*Now Loading…「自称天才四人」*
時は遡り1時間前。
俺、喜多 智影は、天才RPGゲーマーの友人たちと四人で、大手VRゲーム会社の特大イベントのため、東京の新宿に来ていた。
そのゲーム会社とは、インモルタール社のことで、語源はラテン語で「不滅」を意味する、Immortalisから来ているという。
そのインモルタール社がつい先月、代表RPGゲーム『World of the infinity』、通称ワルオフの続編、『World of the infinity Ø』の制作プロジェクト決定を発表したため、ここ新宿で盛大に続編発表記念及び試遊会が催されることとなった。
ちなみにこれは余談だが、ワルオフでは基本的にパーティをプレイヤー同士で組む。そして全ストーリーをクリアすると、そのパーティでオンラインによる対人戦や、他のパーティと力を合わせ討伐クエストなどができるようになる。
オンラインで勝利したり活躍したりするとレートが上がり、レートには個人レートとPTレートがある。
これは単なるものさしに過ぎないのであまり気にすることはないが、高いレートを持てばそれなりに名が知られる。無論俺たちは天才RPGゲーマーなので、常にレートを上げつつ努力している。
ちなみに俺らのPTレートは現在5939。
国内ランクではやっとトップ20に入れたが、世界ランクは…考えたくない。
「あ〜あ、人多いしだるいし眠いし帰りてぇし…なんか来ただけですっげー疲れたぁ」
コイツは桐谷 輝丞。マイペースで口ぐせは「眠い」。だがやる時はやる男ってやつで、頼れる存在、俺の親友だ。個人レートは5977。国内ランク15。
「こーちゃん、またアンタはそうやって…今日はめでたい日なんだから、楽しまなきゃいけないの。わかるでしょ?」
この多少上から目線のような喋り方のヤツは藍音 姫螺々。アネゴ肌で、親しい人を○○ちゃんと呼ぶ。ちなみに歳は同じだが、俺たちはきら姉と呼んでいる。個人レートは5902。国内ランク17。
「うぅ…き、桐谷くんはもっとちゃんとした方がいいと思う…っ!」
「お!みーちゃんならそう言うと思ってたよ〜もー大す───」
「きら姉は…えっと…人前で頭撫でるのやめて…っ!」
このオロオロしている気の小さそうなのは紅羅 魅波。俺の幼なじみで、臆病だが言いたいことはきっちり言う。個人レートは5821。国内ランク20。
「ふえ〜ともちゃーん私みーちゃんにフられちゃったよお慰めてよおリーダーでしょ〜…」
と、固まっていたきら姉がなぜか俺に縋りついてくる。なんだろう、なにか温かくて柔らかいものが腕に…
「ちょっ…トモくんから離れてよ…っ!」
なぜか顔を赤くして、魅波が言った。
するときら姉は何かを察したように、
「あっ…ふ〜ん?僻んでるんでしょ、みーちゃん?」
などと言う。
…と、
「いやおい、ここは魅波の言う通り離れるとこだろ!?」
なぜか更に密着してきたきら姉に投げかけるが、離れる様子が微塵もないようだ。
「ううぅ…」
顔を赤くしたままに、魅波はなぜか自分の胸を隠すように腕で覆った。なんとなくきら姉の視線を追うと…なるほど。全てを理解した。
「…俺帰ってもいいか?」
と、一連の流れを見ていた輝丞が言い大きく欠伸をする。
しかし俺は、
「いや待て待つんだ輝丞。今すぐなんとかして俺を助けろ、これはリーダーとしての命令だ」
と言っ───
「帰るわ」
「おいいいいいい!?!?」
…思わず叫んでしまった。
「リーダー命令が出来るなら既にこの状況打開出来てるだろ」
「ぐっ…」
なかなか痛いところを突いてきやがる。…が、確かにそうだ。
「もうなんか…胃が痛い」
───繰り返すが、俺は喜多 智影。
四人構成パーティ『宵闇の四重奏』の主。個人レートは6059。国内ランクは14だ。
──あ。
「ん?…なんだ、なんかこの音楽…」
突然、鼓膜を震わすほどの大音量で、音楽が流れ始めた。よく聴くとこれは、『ワルオフ』のGAME OVERの時に流れる…
──ばたん、と。
輝丞が、その場で倒れた。
「ちょ、輝丞!?お前よくここで寝られ──」
そこまで言い、気が付く。周りの人間も、輝丞と同じように、次々と倒れ始めている。
「ぐっ…」
急にめまいが襲ってきた。気を確かに保とうとする。
…すると腕にしがみついていたきら姉の力が抜け、同じように倒れた。
直後、目の前の魅波も倒れた。
「なん──で──…」
この現状も理解出来ないまま、俺も例に倣い、その場に倒れ伏せ、意識を手放した。
▼△Now Loading…▽▲
そして、現在。
〝──では、始めやしょう。極大プロジェクト《東京RPC》を──〟
これから始まるチュートリアルとやらを待っていると、突如見覚えのない腕輪が輝き出した。
「これは──?」