練習1ページ 感情移入、一人称
カクン…カクン…
「……………」
私は静かにポケットから携帯電話を取り出してムービー録画開始のボタンを押した。
……カクン。
カクン。
携帯画面の向こうにはゲームのコントローラーを握り締めながら船を漕いでいる彼の姿。
(すごい執着心だー)
ゲームって寝る間も惜しんでやりたいものなの?そんなに楽しいかなぁ…?
以前彼が「絶対面白いから一緒にやろうぜ」って言われてやったけど、私はよくわかんなかった。
カクン。
あぁもう、可愛いなぁ。
私は君が睡魔と闘いながらボタンを連打してる姿を見てる方が面白いよ、全然飽きない。
ゲーム画面の中ではおっきな剣をもった男の人が彼のボタンを押すテンポと同時にパンチだけを繰り返している。
K.O!!
(酔拳とはいかなかったか、残念無念)
おっきな剣を持った人はついにその剣を(私の見る限り)1回も振るうこと無く、試合終了の合図が鳴り響いた。
さぞかし無念だっただろう。
「っは…あれ…?」
その音でビクッっと彼が目を覚ます。
「…寝てた?」
「寝ながら戦ってたよ」
私はニヤニヤしながら彼を茶化す。
「おー…徹夜でやってたからなぁ」
「それ、勉強に向ければきっと学年トップだよ」
「…ん、何?撮ってんの?」
録画に気付いた彼がわざとらしくポーズなんて決めてくる
「ふふんっ」
「ばーか」
「とか言いつつ撮るのやめないのな。可愛い奴め」
「…ばーか」
「後でけしとけよ?」
「うん」
こんな無防備な君を撮れるなんて珍しいんだから、消せるわけないじゃん。しばらくこれでおちょくってやろっと。