Phase4-2 友情、動物園
――リョウの家。
「おかえりー。……ん? ミユを連れてきてる? 何で?」
話を知らないミヅカは、なぜリョウがミユを連れてきたのか分からなかった。
「兄貴……ついに……他の女の子と……今日は私が赤飯を――」
ミヅカが米を取り出して行こうとする。
「アホか。俺がミユと付き合うわけないだろ。こんな変態女と付き合うなんて面倒だ」
「そんなぁ……(´・ω・`)」
リョウが、交際の話をばっさりと切り捨て、ミユは少し落ち込んでいた。
何故か用意された赤飯をおやつ代わりにし、話を続けることになった。
「ミヅカ、問題ね。お兄ちゃんに足りないものはなーんだ?」
「おい」
ミユがミヅカに問題を出した。ミヅカが、やや興奮して答える。
「友情ォ! 愛情ォ! 人情ォ! エトセトラァ!! ただーしッ! 私に対しては、超・過保護ッ!」
(うわぁ…………否定出来ねぇ…………)
余計なものまで混ざった回答。
「最後のはさておき……大正解!! それらの中で、今回話すのはなーんだ?」
第2問。これにも答える。
「ゆーじょー!!」
「だーいせーいかーい!!」
「「いぇーい!」」
ミユとミヅカが2人で盛り上がっているのを、リョウは呆れながら見ていた。そしたら……
「はいそこー。あなたのことだから、真面目に聞くように! ね?」
「はぁ……(こんなの真面目に聞いていられるか)」
聞くに耐えない、非常に喧しい会話を聞き続けるリョウ。そんなリョウに、ミユが質問する。
「それじゃ、まずは問題その1。『ともだち』であいうえお作文をつくりなさーい!」
「えぇ……仕方ない」
嫌々、リョウが作文を作る。作っている間、2人はこんな話をする。
「兄貴、何を書くんだろうね」
「まぁ……国語の才能はダメダメだしね……あれでよく北附に合格したな、と思うけど」
「兄貴の入試ってどうだったの?」
「数学と理科は100点満点。社会が57点で、英語が35点。国語は23点ぐらいだったっておじいちゃんが言ってた」
「なんでそんなに、兄貴のテストの点差が開いてんの」
「知らないよ。本来、こんなのは不合格だから。ただ、理系の特待生ということで入れているようだからね。例の2教科の、知識量は学者も驚く程なのは、ミヅカも知っているでしょ?」
「まぁ、ね……というか、私の点数は?」
「えーと……大体、平行線で70点前後。1番高いのが、国語で79点」
「結構いいね。――――兄貴遅くない?」
「あいうえお作文ってそんなに難しいかな……?」
――――遅い。遅すぎる。もう10分経った。そして、リョウが完成した文を見せた。
「遅かったね……。どれどれ……。――――は?」
ミユが呆れ、
「どうしたの……――――なんじゃこりゃ!?」
ミヅカも困惑した内容がこれだ。
と りあえず
も つべきもの
だ ろうとおもっているけど
ち ょっと(かなり)めんどくさそうだからどうでもいいもの
「「やり直しぃぃぃぃぃ!!」」
「何故だ? 思ったことを、丁寧に、平仮名だけで書き記してあげたのにな」
リョウは、その作文の内容の酷さを自覚していない。
「どんだけ性格が歪んでるの!? こんなの想定外だよ!? めんどくさいって、それで友達を持たないの!?」
結構、ミユが怒っている。
「兄貴……こりゃ、シスコン直行コースになる訳だね……おそろしや」
「ん? シスコン? ちょっと詳細を……」
『シスコン』という単語にミユが食いついたので、ミヅカは、最近のリョウのことをたっぷりと語った。
「ミヅカぁ……その事をコイツに言った……らぁ……」
リョウの意識が、飛んで行ってしまった。
「――――リョウ……もう少し普通の人間関係を築こうと思わないの?」
『シスコン』の話の間、ずっとリョウは意識を飛ばしていた。目覚めたリョウは、
「これ以上傷をえぐるな。頼むから。本当に。これをバラすのはマジでやめろよ?」
「友情の概念を、きっちりと見直しますか?」
「――――はい」
リョウが、保身に走った。が。
「そうだねぇ……もっと話したいことがあるんだよね」
「もう止めてくれ」
ミヅカが、またも衝撃的な発言をする。
「随分前だけど……兄貴と姉貴がプロレスごっこしていたような……」
「!?!?!?!?!?」
その発言に、ミユが食いついた。
「おい、なにか重大な勘違いをしているのではないか!?」
「だってさ……『姉貴ぃ……』って兄貴が言ってたじゃん」
「いや、あれは姉貴がそういう体勢になれって言ったからそうしただけで……」
身振り手振り、リョウが釈明していくが……
「姉貴……少し感じてなかった……っけ?」
「うわぁ…………――――――」
