Phase3-3 決闘、疾風
放課後。例の2人以外の団員とミヅカは、山奥まで移動していた。随分と移動した。電車も結構乗り換えた。
……ここは山口県内。山の中。
「兄貴……ガキ臭すぎるって……」
「もうやめにしない……?」
ミヅカとミユが、リョウを止めに入るが……
「お前ら、これはな……プライドを賭けた戦いだ。あいつは俺を……過剰に罵った。絶対に許さん」
リョウは、プライドを理由にして戦おうとする。決闘を止める気などはない。
「ミハヤちゃん……ちょっと大人気ないよ……」
ヒカリがミハヤを心配する。だが。
「ヒカリ……ごめんね。あいつがあんなことを言ったから、こうでもしないと気が済まないんだよ。スッキリしたいし……」
「「だからッ!」」
2人がデバイスのボタンを押す。
「「お前をッ!!」」
2人がデバイスのレバーを倒す。
「炎で潰す!!!」
「闇に呑ませる!!!」
リョウとミハヤの、あまりにも大人気ない決闘が始まった。
「会長……これ、良いんですか? いろいろまずくないですか?」
タクミとタツヤは心配している。サユリの答えは……
「面白いからいいでしょう。こうして2人は成長するのですから。うふふ。見ているだけで楽しいですね」
((うわぁ……この人なんかおかしいなぁ……いろいろと))
リョウが、銃でミハヤを狙い撃つ。ミハヤは、放たれた弾を闇に消した。
「そう来たか。闇の力で物を消せるが……その特性を知っているとはな。予習済みとは偉い子ちゃんだな」
「それはどうも。説明書のおかげね。……今のは実験のつもり?」
「ああ。ここからは応用編だ。遊んでやる。お前なんかには負けない」
と、いきなり爆発。
(!? 自滅!?)
その爆心地の上から、無数の弾丸がミハヤに迫り来る。
「嘘でしょ!?」
闇に消し……きれず、数発被弾した。
「――あれ? 痛くない?」
全然痛がっていない。上からリョウが落ちるように降ってきて、着地する。
「そうだ。こいつには『痛覚・衝撃軽減システム』が、常時作動している。これを使っても痛いのであれば、生身では確実に死んでいる。――今の攻撃のタネは分からないようだな」
タネ。リョウが上から銃撃してきたこと。
「爆風で……飛んだ?」
「まずはそうだな。だいたい60%程度と言ったところだな。残りの40%も、自分で考えろ。俺の犬になるぞ」
「アンタの犬とか絶対に嫌だ」
また爆発。今度は、高速移動だ。
(爆風……火だけでこんなこと……できないよね!?)
「まさか、操っているのは……火ではない!?」
その解答は……
「80%。ただ、『火』という物質も粒子も何も無い。さあ考えろ。俺の犬になりたくなければな」
かなり正解に近い。
(あと少し……特性さえ掴めれば……少し息苦しい……疲れではないね……まさか)
「酸素だね!? 酸素を操っているね!?」
その回答。それを聞いたリョウは、口角が若干上がった。
「正解だ。大正解だ。100%だ。正解したお前に、ご褒美だ。全力で攻撃してやる」
「全力の攻撃……酸素……まずい! この辺はかなり危険です! 急いで逃げた方が!」
タツヤが危険を察知した。みんな急いで逃げる。
「みんな逃げてる……あんた、何をするつもり!?」
「酸素を限界まで圧縮させる。ヒントはガスボンベだ」
見えない何かが起きている。ガスボンベ。全力。それで全てを察したミハヤは、
「あーもう! 出来るかわからんけど、全部消す! 呑まれろ!」
レバーを動かした。ミハヤの目が光る。
「必殺技か。ならば、俺も使うか」
リョウもレバーを動かした。
「アンチハザード!!!」
「技名など、要らない……!」
非常に大きな爆発。その攻撃を、ミハヤが吸収しようとする。しかし、地面が割れ、木々は剥がされ、あらゆる物が爆風で飛んでいく。
「うおおお!? 地震か!?」
「これは……」
団員らが見たもの。それは、巨大な爆弾でも落とされたのか、というぐらいの大きな火柱だった。
「これでおしまいか。少しばかり……やりすぎたか?」
ミハヤの元に、リョウが走って向かう。
――ミハヤが居ない。
「爆風にでも吹っ飛ばされたか。俺の勝ちということでいいか。あいつ、少し手加減していたような……んっ!?」
猛スピードで迫る影。それに当たり、リョウが吹っ飛ばされた。
「お前!? これでもまだやるつもりなのか!?」
ミハヤの目の光が点滅……ではない。既に『点灯』していた。
「何を……まさか、既に……」
ミハヤが、リョウに襲いかかる。
「ッ!?」
さっきとは少し感覚が違う。全力で殺しに来ている感じがした。
(まずい……どうしたらいい……!?)
