Phase2-3 変化、訪問
真っ白な電車が来た。双子はそれに乗り込む。ロングシートだから、遠慮せずに空いているところに座れる。木で出来た座席は、驚く程に硬い。
行きの電車に乗ってすぐに、双子はこんな話をした。
「兄貴ぃ……今日、夢見た? 私は見た」
「俺も見た。……あそこのことは思い出したくなかったのにな」
「私は横浜の夢。兄貴がいっぱい袋を持ってた」
共通して、2人の夢に出てきたのは……
「「姉貴……」」
小倉に着いた。列の先頭に、アヤカがいる。ドアが開き、アヤカが電車に乗り込む。
「あら。今日は2人のようね」
「そうだ。」
「アヤカちゃん、おはよー」
「おはよう。ミヅカさん。久しぶりね」
ちょうど、リョウの隣が空いていた。そこにアヤカが座る。
「久しぶり! 元気してた?」
「こっちの台詞よ。ミヅカさんこそ、インフルエンザに悩まされていたようだけど」
「だーいじょーぶ!」
「なら良かったわ」
ミヅカとアヤカが話し合う。それを、リョウが少しばかり幸せそうに見ていた。
ここで、アヤカが話を切り出す。
「それはそうと、あなた達、何を話していたのかしら。あなた達なら、四六時中、なんでも話していそうだから」
その質問に、リョウが答えた。
「夢の話だ。姉貴の夢だった。思い出したくはないけどな……」
「あの件ね。全く……少しは気をつけないと、もしも、////ま////の///子ってことがバレたら、過激派に……」
「あぁ……分かっている」
声がかなり小さかった為に、一部がブレーキの音で聞こえなかったが、何となくリョウもミヅカも理解はした。
数分経ち、枝光に着いた。
「クラスメイトはどんな人かなー?」
ミヅカは、高校生活を待ちに待っていた。だから、かなり楽しみにしている。
「ちゃんと友達作れよ?」
「兄貴が言える口かな?」
「うっ……」
と、坂の上から声が。
「ミヅカー! 久しぶりー!」
「あ、レイちゃん! 待っててね、今行くー!」
そのままミヅカは、走って坂を登っていた。
「ミヅカも、姉貴の夢を見たらしい。とはいえ、いつものミヅカのようだな」
「そうみたいね。というか、本当にあなた、ミヅカさんに対しては友好的に話すよね」
確かに、普段のリョウは挨拶もできない程に他人と接することを嫌ってきた。しかし、ミヅカに対しては友好的に接している。
「あいつは……気付くと、気が緩んでいるほどの何かを持っている。そう俺は思う」
「気が緩むって……あなた、本当はみんなと仲良くなりたいんじゃないの?」
「さあな。――今日は変化の日にする。1つでも変えられるように」
「そういえば、昨日はそんな話をして帰ったわね」
昨日、デバイスの負荷の話を漏らすようにしたが、説明不足の結果、団員がデバイスを返すという事態が起こった。だから、その誤解を解くために今日は説明と、謝罪をすることになっている。
「もうすぐ学校ね。これより先の関係は今まで通り。あなたの相談役はここでおしまい。では、そういうことで」
「ああ。……この門を越えた瞬間から、勝負は始まるんだな」
そう言って、リョウは学校の敷地に入っていった。
(さて、まずはタクミだな)
タクミの教室は分からない。だから、教室を見て回る。
(どこにいる……ん?)
見覚えのある人影。と、気づいたのかこちらにやってくる。
「リョウくん、少し話があるから生徒会室ね」
「あ……」
そのままサユリに引っ張られて生徒会室に行く。
「話って……」
「昨日はごめんなさい。またデバイスを取って戦うから……許して下さい」
「――はい」
サユリは再びデバイスを手にした。
「体を壊してでも……団長として……!」
「あ……いや……その件……」
リョウは、例の件を詳細に説明した。
「あら、そうなの? ということは、みんな誤解しちゃったままなのね?」
リョウが頷く。
「これは大変ね。ちょっと行ってきます」
サユリは走って、1年の教室に向かって行ってしまった。
(あーあ……変化の日にしようと思ったのにな)
リョウは頭を抱えながら自分を悔やんでいた。そこへ、
「すまない! もう一度戦わせてくれないか!?」
「いくらなんでも昨日のは良くないから……だからもう一度お願いします」
「お前ら……」
タクミとタツヤが頭を下げてきた。
「そんなこと言うな」
リョウは、そんなことを言いながら、デバイスを渡す。ただ……
「ミユ……あいつは何処にいるんだ?」
ここで、サユリが焦ってドアを開けてきた。
「先生から聞いたけど……今日はミユちゃんはお休みみたい……とりあえず、もうすぐ授業が始まるから、教室に戻った方がいいですよ?」
3人は自分の教室へと戻る。
――――時間が経ち、この日の授業が終わった。
リョウと、誤解が解けた組は、一度生徒会室に集まった。話し合いを行い、ミユの家に行くことを決めた。ただ……
「そういえば、リョウ君には双子の妹がいたはずだけど……今日は来ているはずなのに……」
ここにはミヅカはいない。その理由を、リョウが言った。
「あいつには、『早めに帰っておけ』といっておいた。だからここには来ない」
とりあえず、皆納得した。4人は、そのまま駅に向かった。
電車に乗って小倉方面。門司では降りず、小森江にも降りず、そして……
『まもなく、終点、門司港です。――』
門司港。最近まで工事していたが、古く、立派な駅舎は有名である。そこからタクシーを使い、少し山の方へ。そこには……
「うおぉ……すっげぇな……家なのか、ここ」
タクミとタツヤは驚きを隠せなかった。目の前には、絵に描いたような豪邸がある。
「よし、いくぞ」
チャイム……かと思ったら重々しい鐘のような音が鳴った。漫画でよく出てきそうな、メイドっぽい人が来た。
「これはリョウ様。今回はどの様な案件で?」
「あいつが誤解したままのことを説明しに来た。というか、何故あいつは休んでいる」
何故だろうか。風邪か? 何かか?
