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東京RPC  作者: 叶生 寧愛
序章「破滅へのプロローグ」
3/5

*ちゅーとりある1「ゲームを始める前に」*

「これは──?」


右腕には、全く身に覚えのない腕輪が装着されていた。

こんな腕輪、いつ着けたんだろうか。少なくとも東京に来た時は着けていなかったし、どうやらみんなも同じような腕輪を着けているようだ。

すると、

〝《ちゅーとりある》始めるには、何人かに参加しやがってもらう必要があるんですよ…(ちな)みに自主参加制ですが、あまりに遅すぎると私何するか分からないんでねぇ。退屈は嫌いだし、待ってんのは退屈だ〟

と『何か』が言い、続ける。

〝ほらほら、モタモタしやがるんじゃねぇ、ですよ。あと1分だけ待ってやるから、参加したいならその腕輪に触れやがってくだせぇ。ま、大体6人くらいですかね?とりあえず早く決めやがってくだせぇ〜はいあと50秒!〟

…周りを見てみると、こんな状況でも腕輪に触れようとする者はいない様子だった。

チュートリアルは、ゲームをする上で避けられない。この大人数の中で、先にゲームを体験できる、ということは間違いなく、大きく有利になるだろう。

「俺、行くよ」

他の3人に告げた。

すると3人は──…

「ともちゃんならそう言うと思ってた!」

「あぁだりい…けどそういうことなら、やるしかないんだろ」

「うっ…うん。私も頑張るよ…っ」

…心配する必要はなさそうだ。それでこそ天才四人、『宵闇の(ムーンナイト・)四重奏(カルテット)』だ。

俺たちは顔を見合わせ、同時に腕輪に触れた。

瞬間、俺たちは、青い光に包まれた──。



▼△Now Loading…▽▲



眼を開けると、そこは箱のような部屋の中だった。

壁も床も天井も、真っ白に塗り潰されているようだった。


〝──出揃いやがったな、でぇす〟


声が部屋の中に、響き渡った。

その声と喋り方はやはり、映像の中にいた『何か』だろう。性別の判断が難しい声だ。


…周りを見てみると、俺たち四人以外に、二人の人間がいた。

ひとりは体躯(たいく)が大きく、ゲーマーとは信じ(がた)いくらいに鍛錬(たんれん)された男…まあ、今日の時点で東京に居た全員がゲーマーとは限らないのだが。

もうひとりは…フードを深く被っていて、顔がよく見えない。小柄な方で、身長は目測で160前後といったところだろうか。

…手前に大男が立っているので、大きく外れているかもしれないけれど。


そんなことを考えていると、チュートリアルは始まった。

〝──さて。まず手始めに、腕輪の赤く光っている部分を、メニュー(めにゅー)が出るまでタップ(たっぷ)し続けてくだせぇ。大体2秒間くらいですかねぇ?ちなみにメニュー(めにゅー)を閉じる時も、この方法でできるでぇす。〟

…腕輪を調べてみると、赤く光っているところはすぐに見つかった。指二本分くらいの幅で(へこ)んでいて、言われた通りに左手の人差し指と中指で触れてみると、目の前には顔よりも少し大きめの、長方形の半透明な画面が浮かび上がった。

〝次はユーザ(ゆーざ)登録でぇす。まず、それぞれ役職(じょぶ)を決めやがってもらうでぇす。これはゲーム(げーむ)終了まで変えることはできねぇですので、よぉ〜く考えやがってくだせぇな〟

『何か』がそう言うと、画面内にその役職(ジョブ)と思われる名称が6つ出現した。

〝選択は腕輪に付いているダイヤル(だいやる)で。決定は先ほどの赤いところをタップ(たっぷ)しやがればできるでぇす〟

腕輪の側面にダイヤルのようなものがあるのを確認すると、ほんの少しだけ動かしてみた。

すると画面内で一番上にあった役職(ジョブ)が点滅し始め、それの説明が新しく表示された。

更にダイヤルを回して他の役職(ジョブ)を調べてみると、同じように説明が短くまとめられていた。


全6種の役職(ジョブ)とそれらの概要(がいよう)は、こうだ。


戦士(シルヴァ)

近距離戦に強く、剣や槍などの武器を駆使(くし)して戦う。


魔導師(ブラクド)

遠距離戦に強く、呪文や魔法などの術式を駆使して戦う。


武闘家(ブロゥン)