新しいことを考えている暇はない。今は、ミハヤを止めるしかない。
「おい! もう決闘の勝敗はなしだ! 俺が……あんなこと言ったから……全ては俺のせいだ! だから……落ち着いてくれ!」
「………………」
ミハヤの容赦の無い攻撃が、リョウを襲う。
「命乞いじゃない! 頼む! 話だけでも――」
「……………………」
ミハヤは、杖でリョウを殴打した。リョウが30mほど吹っ飛ばされる。
「ぐはぁっ……頼む……許してくれ……この通りだっ……」
跪き、頭を下げる。――リョウが土下座をした。が……
「…………………………」
ミハヤは、リョウの頭部を杖で押さえ付け、デバイスのレバーを動かした。目が赤く光り、杖にエネルギーが溜まり、放たれる。
リョウは、その全てを受けてしまった。地面が更に窪む。
「ミハヤ……犬になってもいい……だから……お前は……お前のままで……頼む……元に……」
変身解除されたリョウ。デバイスの機能で、どうにか生き残ったが、動けない。
リョウは、そうなっても頼み続ける。今のミハヤには、言葉が通じないということは理解している。それでも、頼み続ける。しかし……
ミハヤは、またレバーを動かし、目を赤く光らせ、エネルギーは、また杖に溜まっていく。また放たれる。リョウは、死を覚悟した。
(――ミヅカ……こんな兄で……済まない――――――姉貴……ここで俺は死ぬ……情けなさすぎる……顔向けできないよ……)
――――全てを覚悟して、リョウは目を瞑った。
しかし。それをこじ開けるように風が吹く。
――――生きている。何故だろうか。リョウはその場を見た。そこには……
「あっぶなかった……兄貴、ちょっとばかりこれ使っておくからね。拒否権は無いから」
デバイスを使った……ミヅカがいた。白地で緑帯の姿。風のデバイス……を使っている。
「なんで……お前が……」
「兄貴のためなら、私はなんでもする。その信念は揺るがないから」
ミヅカは少し笑いながら、そう言った。
「少しじっとしていてね。すぐ終わらせる」
ミヅカが飛ぶ。風に乗って。
「お前……」
リョウは、申し訳無さそうにミヅカを見る。
「兄貴のためなら……ミハヤ、少し我慢して」
レバーを動かす。ミヅカが高速回転する。そして――
「ファストトルネード!」
ミハヤに回し蹴り。連続で、ミヅカの右足がミハヤに当たる。ミハヤが変身解除した段階で、この技は終了した。
「あれ……記憶が曖昧……また……」
自我を取り戻したミハヤは、リョウの元へ向かう。
「この決闘、どっちの勝ち?」
ミハヤと決闘をしていた。リョウはその事を完全に忘れていた。
「あ……お前の犬にならないといけないのか……俺は……」
「いや……私も犬にならないと……ミヅカの」
――この勝負、割って入ったミヅカの勝ちということになった。
「嘘!? じゃあ……兄貴にいろいろ……」
「変なことは考え……なんでも言ってくれ」
リョウは既に、ミヅカの犬に成り下がっている。
「え……!? なんでアンタ、犬に成り下がってるのよ!? 私の犬にはなりたがらなかったくせに!」
「ミヅカの犬になら……なっても……」
「「シスコンか! 兄貴/あんたは!」」
――リョウのキャラ崩壊が激しいので、犬の話は無かったことになった。
少しして、他の団員も合流した。
「大丈夫!? なんかすごいことになってたけど!?」
ミユが混乱している。そこにミヅカがやって来て……
「残念。兄貴はシスコンでしたー^^」
ミユの耳元で、リョウの性癖(?)を言い放った。
「えっ!? 『性癖ナッシング』じゃ……」
性癖ナッシング。ミユが家に来た際に、リョウの性癖について放った言葉。
「やったぜ。」
「ちくしょおおおおおおおおおおおお!」
「「「???」」」
その叫びの意味はタクミ、タツヤ、サユリの3人は分からなかったが、リョウとミハヤとヒカリは理解した。
夜、リョウとミヅカは……
「兄貴、これ返すね」
「お、おう」
デバイスを返却した。
「やっぱり……私がこれを使っている時、兄貴の顔がちょっとばかり悲しそうな感じだったし……」
「よく分かったな。――お前には、これを使わせたくなかった。お前だけでも……普通に過ごさせたかった。もしもまた、姉貴みたいになったらと思うと……」
リョウが泣き崩れた。ミヅカは、そんなリョウを抱きしめた。
「大丈夫。私はそう簡単に死なないよ?」
「すまない…………」
「兄貴ったら、私の前では素を出すんだからさ……私は、そんな兄貴が好き」
「ミヅカぁっ…………」
しばらくの間、リョウとミヅカは抱き合っていた。
これの次の話は、Phase3-3.5でした。
しかしながら、一身上の都合により、削除することに致しました。
本当にすみません。理由は、Twitterにて語っております。
これから先も、RSをよろしくお願いします。