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俺は帰りたいんですが。  作者: 来島ぎれ
第一章 個人召喚
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わをーん!!

霧の森グルガナにいる孤高の黒鉄魔狼ブラロとは誰が付けたのか、最早過去の異名に成り下がった。


クロウが慣れない日常魔法で低木柵で囲んだ草地を、プーに会えると思いつつ今日も眺めて怠惰に過ごす。


本日も柵の中は俺の食料達がぴょんぴょんと集会して寛いでやがる。

ヨダレが出るなあ。


ふと、一匹の筒ネズミが俺に突進してきた。


ぽすん


なにやってんだ?

腹に体当たりしたってどうにもならないぞ。五十センチも満たない獣が何やってんだか。


意味もなく突進して抱きつくプーを思い出して目を細めた。筒ネズミもいそいそと柵に向かって走り出す。


「はは…、平和だな。そろそろ、か」


ラズとクロウがやりたい放題の後で帰郷転移する際置いていった時計を見た。


リリーはブチギレてラズをこの大陸入国禁止にした。魔力でわかるから来たら咬み切る気らしい。いい判断してくれたよ。


「ループスー」

「やほー」


マーカーが出来たのでクロウとクルフェルが遊びに来るようになった。二人の魔術も更に上位になって来て見える魔力もくっきりしてきた。


あれから一年経った。


「やれやれ」

「う、うわあ、やっぱり見惚れるわぁー」

「ですよねえループス最強です」

「おい、そこどけ。服着る」


俺はあたり触らず平々凡々に生きたい。

それは今も変わらない。

短期間の道中でイライラしたおかげか前世の人間性が表に出るようになった。

困った事に獣として過ごすのが退屈で仕方ない時があるんだ。


そんな折、試しに人化したら軽く出来てしまったのだ。人の形を思えばそれで変わる。実に簡単だ。


胸下までの癖のある黒緑の髪、薄く色付いた褐色の肌、黄金色の目をした青年になった。

クルフェルが惚れるわーの異国王子だった。


「えーと、物の名前からでしたね!」

「あ、これ追加絵本ねー」

「ああ、助かる」


クロウがくれた服を来て二人と向かい合いガーデンチェアに座る。あまりにも退屈になって子供絵本で識字教室を始めた。もちろん俺が生徒。



「おい、こっち見るな」

「えー、見ても減らないでしょ、気にしないで字書けば?それ間違ってるけどね」

「何だと。どれだ」

「教えたら駄目ですよ!ループスも聞かないで書いてくださいね!」

「ああ?一個くらい良いだろう」


じーっとクロウを見た。

この熱血教師め。


「何ですか」

「いやー、私を見つめて欲しいわ魔狼!その顔ってどこからそうなったの?凄いわー」

「知らん、親にでも似たんだろ」

「ループス、ペンが止まってますよ」

「……わかってる。クルフェル腕を組むな。ちっぱいがあたってるぞ」

「ちっぱい?」

「小さい胸のことだ。小さいぱいぱいだ」

「……魔狼、女性には言って良いことと悪い事が有るって存じてますわよね、おほほほ」

「いででで」

「ループス、真面目にやって下さいよー」


頬をぐにっとツネられる。

口が滑った。クルフェルって言いにくいから最近内心ちっぱいって呼んでたからな。


俺は習った単語を綴る。今日はひたすらパンと肉と飲み物ってガリガリと書く。

一言なのに何で十文字近くのスペルなんだ、腹立つわ。


「あ!」

「あー、まさか、魔狼!見て見て!」

「…なんだ」


頭を上げるとそれは待ちに待った者だった。

フワフワと仄かな小さな光が舞い、迷う事なく魔狼に近づいて頭の上に乗ったのだ。


「……プーか?お帰りだ。待ってたぞ」


目を閉じて心からそう思った。


クロウもクルフェルも穏やかに微笑んでいたと、思ったらワタワタと席を立ち口をパクパクし始めた。


「何だ、お前ら」


「ま、魔狼!す、透けてる!」

「ループス、何か魔術使いましたか?!」

「は?」

「えっ、いやっコレ既に触れないわよ!」


スカスカと俺の身体をクルフェルの腕がきっていた。


目の前に手を持ってきて見ると本当に透けていた。


「え、ループス?!」

「……どういう事だ」


顔を上げると・・・あ、れ?


「勇者様が召喚されたぞ!」

「成功だ!成功したぞ!」

「これで魔王討伐の悲願が!」


ウォオオォ!!!


は?


厳つい重装騎兵、ヒゲの長過ぎる老人、頭に冠が乗った青年に、大きい胸を略しておっぱいの可愛い女性が俺を囲んでいた。


その周りには大勢の人。足元を見ると見覚えのある青白い光を放つ円陣。


「勇者様!どうかこの国をお救い下さい!」


おっぱいの女性が目の前に来て訴えた。


・・・勇者。


つんつんと髪を引かれた感じがした。

フワフワと目の前に浮かぶ仄かな光は頬を掠めてまた頭に乗ったようだ。


プーが一緒か。ふ、ははっ。


「せ、聖霊の加護がついてるとは!」

「ゆ、勇者様!」

「加護付きの勇者様だぞ!」


女性に並んで冠載せた青年も縋る目で続く。


「どうかこの国をお救い下さい」


勝手に呼び出して仕事を押し付けるって本当迷惑極まりない。しかも命かかってたりするんだろ。阿保だ阿保。


馬鹿らしくて思いクソ遠吠えしてやりたい。


わをーん、てな。


俺は魔狼。獣で魔獣だ。


グルガナの霧の森に住む黒鉄魔狼だ。




「断る。俺は住処に帰るぞ」












「お待ちください!」


完、って書いてるだろ。

ここから俺は自由に住処に帰るんだから邪魔しないで欲しい。


「私はこの国の王です。民達を守りたいのです。西から進行して切迫しているのです。魔物に蹂躙、ましてや支配などされたくありませんでしょう!どうか。どうか!」


・・・これ強制クエストなのか?



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