「昨日、かなり悩んでおられまして……それで知恵熱というかなんというか……」
「その程度か。問題ないな。行くぞ」
「え、ちょっと!? まぁリョウ様がいらっしゃいますし……問題ないでしょう」
このやり取りを見て、タクミはこう思った。
(はぁ!? そんなに易々と入れてしまっていいのかよ!?)
タツヤも、訳が分からないと言わんばかりの顔立ちになっていた。
皆が家の中に入ると、執事と思われる人がいた。やはり、漫画に出てきそうな見た目だ。
「これはリョウ様。そちらの方はサユリ様と……どなた様でしょうか?」
「タクミとタツヤだ。怪しい人間ではない」
「分かりました。お嬢様の部屋は……」
「知っている。左の階段を登って、ドアを4つ数えたところに通路があるから、そこを曲がって、3つ目のデータキー付きのドアの先。鍵の番号は6309だ」
「やはり、覚えていらっしゃる。流石です。それでは、行ってらっしゃいませ」
易々とリョウと執事らの会話が進んでいるので、サユリ以外は、困惑していた。
そのまま進む。通路を曲がり、データキー付きのドアを開ける。その先にもう1つドアがある。それを開けると……
「「「うわっ!?」」」
リョウ以外の全員が衝撃を受けた。
「1度家に行ったことはあるけど……こんな部屋があるなんて……知りませんでした」
「俺は何回もここに連れていかれた。1年前が最後だが……この部屋、パワーアップしていやがる……」
その部屋は、何をどう見ても、ラブなホテルである。色んなモノがあり、ネオンを模したLEDで、『Welcome』『Ryo love』などといった文字が主張している。そして……
「やーっぱり来ると思った。私が休んだときは、絶対にここに来るからね。今回もそれを狙ってきた……あっ」
「「「変態」」」
「あ……これは……メイドが勝手に……」
苦しい言い訳は通用しない。大々的に『ミユとリョウの愛の巣』なんて書かれているものだから。
「「「ミユの変態!!」」」
「いやあああああああああああああああああああ!!」
「全く……」
ミユが泣きそうな顔になって叫んだ。リョウは、とにかく呆れていた。
「だから言っただろ……いつかバレるぞって。最初にバレた人員は想定外だが」
「うぅ……」
「こんな所にいたら、何も話せない。外に出るぞ」
ということで、外に出た。2階の屋上だ。
「んで、話だが……」
「サユリから聞いてる。見事に誤解していたみたい。まぁ……リョウがそんなバカバカしいことになるものを作るわけがないからね。ごめんね」
ミユにも、先に謝られてしまった。先手を打たれすぎた。全滅。
(――変化とはなんだったんだろうな、姉貴……。元に戻る機会が欲しい……)
「ん? リョウ? どうしたの?」
「あ……いや……なんでもない」
ミユにもデバイスを戻す。一応、解決した。でも、リョウとしては……
帰ってきた。
「あーにき……うおっ!?」
リョウはミヅカにしがみつくように抱きついた。
「変われなかった。何も。何一つ。どうすればいい……」
リョウは、溢れ出そうな涙を抑えてミヅカに問う。
「まだ焦らなくていいよ。まだ学校は始まったばかりだから。焦らない焦らない……」
ミヅカはリョウを撫でる。母が子を撫でるように。
「すまない……」
リョウの目から涙が溢れ出てくる。そして、崩れるように座り込む。そこでミヅカは……
「姉貴から教えてもらった呪文……って言うのかはわからないけど……」
ミヅカはリョウの額に口付けをした。
「!?」
「もう……なに赤くなってるの。もしかして、シスコンちゃん?」
「なわけあるか。今日は寿司でも食いに行くか」
「いえーい♪」
気を取り戻し、2人はそのまま寿司屋に行くのであった。
「ヒカリ、なんか学校に『望団』って言うのがあるらしいね」
「何それ?」
「なんか前にでかいカマキリとかナメクジが出たけど、すぐに倒されたでしょ? それを『望団』っていうところがやったらしいね」
「ヒーロー物ってミハヤちゃん、好きでしょ? だから……」
「ちょっと、気になるね」
「「2人で出来ないことは無いから……」」
その2人は、互いの手を強く握り合った。
どうも、カカシです。
いきなりですが、評価の基準(カカ視点で)を記します。
(ポイント)
5 やりますねぇ!
4 はぇ^~
3 普通だな!
2(内容も文章力も)ウ ン 〇 ー コ ン グ
1 は?