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俺は帰りたいんですが。  作者: 来島ぎれ
第一章 個人召喚
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かくして魔術師はついてきた

轟音と共に落ちたるは雷鳴の光。

閃光と共に響くかましくも重厚な音は大地を振動させた。

瞬間のことだった。

オジルクは感電したのであろう焦げた傷から煙が出ていた。

そのままの姿勢で動かず硬直していたが、やがて揺らめいたかと思えば後ろに重心が移動し地鳴りに倒れた。

紛れもない感電死だ。


魔術師は半目で虚ろな目付きで上半身を起こして座るが、オジルクを一瞥してから直ぐに横になり寝直した。

音に驚き一連の出来事を目にした魔狼。


は、ははは。

俺は声に出しはしなかったが笑った。

結界魔術か。何事もなかった様に寝直したなアイツ。何だ面白い人間じゃないか。

俺は少しだけ魔術師に興味を持った。



「う、わっ!」


明るい。

朝陽はとうの昔か既に真上に近かった。

シャズナルが目を覚まし、近くにオジルクの死体があった事に驚く。

そういえば疲れ切って結界を寝ボケて張ったなと思い出す。


一度眠ると寝覚めが悪いだけだった。


「そうだ。魔狼様はもう発っただろうか」


見回すと、丸くなって眠っている黒犬がそこに居た。置いて行かれずホッとする。

丸めたマントの枕元にはこと切れた野兎が一羽転がっていて思わず魔狼を見た。


「…これは」


俺にくれたのか?食料を恵んでくれたのか?ははっ。

内心笑いながらも気紛れだろうが小さな優しさに変わりはなく嬉しかった。胸が温かくなったのだった。



黒鉄魔狼ブラロは希少な古の獣だった。

竜や金獅子などと同じく古くから生き続ける魔物。

冒険者や魔術師の間でも知らない者はいない。

雄々しく強さがあるのに、無駄な殺生をせず森の中で静かに生きる姿は崇拝対象にもなる程人気がある。



気が付けば術師の最高位、魔導師という地位に上り詰めた自分。

何も努力はしてない。

運も才能のうちだと自分は流された人生でここまで来た。

主に攻撃や結界防御、次いで再生治癒術を極めた。


それが王子の一言で専門外の召喚。

黒鉄魔狼をティムしろだなどと誰が予見出来たか。嫌だろうと主命は仕事。所詮城勤めで駒のひとつだ。上司には逆らえない。


テ冒険者の間でも失敗や飼育場所や餌や代などリスクが多く、テイマーなんぞとうの昔に廃れた分野だった。

残る少ない文献を読み漁り四苦八苦して召喚術を物にしようとこればかりは努力した。

王子や周りの取り巻き官吏や術師に馬鹿にされる。それでも仕事だった。

早く魔狼を連れて来いと急かされる毎日。

思うように進まない。

段々自分が何も出来ないという無力感に苛まれ出した。脅迫めいて聴こえ出す子供のワガママ。


そしてやっと召喚し成功したかと思いきや、契約は無理だったのだ。

失敗した。

初めての失敗と挫折だった。

俺はもうダメだと思った。

情けない事に終いに魔狼に諭されたのだが。

は、ははは。

あの瞬間に人生が馬鹿らしくなった。

町に戻り再び姿を見て無意識に追い掛けた。


知りたい。この魔物をもっと知りたい。

ただそれだけでついてきたのだ。

力を貸して欲しい。

ただの口実だった。

俺はどうする気なのか。

このまま何処までついて行くのだろう。


城に帰る?

それはもう既に現実味が無い。

ここに黒鉄魔狼ブラロがいる。この事のほうが魅力的で現実的だった。



空腹なのを思い出し、野兎を有り難く食べる事にした。

魔術で食べれるように皮を剥ぎ焼いた。兎の肉は匂いは独特で脂は少なく固めだが、鳥肉に近く旨いのだ。

焼けた匂いに魔狼の鼻がヒクつく。パタパタと乾いた音を立て、耳も動いている。


生も美味いのでしょうが、焼いた肉も美味いんですよ。今度は俺が炙り調理したのを食べて貰おうかな。

美しい気並みの黒犬を見て、そんな事を考えるのだった。






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