Phase1-1 改良案
ここから、Act2が開幕します!
ゴールデンウィークに突入した。
あのロバの件以来、『非日常』は発生していない。
しかし、望団に休みは無い。
「おっはよー……う!?」
ミユが、望団の拠点と化している生徒会室に入った。そこには、リョウと……
「リョウ!? 私の家の地下にあったやつだよね!? この機械!?」
とにかく巨大な機械があった。それについて、リョウが説明した。
「お前も知っているだろうけど、デバイスを弄る機械だ。俺の家にもあるが、こっちの方がよりレベルの高い改造を施せる」
「そーゆー問題じゃないよ! なんでコレがここにあるの!?」
「昨日の深夜の内に、学校と北原家ぐるみでここに運び出した。色々都合が良かったらしいから、スムーズに交渉が進んだ」
ミユの頭の中は、こんがらがっていた。そこに、サユリがやってきた。
「あら、まだ2人だけなのですね。それはそうと、朗報です。使っていない教室を、望団専用の部屋にすることが決まりました。ここにある機械も移動させないとですね。なんでこんな物があるかは知りませんけど」
取り敢えず、机とかを運ぶことにした。数人の教師と、通りがかった野球部員が手伝う。しかし。
「こんな機械……どう運べってんだよ」
最後に残ったのは、非常に大きな機械。一つだけだが、かなり大きく、重たそうな見た目。
「これは……業者呼ぶか」
所変わって、新たなる望団の部屋。機材とかは全て、運び終えた。団員全員と、何故か来たミヅカとアヤカがいる。
「兄貴、今日はあまり関わらないでおくから。しっかり私に依存しないで頑張って」
「ああ、分かっている。――――今回は、俺から話がある」
リョウは、あることを提言した。
「今まで、デバイスの機能を改良しようとはした。だが、いい案が思いつかなかった。そこでだ。お前達のアイデアを提供してもらいたい」
つい最近、デバイスに装備していたのに、使用できなかった『通信機能』を使えるようにした。だがしかし、それだけでは、何かが不足している気がした。だから、リョウはこう提言した。
全員が考える。何が足りない? 何があれば戦闘を有利に進められる? そう考える。そして……
「まず私からね」
先陣を切ったのは、ミハヤだった。
「頭部にライトか何かが欲しい。あの暗闇の中では、敵がどこにいるのかだったり、皆がどこにいるのかとかも分からないから。それさえあれば、夜も戦闘を有利に進められるはず」
「ライトか。やってみるか」
リョウは、機械に備え付けられて椅子を引き出し、機械を起動させる。
「一応、頭部にスペースがある。その辺にライトを付けられる。形は、個人の好みで決めろ」
ということで、各々が注文していく。
そして、1時間後。
「試験的に、俺の物にプログラムを打ち込んだ、これで、変更が反映されているはずだ。今からテストしてみる」
全員、外に出た。リョウが、試験的に変身する。
「右のデバイスのこの辺に、ボタンを追加している。それを押せば、ライトが点くはずだ」
そのボタンを押した。すると、頭部のライトが点灯した。
「なんか電車の前照灯っぽい」
ミハヤが指摘したその形は、まるでパ〇ラ〇スー〇ー(〇鉄1000系)の前照灯のような形である。
「そういう意図はないけどな。そう見えるなら、そうなのだろうけどな」
リョウが、変身を解除する。
「何かともったいない気がするが、ここは変身解除しないと、改良できかいからな」
「まぁ、気にせずに戻ろっか」
教室に戻って来た。
「この部屋に、名前を付けておかないとね」
名前のない教室。名前を付けようと、タツヤが提案する。
「名前……か。全く考えていなかったな。ここは団長の判断に任せる」
「ぁ……そういえば、私が団長でしたね……」
この望団に、団長という役職があったことを思い出した、団長のサユリが部屋名を、直感で決めた。
「『北九州対非日常拠点室』でいいかしら?」
「「「「「「「「長すぎる」」」」」」」」
