリョウの口には……


「何故、口の中にクッキーがあるのかしら?」

「俺のクッキーだ。間違えるな――」

「やっぱり、あなたも嘘つきなのね。失望したわ」

「何を言っている?」

「もういいわ。あなたとは今日をもって関係を断つわ」


あまりにも、子供っぽい理由で仲が悪くなった2人であった――――




(全く……いつまでそんな話を引きずっているんだ……。馬鹿らしい)


リョウは、そう思いつつ、制服のポケットに手を突っ込んで対策拠点室へと戻って行った。

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