表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/55

Phase2-4 行橋隊

集まった9人は、駅前広場で話をすることにした。それぞれ、多々あるオブジェクトに腰を掛ける。


「ハヤトくん。聞きたいことは山々ですが、まずはデバイスの件です。なぜ、あなたはそのデバイスを奪ったのですか?」


なぜ奪ったのか。その理由はリョウを含め、団員全員が知らない。


「以前、協力した時に少し漏らしたが……理由は簡単だ。行橋を守るためにこいつを奪った。行橋隊の最後の生き残りとして……ここを守る責務が俺にはある」

「なっ……行橋隊……!?」

「兄貴……本当に何も知らなかったんだ。まぁ、前にやってたニュースは色々ぼかしてたし……全部教えてあげる」


世間知らずのリョウに、ミヅカが行橋隊の事を教える。






『行橋のためなら、死ねる』


そのスローガンの元、行橋の治安を守っていた自警団があった。


それが、行橋隊。


隊員は6名+1名。


『司令』のコウイチ、『追跡』のシンジ、『諜報』のミツヒロとトキヒデ、『策士』のダイシン、そして『戦闘』のハヤト。それに追加して、『司令補佐』のヒロノ。


行橋は事件が比較的少ない。それも、彼らが事件の匂いを嗅ぎ、それを未然に防いでいたからであった。


ただ、これは裏向きの顔。


表向きの顔としては、『ゲーマー集団』。


あらゆるゲームの大会に出場し、賞金をかっさらっていった。行橋隊の資金は全てここから来ている。


『格闘』のコウイチ、『レース』のシンジ、『STG』のミツヒロとトキヒデ、『パズル』のダイシン、そして『ワイルドカード』のハヤト。それに追加して、『アクション』のヒロノ。


行橋隊の構成は、こうでもあった。




しかし、2019年3月1日。


行橋隊の本来の活動を知った暴力団員が、行橋隊を壊滅させるために、小倉へと遊びに行く行橋隊を狙った通り魔事件を起こした。


丁度トイレに行っていたハヤト以外の隊員は、武器のチェーンソーの餌食となり、即死してしまった。さらに、犯人は調子に乗って、他の乗客も襲い続けた。


犯人は、情報役と実行役の2人。情報役は捕まっていない。実行役は捕まって『いた』。しかし、まさかの脱走により逃走中だ。




隊員は、全員が北附第1志望で、全員合格していた。


行橋の高校ではない理由は『北九州市をもっと知りたい』からであった。


しかし、ハヤト以外は全員死んでしまった。


北附に入学したのは、ハヤトだけであった――――






「そういうことか。理解した。今までお前が誰とも話さなかった理由を」

「そういうことだ。…………もう思い出したくない。あの時のことは……」






ハヤトの頭の中で描かれていたのは、事件当日の行橋駅構内。


トイレを済ませたハヤトが、ホームで待っている他の隊員と合流しようとした。


電車が到着し、少し焦るハヤト。


しかし、ホームからチェーンソーの音が。そして、生々しい音。悲鳴……が途切れる。


急いでハヤトはホームに向かう。


階段を上り、すぐ目の前に広がっていたのは、首が無い死体と、近くに転がる頭部、血の海と化したホーム、血塗られた電車、そして、さっきまで隊員だったものが、辺り一面に散らばっていた。


ホームの向こうには、駅員に取り押さえられた犯人。


――――ハヤトの目は、死んでいた。


――――ハヤトの思考は、止まっていた。


――――ハヤトの中にあった、あらゆる物が砕け散った。






「ああああああ! もう思い出したくない! どうしてああなったんだよ! 全部俺のせいだったのか!?」


ハヤトが混乱した。頭を抱え、その場で(うずくま)る。


「落ち着いて! 無理に思い出そうとしたら苦しいだけですよ!?」


必死に、サユリが落ち着かせようとするが……


「当事者じゃないのに何が分かるんだよ! その日はどうせ、呑気に勉強やらしていた癖に! 傍観者が口出しするな!!」

「ちょっと! 待ちなさい!!」


ハヤトは、走って帰ってしまった。


「これ……どうすれば……いいんですか…………」


サユリは、頭を抱えて泣いてしまった。


ミユが近付き、サユリの頭をさする。


「また……次があるから……大丈夫だから……」


この現状を見たリョウは、


「すまない……」


と、静かに呟いた。




その日の夜。リョウはベランダに出て、考え事をしていた。


(この事態を引き起こしたのは、恐らく俺のせいだ……。あんなことを言ってしまったから、あいつの記憶を引き起こしてしまった。そこから……)

「あ、また考え事してる」


いつの間にか、ミヅカが隣に座っていた。


「ハヤトのこと?」

「ああ。こうなったのも俺のせいだと思ったから、考え事をしていた」


俺のせい。リョウの頭の中には、それしか無かった。


「まぁ、そうだろうね。ただ、ハヤトの自爆もあるだろうけど」

「それでも、きっかけを作ったのは俺だ。ミヅカ、俺に出来ることは何か無いのか?」


どうすればいいのかと、リョウがミヅカに問う。


「2人で話し合えばいいんじゃない? 兄貴とハヤトは、結構いい感じの仲だと思うよ」

「いい感じ……なのか?」


今まで、友達という概念を無視した生活を送っていたリョウにとって、『いい感じの仲』というものは、理解できるものでは無かった。


「そうだよ。仲良くないと、一緒にゲームなんてしないでしょ?」

「そうなのか……。ということは、例のコスプレもか?」

「まぁね」


いつもの様に、2人は談笑していた。


(ミヅカだけには……本来の俺を見せられるんだよな……だけだからな……)




一方で、ハヤトは布団の中に篭っていた。


「あああぁぁぁ…………」


ハヤトは唸っていた。大きな溜息と、大量の涙を流しながら。


「糞が……早く捕まれよ……何なんだよ…………」


ハヤトは、事件を起こした犯人のことを、非常に恨んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