Phase1-4 威圧、望団
翌日。リョウ達は、休みなのに学校に行くことになった。何故ならば、生徒会長からの呼び出しがあったからだ。
「はぁ……あと少し寝させてくれよ」
「そんなこと言わずに。楽しく行こ?」
運良く同じ電車に乗り合わせたリョウとミユ。面倒臭がっている方と、楽しんでいる方。
学校に着いた。生徒会室に行くことになっているので、そこに行く。
「ここが生徒会室か」
ノックもせずにリョウが入り込んだ。
「ちょっと、リョウ? せめてノックは……」
「そんなこと、するのは時間の無駄……ん?」
窓を向いている人がいる。長い髪。開いた窓から吹き込む風。それにたなびく髪。
そして、その人は振り向いた。
「あら、噂の西原リョウくんですね? おはようございます」
「だ……誰だ?」
「あれ? 昨日、前に立っていましたけどね……ま、いっか。私が生徒会長の上村サユリです」
おっとりとしたトーンで話すサユリ。すると……
「最初に……リョウくん? ノックぐらいは、し ま し ょ う ね ?」
「!? ――は……い……」
リョウが何かを察知した。得体の知れない恐怖か何かを。
(この女……この女からはすごい威圧と殺気と……今まで通りの他人に対する接し方では……死ぬか!?)
リョウは、この感覚を『威圧』と『殺気』などとして処理した。そして、対応を間違えると死ぬかもしれないことも察知した。
(わお……リョウが返事した……すごいなぁ、サユリちゃん……)
ミユは、リョウが返事したことに反応していた。
「お、おい……ミユ、お前、この人のこと……なんで『サユリちゃん』って言えるんだよ??」
昨日の電話。ミユは最初、『サユリちゃん』と言っていた。その答えを、サユリが言った。
「ミユちゃんとは、面識があるの。一応、ここの理事長のお孫さんですからね。まぁ、ここまで仲がいいのは、やはり、ミユちゃんだから……かなぁ?」
「あ……はい……」
何を言っても怖い。リョウはそう感じている。と、ミユが耳元から、
「あんまり遠慮しなくていいよ。変に上から目線でなければ何も無いから」
「しかし……俺がそんなこと……」
「もう。今度トレーニングね」
「はぁ……」
リョウは友好的に他人と話せない。というか、話したことがない。だから、上から目線になる。と、サユリが話を切り出してきた。
「まぁ、話があるから呼び出したんだけど……学校では、あのような大きな昆虫などが出没した際には、『非日常』として扱うことにしました。そこで、今日ここで『望団』を作ります。これは決定事項です。取り敢えず、団長は私ということにしておいて、団員はリョウくんと、ミユちゃんですね。今のところは」
「おおー」
「それは……なん……です……か??」
望団。何をするのか、全く見当がつかない。
「リョウくんのアレ。アレを団員みんなが使って、『非日常』から北九州を守ろう!……そんな感じですね」
「しかし、何故あれが複数あることを?」
機械が複数あることはサユリには教えていないのに、知っている。その理由は……
「それなら、サユリ……会長から、『あの機械、あと何人分ある?』ってメールが来たから、『あと8人分ある』って送っておいたよ。増備中のこともね」
「お前な……」
ミユがメールで情報を伝えていたからであった。完全に情報漏洩である。
「というか、いちいち機械っていうのも面倒だし、名前が無いとね」
ミユがあの機械に名前をつけることを提言した。
「あれなら名前はある。『有事用属性特攻携帯装置』。英語にして、『Emargency Attributes Special Portable Devices』。長ったらしいから、『EAS-Pデバイス』とでも言っておけばいいか」
「じゃあ、『デバイス』で」
「もうそれでいい。勝手に呼べ」
例の機械は、『デバイス』と呼ぶことにした。
「えーっと……『属性』って?」
サユリが疑問を投げかけた。
「あの時、俺が使ったのは『火』のデバイスだ。あの銃も、その力があってこそだ。あと、他にもいろいろある。『水』とか『電気』とか『闇』とかな」
火。確かに、あの時は結構炎が出ていた。
「面白そうですね」
「まぁ、こんなことになるだろうと、ある分全部持ってきた。勝手に選んでも構わない」
リョウは、2人にデバイスを選ばせた。
「じゃあ、私は『01』で」
「うーん……『X01』って気になるわね……」
ミユが『01』の、サユリが『X01』のデバイスを手にした。
「それか。『01』は『水』だ。水流などで攻撃する。水の力は凄まじい。かなり強力だ。そして『X01』は、『鋼』だ。鉄であれば、自由にいじくり回せる。つまり、やろうと思えば、船や車だってできてしまうチート物だ。今、2人はかなり強力なものを入手したことになる。扱いには気をつけるようにな」
「おぉ……すごいなぁ」
「大変なものを手にしてしまったようね。ふふふ……楽しくなってきちゃった」
こうして、戦う者が2人増えた。そして『望団』として、戦っていくことにもなった。
非日常に抗う物語。それが本格的に動き出す。