「「あ、また失神した」」
リョウが、泡を吹いて失神してしまった。
「1つ、弱みを握っちゃったね」
「それはともかく……リョウに友情とか優しい心とかを教えるためにどっかに……」
「……動物園?」
「行ってみよっか」
リョウが知らないところで、明日の予定が組まれた。
翌日。何も知らないリョウは、意味もわからず、ミヅカと『到津の森公園』に来た。そこには、団員全員が揃っていた。アヤカも、何故か居た。
「なんでお前がいるんだ」
「いいじゃない。休みなのだから、何をしようと勝手でしょ?」
合計9人で公園に入った。この公園は、動物園と遊園地が一緒になった場所である。小倉駅からバスで15分だ。
バードゲージという鳥を飼っている場所に9人が入る。そこには、フラミンゴとかがいる。
「リョウ、並んだらフラミンゴと背丈が同じぐらいなんじゃない?」
フラミンゴの身長はおおよそ120~140cm。リョウの身長は……そのぐらいだ。それに目をつけたミユが、リョウをおちょくった。
「リョウの背、まるでフラミンゴみたいだぁ」
「お前なぁ……」
リョウの機嫌は、少し悪そうだった。
トラがいる。食いついたのは、サユリだ。
「あら……寝ちゃっているわね」
気持ちよさそうに、トラが寝ている。
(トラ……か。姉貴が一番好きだった動物だったな……)
リョウが、姉のユウカのことを思い出した。
「兄貴? どうしたの?」
「あっ……いや……なんでもない」
ヤギがいる、ふれあい動物園。
「タツヤ、ヤギってマジで紙を食べるのか?」
「まぁ……雑食だからね。ただ、お腹を壊してしまうようだけど」
タクミとタツヤが、餌を買う。リョウ達も、餌を買う。
「うわぁっ!?」
リョウが餌を差し出すと、ヤギが思いっきり餌に食いついた。それに驚くリョウ。
「兄貴……ちょっとビビりすぎじゃない?」
「だね。あんた、まさか動物が苦手?」
ミヅカとミハヤが笑っている。
「そんなわけ……」
リョウが否定しようとしたとき、ミユが……
「まあ、昔は『動物園が嫌だ』とかは言ってたね」
過去の話を持ち出した。
「それが理由にはならない……怖くないからな、多分」
「なんで声が小さくなってるの?」
「やかましい」
9人は、巨大な猿山の前に来た。ヒカリとミハヤが、購入した猿の餌を投げる。
「おお~~みんな集まってるね」
「こっち見てる」
「やっほー」
2人は楽しそうに猿と会釈(?)していた。
昼ごろ。広場に来た頃に、誰かのお腹が鳴る。
「ちょ、誰だ今の」
「……俺だ。早く食事を摂るぞ」
お腹を鳴らしたのは、リョウだった。
弁当は、リョウとミヅカが2人で作った、9人分のものである。
「あんたさ、結構料理上手な感じ?」
「まぁ、人並みには――――」
リョウの話を遮るように、ミヅカが話し始めた。
「聞いて聞いて。兄貴の料理は、店を出せるほどに美味しんだよ。私も時々作るけど、兄貴には敵わないんだよね」
「やっぱあんた、女の子じゃ……」
「黙っとけ」
昼食が終わった。
「リョウ君、料理上手なんですね。感激しました。文化祭でも、よろしくお願いします」
「ぇ……あ、はい…………?」
と、ここでアヤカが立ち去る。
「少し、御手洗に行ってくるわ」
「そういえば、お前は何も動物に反応を示していなかったな」
ここまで、アヤカだけ何も反応をしていない。何も食いついていない。一応、ヤギの餌は出したが。
「それが何か問題でも? というか、もう行っていいかしら」
「ああ。早く行け」
少しして。
「アヤカ……遅いな。何をしている」
10分ぐらい待っている。長い。
「まぁ……大きい方なんじゃない? 待っとこ?」
その時、ふれあい広場の方から叫び声が。その方向を見ると……
「うっそだろ。ここにも……」
タクミが呆れた。その理由は簡単だ。巨大なロバがこっちに向けて歩いてきている。
「やるしかないな」
7人が、一斉にボタンを押す。
「兄貴……私も……」
「馬鹿を言うな。ここはお前が居るべき場所じゃない。管理棟の方に逃げろ。避難誘導も忘れるな」
「誘導……わかった。生きていてね?」
ミヅカは、走って管理棟の方向へ向かった。
「死んでたまるか。――――潰す」
7人がレバーを倒す。いつものように変身した。
「さぁ……今回は少し手段を変えていくぞ。ミユ、それでいいだろ」
「うん。頑張って……皆と!」
7人が、戦闘を始めた。
一方、トイレから急いで出て来たアヤカは……
「本当に……なんでこんなに立ち上がりが遅いの? すぐ側にいるっていうのに」
ボタンを押してレバーを倒したのにも関わらず、装甲の完成がかなり遅れていた。
アヤカは、それに苛立っていた。




