表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東京RPC  作者: 叶生 寧愛
序章「破滅へのプロローグ」
1/5

*オープニング「変わり果てた街」*

〝おっはよーごぜぇます、みなのしゅー!〟

…その声で俺は、目を覚ました。


〝いやぁ〜、この日が来やがるのをずぅ…っと心待ちにしていましたよ、私は〟

何が起こったのか、わからない。気付くと、こんなザマだ。眠る前の記憶が曖昧で、「いつもの四人」で東京に遊びに来ていたこと以外、よく思い出せない。ただ今わかることは、顔の見えない(・・・・・・)何者かが、虚空(こくう)に出現している映像(と言っていいのかわからないがとりあえずそう呼ぶことにした)の中で話していることと、どうやらここは東京の姿かたちと全く変わらないどこか、ということだ。

「どこか」と言ったのは、この《東京》の中にも、おかしいことが2つほどあるからだ。

ひとつは、街中のあらゆる店が閉め切っている。まだ昼間なのにも関わらず、だ。

いや、「昼間」というのは少し間違っているかもしれない。そのワケが、もうひとつだ。

──空の様子が、おかしいのだ。まず、俺達の知っている「夜」ではないことは明らかだ。暗くないし、むしろ明るさだけ(・・・・・)で判断すれば昼だ、というくらいに明るい。

様子がおかしい、というのは、時々スノーノイズのように、プツリ──と白い斑点(はんてん)が現れたり、電波受信の悪いテレビのように、突然三原色の光が点滅することがあるのだ。まるで──映像のようだ。リアリティが、ない。

そんなことを考えていると、モニターに映る『何か』が突然、

〝おい!まーだ寝てるやついんのか、やる気あんのかよ!…あと10秒だけ待ってやるから、早く起きやがれくだせぇ〟

と言った。どこかで見ているのだろうか。

確かに周りを見ると、ほとんどの人間がモニターに注目しているのだが、その中にもまだ横たわる者がいる。しかし今の怒号(どごう)で、起きた者も多いようだ。

「…んー、うるせぇなぁ」

と、一緒に来ていた三人──俺を含めると四人──のうちのひとりが言い目を覚ました。こいつはいつも、マイペースだ。

呆れていると、

〝にーい、いーち…〟

──律儀(りちぎ)に数えていた『何か』が、顔が見えないはずの『何か』が、笑った。俺ははっきりと見た。奴の口元(?)が不気味に、両端(りょうたん)を吊り上げているのを、確かに見た。その直後のことだ。

〝…ぜろ。時間切れでぇす〟

──瞬間、地に横たわっていたままの人間の胸が裂け(・・・・)、血が噴出(ふんしゅつ)した。

声が出なかった。…死んだ?人が、目の前で?

あちこちで、悲鳴や哀咽(あいえつ)が聞こえる。そりゃそうだ。誰だってパニックになるし、死んだのが家族や友人なら…耐えられないだろう。

すると、

〝安心しやがれくだせぇ、「鐘」が鳴れば、その死体は消滅しやがるんで〟

(なぐさ)めているのか傷を(えぐ)っているのかわからない言い方だ。ところどころから、怒鳴り声や叫び声が聞こえる。

「ふざけんじゃねえ!」「戻せ!」「どうしてこんなことに…」「どういうことか説明してくれ!」

と。すると奴は、

〝あぁ〜、うるせぇなあ、さっきのでわかりやがると思ったんだけどなぁ…私は、てめぇらをいつでも殺せるんだよ。それ以上叫びやがったら殺すぞ〟

と言う。すると、ぴたりと声は止む。やはり奴はどこかで見ているのだろうか。

〝はーはっはっ、やっぱてめぇら単純だなぁ、命を握られるとここまで従順(じゅうじゅん)になりやがるか〟

ここまでコケにされると、さすがに悔しい。だんだん腹が立ってくる。しかし奴の気まぐれで殺されることもあると知った以上、迂闊(うかつ)に行動できない。

…しかし言いたいことは、言わせてもらう。危険を(おか)してでも、この意味不明な状況下にいることが気持ち悪くて仕方がない。俺はどこかで見ているだろう奴に聞こえるように、

「いいから早く教えろよ、どうして俺達はこんなことに巻き込まれてんだ?これから何が始まるんだ?いい加減教えてくれよ!」

と言った。すると奴は、

〝ふぅん…こんなヤツもいやがるのか、面白(おもしれ)ぇ。まあいい、もう少し楽しみたかったが、そろそろ《ちゅーとりある》始めてやるか〟

なんてことを言った。とりあえず殺されなかったことはよかったが、チュートリアル?まるでゲームでも始めるかのようだな。


その言葉を脳内で反芻(はんすう)させながら、俺たち四人は顔を見合わせた。


〝──では始めやしょう。極大プロジェクト(ぷろじぇくと)、《東京RPC》を──〟

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