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Phase3-5 選択は

戦い続けるか、戦うのを辞めるか。ハヤトがその選択をリョウから突き付けられてから2時間が経過した。時刻は、23時過ぎである。


「俺は……」

「何を戸惑っている。早く決めないと、互いに寝られないだろ」


手すりに肘を立てて、頭を抱えて考え込むハヤト。


ベランダにある椅子に座り、その姿を見続けているリョウ。


――――しばらくの間、その状況は変わらなかった。




「兄貴達遅いなー」


家の中で、ミヅカはテレビを見ながら2人が戻ってくるのを待っていた。アヤカが帰宅し、ひとりぼっちだ。


「ちょっと覗いてみるかぁ……」


ミヅカはベランダをこっそりと見ることにした。




「…………どうするんだ。選択する時間は幾らでもあるぞ」

「どうするって…………」


戦い続けるか、戦うことを辞めるか。ハヤトは、悩みに悩み続けていた。その脳内は、こうなっていた。


(辞める……俺が戦う理由は『行橋のため』だっけな。それが破綻……というか、それを歓迎されなかったからな……。だけど……それだと、ただデバイスを盗んでちょっと戦って逃げるチキンになってしまう……)

「早く決めろよ……」


長々と考え込むハヤトに、リョウが呆れていた。すると、リョウがあることに気付いた。


「風……少し強いな」

「海に近いからだろ」

「いや……30秒間隔で風が吹いている……まさか」


リョウは、デバイスのとあるボタンを押した。


「何だ!?」

「サーチライトだ。夜間でも戦闘しやすいように追加しておいて良かった」


デバイスから放たれる強力な光は、5km先位までの闇を照らす。その光に、巨大な影が通過した。


「やはりか。俺だけで行く。戦いたければ、戦え。この質問の答えは、俺がアレを倒すまでだ」


そう言ってリョウが変身し、窓から飛び降りる。


「おい!? ……まぁ、デバイスがどうたらで無事なのだろうけどな……」


と、焦ってミヅカがベランダに駆け込む。


「兄貴!? え!?」

「変身済みだな。問題ないだろう」

「うおぉ……いきなり自殺したのかと思った……。――で、ハヤトはどうするの?」


唐突に、ミヅカが話の続きを始めた。


「え……俺……は…………」





リョウは、巨大な影と交戦中。リョウは、こう推測する。


(鳥であることには間違いない。夜間に見えにくいことから、高確率でカラスだろう。ただ……なぜ旋回し続けている……?)


その影は巨大なカラスであると考えた。しかし、なぜ旋回し続けているのかと疑問に思っていた。そこで、リョウは追跡を止め、マンションの屋上に移動した。


(ここに来たら撃ち落とす。必殺は……出来ればでいいか)


旋回し続けているカラスは、リョウの姿に気付いたのか進行方向を変えて、リョウがいる屋上へと突っ込んでいく。


(かかったな。必殺技を発動する猶予もある。これで……)

「潰す!」


レバーを動かし、いつもの様にエネルギーを溜め続ける。そして、それを放つ。


(これで……討伐だな)


カラスが燃え上がり、堕ちていく。リョウは、生体反応を確認せずに変身を解除し、家に戻ろうとしていた。


(もう時間が時間だ。早く寝ないと……)


リョウが階段を下っていこうとした……が。


(何か暑い……熱い……まさか!?)


熱気を感じたリョウが振り向いた。そこには……


「火の……鳥……!?」


燃え上がって堕ちたはずのカラスが、翼を広げて鎮座していた。燃え上がるカラスは、熱気をリョウに投げつけていく。


(変身を解除してしまった以上……為す術が……)


炎を纏ったカラスの近くにある金属類が溶けていく。溶けた金属の柵が落ち、街路樹に直撃する。その街路樹は、その熱によって燃え上がる。その炎が、別の街路樹に移る。周囲は、まさに地獄絵図とも言える状況になってしまった。


(炎が……変身を解除していなければ、このくらい操ることはなのだが……俺は愚かだ)


ただ立ち尽くすリョウ。ここから逃げるという選択肢は、その脳内には無い。そして、リョウは空を見上げてこう呟いた。


「なぁ……俺って……ここまで愚か者だったか……? 誰か答えてくれ……」

「その答えは、ノーだ!」

「ッ!?」


聞き覚えのある声が、下の方から聞こえてくる。下から吹き上げる、凄まじい風と共に現れたのは……


「お前……戦い続ける……のか?」

「そうだ。だが、その話は後だ。今はこいつを片付ける。リョウは引き返せ。そこにミヅカがいる。心配してるぞ」


変身済みのハヤトだった。少し笑っている。


「そうか……。分かった。負けるなよ……?」

「負けてたまるか。こんな展開で負けるバカタレが…………居てたまるか! 荒らす!!」


リョウは、階段を下りてミヅカと合流する。そのまま、自宅へ戻る。


ハヤトは、レバーを動かし、両手にナイフを構える。


「トルネードフィニッシュ……!」


技名を言い放った瞬間、轟音と共に燃えるカラスが放物線を描いて吹っ飛ばされた。カラスは、山に激突した。炎は風と共に消えていった。


「生体反応は……無いな。これ、山の方まで分かるのか」




日付が変わる頃に、ハヤトが帰宅した。ドアを開けると、リョウがハヤトを見上げる形で待ち構えていた。


「リョウ……何だその目は……」


リョウは、申し訳無さそうにハヤトを見上げ続ける。


「何か言えよ……」


そう言われたリョウが、言葉を発した。


「俺達と……俺と……戦い続けてくれるのか……?」

「当然だ」

「またあんなことになってしまったら、どうする……?」

「そんなものは運命だ」

「歓迎されなくても……批判されても……か?」

「批判された如きで挫ける訳にはいかないな」

「何があろうとも……なのか?」

「当たり前だろ?」


そして、リョウが下を向いてこう言った。



「――――ありがとう」



下を向いたリョウは、目線を上に向けてハヤトを見た。


(うおっ……可愛い……まじで……男なのか……?)

「何を考えている?」

「ぅあ!? 何でもない!」


リョウがハヤトに接近する。


「え、ちょ!? 近いよ!? 近すぎるよ!?」

「お前は……本当に……」


リョウが、ハヤトに顔を近付けていく。


「近すぎるってば!?」

「本当に……」


「待てぇぇえええええ!?!?!?!?!?」


「「!?」」


ドアを乱暴に開けたミヅカが乱入してきた。


「兄貴!? ハヤトと……まさかっ!?」

「何を勘違いしている!? お前の思考回路は可笑しいぞ!?」

「いや……いきなり顔面を接近させてきたらそう思うだろ。身長差がありすぎるけどな」

「うるせぇよ!」




同じ時刻、マンション下では……


「……私の出る幕は、無かった様ね」


アヤカが変身して到着したが、既にカラスは討伐されていた。木々の火災も、消防により鎮火された。


「リョウ……あなたは今日だけで物凄く成長したでしょうね。私が知っているリョウは、今日はあまり見られなかった。…………私も、少しばかりは変わらないとね」


そう言って、自宅のある小倉へと引き返して行った。

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