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Phase3-1 再訪問

日曜日。


リョウは、1人で電車に乗って行橋まで向かっていた。


(ハヤト……少しは気が合うのかもしれないが……)




行橋駅に着き、昨日ハヤトと出会った道に行く。


(ここで待っていたらハヤトが来るだろうか……)


リョウはマンションの前に立ち、ずっと待っていた。スマホなどは持っていない為、空を見ながら待ち続ける。




1時間経過。


(少し気温が……。あまり気温が高いと、かなり危険だな……。日陰に移るか)


リョウは、電信柱の影に身を移した。




2時間経過。正午を回ったところだ。


(頼む……出てきてくれ……)


買っていたおにぎりを食べながら、待ち続ける。




3時間経過。リョウは電信柱に寄りかかっていた。


(暑い……暑すぎる……もうそろそろ限界か……よく耐えてきた…………ん?)


マンションに入っていく人影。見覚えのある姿。


――――ハヤトだ。


「待て……待ってくれ……」


リョウが、よろめきながら走って向かう。


「うわ!? なんでここにいるんだ!?」

「ハヤトだな……? 話がある。どこかで……」

「家に上がれ。そこで付き合ってやる」




マンションの10階の一番端。そこが、ハヤトの住む部屋。


「今日は親が買い物に出ている。妹が居るが、気にしないでくれ」

「お前にも妹がいるのか」

「いるぞ」


ハヤトにも、妹がいることが判明した。その妹が迎えに来たが……


「おかえり……誰? その女。お兄ちゃんは私の……」


妹は、ズボンからバタフライナイフを取り出した。


「あ、こいつはこの見た目でも男だ。多分な」

「ふーん。じゃあ、実験開始」


そう言った瞬間、妹がリョウの股間に向かって、ドロップキックをかましてきた。


「んぐあぁぁ…………」


リョウが蹴り飛ばされ、股間を抑える形で倒れ込んだ。悶絶している。


「あ、本当に男のようだね。ごめん」


妹が、手に持っていたナイフをしまう。


「ハヤト……どういう教育をしたらこんな妹が出来上がるんだよ……」

「俺のせいじゃない。スズカ、あまり俺に依存しすぎるなよ?」

「へーい」


そのまま、ハヤトの部屋へと向かう。


「な……遺影……」


部屋の壁に掛けられた、6つの遺影。


「行橋隊の面々だ。本当にな……何でd」

「お兄ちゃん? またそんなことを考えて……キリがないって」

「あ……すまないな」


またも、昨日のような感覚に陥りかけたハヤトだが、スズカのおかげでどうにかなった。そして、ハヤトが提案する。


「ここは、1つゲームをしよう。このケースの中から適当に選べ」


そう言って差し出した、カセットケース。色々とゲームがある中で、リョウが選んだのは……


「これで行く」

「マ○カーか。またレースゲームか。ま、いいけどな」

「何かズルいから、仲間に入れて?」

「勿論、おkだ」


カセットを差し込み、ゲームを起動する。スズカも参加し、3人対戦となった。


キャラ選択。


「ま、俺はモー○ンだな」


ハヤトは、モー○ンを選んだ。


「ま、ノ○ノ○で行くか」


リョウは、ノ○ノ○を選んだ。


「可愛いから、ヨ○シーで」


そして、スズカがヨ○シーを選んだ。


カートのパーツを選んでいく。


ハヤトはバランスの良く、リョウはコーナリング重視で、スズカは加速重視でパーツを選んだ。


「ステージは適当に決めていくからな」


そんなこんなで、最初のステージは、『エレクトロドリーム』となった。


「お兄ちゃん、いきなり自分が得意なところ選んできたねぇ」

「狙ったわけじゃないぞ」

「カウントダウン始まってるぞ」


「「あっ」」


カウントダウンに気付かず、リョウだけがロケットスタートを切る形となり、ハヤトとスズカが出遅れた。


「「ハメたなぁ!?」」


「畜生! 私のカートの加速を舐めるなよおおお!?」


加速重視のスズカは、凄まじい加速でハヤトを置いていく。


「ちょ……待てぇぇぇぇ!」


ハヤトは、必死に2人を追いかける。コースアウトギリギリの所でドリフトをし、必死の追い上げを図る。


「よし、1周目は無事に通過したか」


リョウは2週目に突入した。スズカも、所持していたキノコを使い、ショートカットする。ハヤトも、パワフルダッシュキノコを使い、必死に2人を追いかける。




3週目中盤。


「このまま俺の勝ち……なっ」


リョウは、スズカと1位争いをしていた。が。


「お兄ちゃん!? 私を巻き込んじゃうよ!?」

「知るかあああああ!?」