考えた部屋名を、8人全員が却下した。考え直す。
「じゃあ……『望団拠点室』で……」
「会長……ネーミングセンス無さすぎませんか??」
あまりにもセンスがない。そんな状況に、アヤカが痺れを切らすように、口を挟んだ。
「何を悩んでいるのよ……。『対策拠点室』でいいじゃない……」
「あっ、それです! そういうのです!」
ということで、この教室の名前は、『対策拠点室』ということになった。
「名前とかはどうでもいいけどな。――――それより、アヤカ。何故お前は、望団に入ろうとしない?」
よく考えてみると、アヤカはデバイスを持っているが、望団員ではない。ミヅカとは違い、望団に入ろうともしない。
「こういうグループに入るのは、あまり好きじゃないわ。あなた達を助ける時があるのだろうけど、あくまでそれは非常時。まぁ、一応、手伝う時は手伝うわ。簡単に言えば、『準団員』と言ったところね」
正式な団員になるつもりは無い。ただ、手伝おうところは手伝う。そんな中途半端な回答に、サユリが……
「あなた……変な意地を張らないで、望団に入れば……」
「だから何ですか。これは私の勝手です。こんな馴れ合いにしっかり浸かるつもりはありません。せめて、足湯に浸かる程度にしておきます。では、私はここで」
「馴れ合いって…………」
望団の活動を、『馴れ合い』と一蹴し、アヤカが意思の硬さを示して帰って行った。
「…………考えていても始まりませんね。続きに行きましょう? リョウ君」
「分かった。次の提案はどうする」
仕切り直して、提案を聞く。そして、タクミが提案する。
「じゃあ、1つ。このデバイスで何かスマホ……っぽい何かを追加してくれ」
「情報収集と連絡とその他色々か……。難題だが、一時期そういうのも追加しようと考えた時期がある。その構想に使った紙が俺の家の中にあるはずだ。それを引っ張り出してくるか。ということで、その話はしばらく先な。多分、かなり時間がかかる内容だ」
「待ってるからな」
次の提案を募集する。ミユとミハヤとヒカリが、話し合って3人で提案する。
「「「何か個性のあるデザインにしてくださーい!」」」
現在の戦闘スーツのデザインは、アヤカとサユリの物以外は、色が違うだけのものである。3人は、それに個性が欲しいと頼み込んだ。
「個性……確かに、それぞれ違うデザインであれば、色以外で認識できるな。どういうのがいいんだ?」
そのまま、聞き込んだ。現在、使用者が居ない風のデバイスと、勝手に帰ったアヤカの分も、決めていった。
「試しに俺の物にデータ入力をしてみたが……これ、完全にお前の趣味嗜好だろ」
リョウが指摘したものは、ほとんどがミユの趣味嗜好である。
「いいじゃん。かわいいじゃん。ね、ミヅカ」
「兄貴にそれは……とっても似合う! 兄貴にはなんでも似合う!!」
やっぱりこの2人。ミユとミヅカが笑い合う。
その日は、ここで解散となった。時間は、気付けば夜の7時半。辺りはすっかり暗くなっていた。
枝光駅構内。
「あのデザイン……ちゃんと反映されるの?」
「いつかする」
リョウとミヅカとミユが横並びに座っていた。すると……
「兄貴? 何? あのワイヤー。かなり太いけど」
「北附の方に伸びているな……はぁ!?」
「人が飛んでる……!?!?」
ワイヤーを使って飛んでいる人がいる。まるで、某巨人漫画のようだ。剣はないが。
「何かあるに違いないな。……実験から数時間経ったな。非常時にもデバイスを使える。行ってくるか」
リョウが、全力疾走で北附まで戻っていく。
北附の中。
「望団の部屋の鍵は手に入れたな……ザルすぎるだろ、ここ。俺は望団の人間じゃないのに、普通に貸してくれやがったぞ」
北附の制服を着た男がいる。その男は、対策拠点室の鍵を開けた。
「あの機械……あれさえあれば…………あった。あれか」
デバイスが入ったケースがある。1つだけ残った、05と書かれたデバイス。
「有難く貰うか……あっ」
「お前……何をしている!?」
謎の男とリョウが、相対した。




