はたしてここはドコなのか
「なんでだ」
「……は?」
現状確認。転移直後です。
「あれえ?」
なんで目の前に広がるのは荒れ野なんだろう。
西部劇でよくみる回転草、タンブルウィードそっくりの草が風にあおられコロコロと転がって行く。
銀髪美形青年、黒犬、パピヨン獣人が並んで立ち尽くし、風の音はまさにひゅるるる〜と砂埃を舞い上がらせる。俺は最大限の非難の目でクルフェルを見た。
「というか、何故お前までいる」
「なんで、でしょー?」
クルフェルも訳が分からないようだ。
「と、取り敢えず検索しますね」
腑に落ちない顔になるクロウは位置を確認するようだ。
「…あれ?クルフェルも確認を」
「えー?うん?」
術後のクルフェルも更に腑に落ちない顔になった。
仲良くない術師二人は珍しく顔を見合わせてから俺に言った。
「ここ目的地のユーリウスです」
「ユーリウス、で、あってる」
「……は?町、じゃないのか?」
改めて、見回してみた。
確かに遠方に町があったような更地とそこを囲む石壁の残骸。四方から町に入るであろう道があり門だとわかる石壁が一カ所だけ半分残っている。背の低い草木はあるが住宅基礎がかすかに残る程度だった。
遥か彼方にはちらほら道沿いに農家や畑がまばらで牧草地帯と家畜や山脈がみえる。
俺は耳を忙しなく動かし鼻は匂いを拾っていた。
「かなりの、町。手前に転移にしたー。城壁の町大きい。見えるはず!」
「平野の普通の町のはずですよね」
「は?町跡しかないが?昔、町だったってオチか?」
「ひと月前、町あったよー!」
「ひと月前?人居ませんね…」
「いや、音は微妙に聞こえるし、においは人や食べ物とか色々あるぞ?ここから聞こえる」
魔狼は地面をたんたんと前脚で突く。一人と二匹は偶然右方向に揃えたように首を傾げた。
クロウの青毛の馬は道草を食んでいる。そしてまたタンブルウィードそっくりの草が風にあおられコロコロと転がる。呆然としている間に時間は過ぎて行く。
向こうに農家もあるし、馬車の音が聞こえていた俺はそれを待つ事にした。
「おーーい!あんたらユーリウスに用かあ」
声がする方を見ると荷馬車に乗った商人らしき中年がいた。馬車も数台続き、旅人も居る様だった。
「ええ、町はどこに消えたんですか」
クロウは困り果てた顔で聞いた。
「ああ、獣人さんもいるとなると海沿いの遠くから来たんかいな?地上から消えたのは二日前じゃ。ほんに困った事してくれるもんよなあ」
先頭馬車の中年があご髭をさすりながら答える。
「二日前消えた?」
「誰か、なんかしたー?」
「おーーい、おやっさん!俺ら先いくぞー」
「お、おお、町に先行っててくれやー」
「おやっさん閉めとけよー!」
「おお!」
町に行くという残りの馬車と旅人達に目が行く。半壊した門に向かい数人の男達が膝を付き、地面の土を手で払い始めた。地面に何かあるようだ。ここから見えるのは鎖。左に一人、右にも一人持ち引いてギギギと少し重たげな音がした。そして、馬車と人はその地面に消えて行った。いや、降りて行ったという方が正しい。
「あんたらも寄って行くか?地下に引っ越したんだが」
「地下?」
「引っ越し、した?」
「だってなあ。地上の町を魔王が壊しちまったんだ。仕方ないだろう?人は無事だったんだが何せ全半壊で壊滅的な被害だったもんでな。一旦更地にして再建予定なんよ。半数は地下に仮住まいじゃな」
「ま、魔王って、あの魔王ですか?」
クロウはサーッと顔が青ざめた。
「あの魔王じゃわい。最近また意味が分からん事言いよっての。あ、あんたら魔法使えるか?使ったら魔王のせいか知らんが、今の所土地に引き寄せられるからな。ちょいと離れて使えよ?」
んん?それで魔力の強いクルフェルは、引きずられてここに居るってことか?
「元々ここは地下に友好協定で交流盛んな土竜族がおってな。再建までは地下に間借りしてんだわ。まあ見ればわかる。ほらほら行くぞー」
「まさか、あの、破壊、魔王?」
クルフェルはパピヨンの耳をへたりと寝かせ、げんなりして項垂れた。
俺は雲一つない空を仰いで、静かな故郷の霧の森の住処に想いを馳せた。
破壊魔王ってなんだ。頭おかしい基準の魔術師二人が嫌がっているという事は、更に基準値上を行く破壊神だろうか?
これは魔王討伐クエスト発生なのか?
土竜族てまた獣人か?
次から次に来る面倒に、黒犬のまま溜め息をついた。