ハヤトによって、ト○ゾーこうらが放たれた。リョウを追いかけていく。そして……


「くそ……」

「巻き込まれたぁぁぁ!」


こうらがリョウに直撃。その爆風で、スズカも吹っ飛ばされる。


「これがマ○カーだぞ!」


2人が立ち上がる前に、ハヤトが追い抜く。結果は……


「いぇーい」

「お兄ちゃん……」

「お前、空気読めよ」


ハヤト、スズカ、リョウの順番だった。


「次行くぞ……」




2戦目、3戦目も……


「お前、アイテム運がいいだけだろ」

「んな訳あるか」


ハヤトがトップだった。


「お兄ちゃん……勝たせてよ……」

「運も実力の内だ」

「いや、お前アイテムで遊んでるだろ。真面目にしろよ」


そのまま次のレースへと……と、その時。


「お兄ちゃん……揺れてる?」

「そうだな……まさか」

「少し、外を見てみるか」


凄まじい地鳴り。それを聞いた3人が、外を見る。そこにいたのは……


「なっ……!?」


その光景を見て、リョウが固まる。


「何これ……人が……」


その光景を見て、スズカが絶望する。


「スズカ! 外を見るな!」


その光景を見て、ハヤトがスズカの目を塞ぐ。


非日常だ。あの時の様な、巨大なカマキリ。しかし、あの時とは全く違った。


「まずいぞ! アレは人を狙っている!」

「これは……ハヤト、俺が行く」


リョウはベランダに出て、デバイスのボタンを押す。


「俺がやる……!」


レバーを倒し、変身する。


「おい! 1人では……」

「入学式のあの時、俺はこいつを倒した。だから、今回も倒せるはずだ。これは……俺がやる」


そう言って、リョウはベランダから飛び下り、カマキリがいる地点に直行した。




「ここは……行橋隊最後の生き残りとして……」

「待って……!」


デバイスを装着したハヤトを、スズカが止めた。足にしがみついている。


「もう止めて……」

「スズカ……」


スズカは、泣きながらハヤトにしがみつく。


「あれを放置したら、行橋が大変なことになるんだぞ!? それでもいいのか!?」

「それは……でも、死んじゃやだ……」

「馬鹿野郎。ここで俺が死ぬわけが無いだろ。生きて帰ってやる」


ハヤトは、デバイスのボタンを押し、レバーを倒した。そして、カマキリがいる地点へ。


「お兄ちゃん……。頑張って……」




リョウは、カマキリと交戦していた。


リョウが攻撃しているが、それに抗い、カマキリがリョウに攻撃してくる。さらに……


(死体の臭いがヘルメットを貫通してくる……。集中出来ない)


周囲には、死んだ人間が、辺り一面に転がっていた。血の臭いや、腐乱臭などは、想像を絶する程である。



――――あまりの決着の遅さに、周りの市民は苛立ちを覚えていた。


「何してるんだよ! 早く倒せよ!」


この一声から、野次がヒートアップしていく。


「な、仲間も呼べないのかよ!」

「あと7人ぐらい居るだろーが! 呼べ!」


リョウに浴びせられる罵声。その勢いは止まらず、むしろ加速している。


(そう言われるのも無理はないか……。俺が気付かないから、何人もの人間が犠牲になったからな……愚かすぎるな)


リョウは、攻撃を止めた。棒立ちの状態となったリョウは、カマキリの攻撃を受け、100m程吹っ飛ばされた。


(俺のせいで死人が出たんだ。俺が死ぬぐらいしか……。姉貴……結局、死からは避けられないらしいな)


自分から死にに行こうとしているリョウ。立ち上がり、両手を広げて、意を決した。カマキリが、カマを振りかざす。


「もう……俺が死ぬしか……」

「馬鹿野郎ォォォォォォォォ!!!」


生きることを諦めていたリョウに怒るように、ハヤトが叫びながらカマキリにぶつかって行った。ぶつかる瞬間に、ナイフでカマキリを切り付け続けた。カマキリが怯んでいる隙に、リョウに近寄る。


「リョウ、勝手に死ぬな! 逃げるな! 諦めるな!!」

「ふざけるな……」

「どっちがふざけている! 戦闘中に自滅するヒーローが居てたまるか! やるなら最後までやれ! とにかく、俺と戦え! 1人より2人だ!」


ハヤトが、手を差し伸べる。


「俺は……」


リョウは、悩み続けていた。あの時、敵として戦った人間と共闘するべきかどうかを。


「今更悩む意味は無いか。ミヅカも、ああ言っていたしな……」


リョウが、ハヤトの手を握った。そして立ち上がり……


「共に戦うのなら、望団に入ってもらう。それでもいいか……?」

「ああ。行橋であろうと、北九州であろうと、『街を守る』ことには変わりないからな」


そうして、リョウとハヤトの、2人での協力戦が始まった。

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