超近距離戦において(ひい)でていて、打撃や蹴撃(しゅうげき)などの武術を駆使して戦う。


射手(オランジ)

超遠距離戦において秀でていて、クロスボウや弓などの武具を駆使して戦う。


精霊使い(グリィム)

極端(きょくたん)に特化しているものはなく、精霊の力を駆使して戦う。


守護者(ゴルゥド)

仲間や自身を(まも)り、頑丈(がんじょう)(よろい)や盾などの防具を駆使して戦う。


──と。


「ともちゃんはどうする?」

画面を見ながら、きら姉が話しかけてきた。

「…決まってんだろ。俺は、《戦士(シルヴァ)》にするよ。積極的に戦いたいからな。みんなはどうするんだ?」

画面から目を離し()いてみると、

「俺は《武闘家(ブロゥン)》だ。身体(からだ)を動かすのは得意だからな」

最後にだるいけど、と付け加え輝丞が言う。やる気の有無(うむ)に関してはともかく、体育の成績がトップのコイツなら適任(てきにん)だろう。

「私は《魔導師(ブラクド)》かな。なんとなく、楽しそうだし」

漠然(ばくぜん)としすぎだ、と思うが、きら姉なら多分大丈夫だろう。きっと使いこなしてくれる。あとは…

「お前はどうすんだ?魅波」

画面とにらめっこをしている魅波に訊く。するとこちらを向き言った。

「私は…《精霊使い(グリィム)》にする。特に理由はないけど…私が役に立てるのは、これくらいかなって思ったから…っ」

弱々しい声でそんなことを言う。確かに魅波は戦闘向きではないかもしれないが、『ワルオフ』では誰よりも努力して、俺たちについてきていた。だから、彼女には自信を持って(のぞ)んでほしい。

「ああ。けどお前は、もっと自分を信じてもいいと思うぞ。俺たちはお前を信じてる。それに…頼りにしてるからな」

そう言うと魅波は力強く(うなず)いた。…内心、プレッシャーをかけたかと心配になったが、大丈夫そうだ。俺たちは自分の役職(ジョブ)をそれぞれ決め、腕輪に触れた。

すると突然、

〔《戦士(シルヴァ)》、登録しました〕

──と、機械で加工されたような音声が聴こえた。

〝それは人工知能の『ラプシィ(らぷしー)』といいやがるでぇす。きっと中盤(ちゅうばん)程度から利用頻度(ひんど)が高くなりやがりますので、細かいことは後々(のちのち)個人でメニュー(めにゅー)の『ヘルプ(へるぷ)』から調べやがってくだせぇ。…次はユーザ(ゆーざ)名を決めやがるでぇす。これはラプシィ(らぷしー)口頭(こうとう)で、スペル(すぺる)と読み方を言いやがってくだせぇ。大文字は先頭の文字だけで、訂正(ていせい)したい場合は「クリア(くりあ)」と言いやがるでぇす〟


画面を見ると、『スペルを入力してください』という文字と、その下にはカーソルが表示されていた。「(エス)」と発声してみると、画面にも新しく『S』が表示され、カーソルはその右側に移動した。

続けて、

h(エイチ)a(エー)d(ディー)o(オー)w(ダブリュー)…読みは『シャドウ』だ」

と言うと、

〔『シャドウ』スペル確認、これで(よろ)しければ、ポインターに触れてください〕

画面には『Shadow』と表示された。とりあえずはこれでいいのだが…ポインター?なんのことだろう。

するとタイミングを見計らったように、声が響く。

〝言い忘れてましたが、これからはその赤いのを『ポインター(ぽいんたー)』と言いやがってくだせぇ〟

──と。最初から言え。


…まあ、とりあえずラプシィの言う通り、ポインターに触れる。

〔ユーザShadow(シャドウ)。登録しました〕

〝そのユーザ(ゆーざ)名はこれからお前たちの名前として、他プレイヤー(ぷれーやー)たちの目に映りやがるでぇす。一度確認してみやがるといいでぇす〟

みんなの顔を見ると、頭上にそれぞれの名前と、色の違うゲージが二本ずつ見える。

輝丞は『Ramix(ラミクス)』、きら姉は『Lily(リリィ)』、魅波は『Mira(ミラ)』。やはりいつもと同じ名前だ。


〝──では、準備が整いやがったようなので…実戦(じっせん)編と行きやしょう〟


直後──。

真っ白な空間のはずだったここが、突如平原のような地形になり、目の前に多数の狼が出現した。

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