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Phase4 初友達

深夜0時30分。ミヅカは寝ているが、リョウとハヤトはベランダで話をしていた。


「そういえば、何故あんなに接近してきたんだ?」

「いや……なんとなくだ。『友達』というのは、そういうものだろ? この本を参考にした」


リョウが、持っていた本をハヤトに見せた。だがそれは……


「ちょ、これBL本じゃねーか!」

「どういう物だ、『BL本』とは」

「まぁ……『アッー!』な展開が多く……少なくとも、それの定義する『友達』は『友達』を超えてしまっている。というか、何故それを持っている」

「ミヅカが、『友達から貸してもらったー!』とか言って、俺に差し出した。それはともかく、お前は恐らく、重大な勘違いをしている」

「するだろーが! あんなに接近されたら……」


ハヤトの顔が、少し赤くなっていた。


「何故、顔を赤くしている? 一応言っておくが、俺は女ではないぞ」

「分かってる……。だが、お前は……どこを辿っても『かわいい』という言葉が入ってくる程にかわいい」

「はぁ……あまり言っても無駄だろうな。で、何を話す?」


リョウが、ハヤトに話の話題を決めることを委ねた。


「そうだな……。あ、そういえば『柔らかい話』とは何だ?」


柔らかい話。例の選択は『堅い話』から始まっている。


「まぁ、簡単に言えば、『友達になって欲しい』だ」


その発言を聞いたハヤトは、こう言い放った。


「馬鹿かお前は」

「は……?」


ハヤトのいきなりの発言に、リョウが困惑する。


「お前は何を言っている。既に友達だろ? そうでも無いとゲーセンで遊んだりしないし、戦い続ける選択もしない」

「そうか……。それが、『友達』……。もっと教えてくれ。俺にはそれに関する理解が足りていない」

「よーし。では、最初の質問。『ともだち』で、即興あいうえお作文を作ってみてくれ」

「!?!?」


あいうえお作文。以前、リョウがミユとミヅカの監視下で行い、散々な結果に終わったアレ。


(あの時と同じ答えは言えない……。すぐに考えなければ……!)


リョウは、内容を30秒程考えていた。


「早くしないと『即興』じゃ無くなるだろ」

「よし。今から言うぞ。」

「おっ、来い!」


リョウが、短時間で考えた作文を発表する。



「と……りあえず持つべき物なのかもしれないが……


も……っと増やした方がいい物だろう……


だ……からと言って過信すると後悔する可能性があるし……


ち……ょっと考えて接しないといけない存在……


――――こんなものか……?」



その作文を、ハヤトが評価する。


「まぁ、間違いではない。持つべき物なのは確かだ。だからと言って、信用しすぎると裏切られた時の後悔は凄まじい物でであるのは予想がつく。まぁ……考えて接する存在ではあるかもな」

「そうか。……とりあえず、俺はお前を信用してみたいと思っている。その場合、どういう括りになる?」

「その場合は、『親友』となるな。…………っておい!? 嘘だ!? 親友!?」


いきなり、ハヤトが動揺して、座っていた椅子から転げ落ちた。尻を打ち、痛そうにしている。


「あぁ……痛ってぇ……」

「何故そんなに動揺する……?」

「だって……まさか今の俺に親友ができるとは思わなかったからな……。本当に……俺を信用してくれるか……?」

「まあな。俺をこんな気持ちにさせたのはお前が初めてだからな。ミヅカと接している時とは違う、この感覚。心の温もり方が異なる感じがする。感じたことの無い感覚だ」


リョウがそう言うと、次第にハヤトの目から涙が溢れて来た。


「そうなのか……。行橋隊が壊滅して、友達なんか出来るはずがないと思っていたのに……。家族が殺されて、もう何もすがるものがないと思っていたのに……。お前は……俺の心に魔法をかけてくれた……」


ハヤトがリョウの肩に手を添えて、


「だから、俺はお前に言いたいことがある……」


リョウの耳元でこう言った。



「こちらこそありがとう……!」



その言葉に、リョウがこう返した。



「どう……いたしまして」



……気付けば、ハヤトが泣き崩れていた。


リョウは、ハヤトの背中に手を添えた。


そして、少し口角を上げていた。






数日後の朝、学校にて。


「おはよう、リョウ。これからもよろしくな!」


普段、学校で見せる静かなハヤトとは全く違う、元気なハヤト。あまりの違いに、クラスメートがハヤトの方を見ていた。


「おい、見られてるだろ……。まぁ、おはよう。家でも言った気がするけどな」

「いやー。本当に面倒だったな。警察やら役所やらで色々面倒だった。公欠扱いになったから良かった」


1連の事件で、ハヤトは警察の取調べや、引越しの手続きなどで忙しく、学校に来れずじまいだった。


「もう、大丈夫なのか?」

「ああ。いつまでも悔やんでも、何も変わらない。それは、行橋隊の事件から教わった事だ。心を入れ替えて、今日も俺は頑張っていく。お前も頑張れよ?」

「そうだな。頑張れよ」


リョウとハヤトが、グータッチをした。その拳が合わさる音が、教室中に響き渡る。すると……


「ハヤトくん……結構イケメン!?」

「ちょっと話してかない?」


ハヤトに、女子が群がっていく。あまりの群がり様に、リョウが逃走し、ハヤトが困惑していた。




教室の外。リョウは、女子の対応に困っていたハヤトを見ていたリョウ。そこに、ミヅカがやって来た。


「ハヤト……人気者だね」

「ミヅカ、いつの間に……?」

「まあ、気にしない気にしない。――――リョウも、あれぐらい人気になれる素質はあるのにね」

「群がられるのは嫌いだ」

「勿体ないなぁ……。ま、いつかそうなる日が来るよ。早いか、遅いかの話だけど」


双子は、そう話し合いながら、女子に弄ばれるハヤトを見ていた。






――――北原……何が「よろしくね」だ。状況説明ぐらいまともにして欲しい。


……誰だ、あの女子は? 何故ここに入って来る? なぜ近付いて来る?


「リョウ……よろしく」


言葉足らずな感じがするな……。俺と似ているか? とりあえず、挨拶はしておくか……。


「――――よろしくな」

「よろしくね! なまえは?」

「おいミヅカ!? いきなり名前を聞いてくるか!?」

「あにき、いいでしょ?」

「…………」


やはり、ミヅカのノリには付いていけない。名前は明かしたくない……。せめて、姓は隠しておくか。


「西原……リョウだ。こいつはミヅカだ。一応よろしく」

「何故名前を出すのに戸惑っているの? 隠す必要は……」


まずい。詮索されている。ここはどうにか……


「あにき、なまえは『ひg』……」

「絶対に言うな! 殺されるぞ!?」

「え……うん」


全く……バレたら大変なことになるんだよ……。親は…………。




その時は、あの女子の名前を聞かなかったな。俺がその名前を聞いた時の話は、また次の機会にでもするか……。

言っておきますけど……行橋は市民が暴徒化する街ではなく、平和で発展中の北九州のベッドタウンです。


北九州の人口はワースト級で減少中ですが、行橋の人口は地味に増加中。遊び以外は多分、なんでも揃うはず。


ここで……筆(というか、指)を置いておきます。

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