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みそっかす王女と二人の紋章騎士~男装の姫は麗しの騎士に口づける  作者: 藍杜雫
第七章 カルセドニーの疑惑、ロードナイトの戸惑い
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6~昼食と慰めと明日のために-3

けれども次の瞬間、にっこりと満面に微笑みを浮かべてみせる。


「おまえたち、余裕だな。そんな人を揶揄からかうことに割く能力があるなんて……。観客たちや賭け屋の下馬評によると、おおむね優勝候補らしいのが順当に勝ち残っているって話だったが」


「優勝候補ねえ……きっと俺のことだな。もちろんこれからも、順調に勝ち上がるけど」

「おまえのその、根拠のない自信には呆れるを通り越して、尊敬するよ……自分でよくそんなこと口にできるな」


「そういうけど、漆黒の騎士になりたいっていうことは、この大祭で優勝した言ってることと同じじゃないのか。それに、優勝候補ったって、誰だかわからないんだから、自分のことだと思ってる方が気が楽だろ」


変な論理。

言い返したいなら言い返してみろといわんばかりに、踏ん反りかえる姿にウェラディアだって呆れて声もでない。

でもまぁ、弱気になられるより、カルセドニーらしいか――。

さっき見たばかりの、遠い目をした横顔より、ずっといい。


「その楽観的なところが、カルセドニーのいいところだよな」

「まぁ、否定はしないが――」

ロードナイトの控えめな賛同は、これはこれで、面白い。


自分とはあまりにも違う主義主張になんだかんだと文句をつけながらも、心の奥底では、カルセドニーのことを認めているのだろう。

『カルセドニーなんか、なんとなくひょっと勝ち抜けてしまいそうだからな』

あれはやっぱり、ロードナイトの本心だったのかもしれない。

ふたりがお互い持ち上げているんだか、牽制しあってるんだかわからないやりとりを続けているのを見て、ウェラディアは頬杖をついて、見入ってしまう。


男同士の好敵手っていいなあ……。

瓦版も、このふたりで取り上げてくれればいいのに。

そんなこと考えていると、ふっと、昨日オルタに聞かされた話が頭をよぎった。

優勝候補って、多分――あれのことだと思うんだけど。


あえて、貴族(仮)と言いたい。ヒストクラーフの三男ではなく。

婚約者候補とか、絶対、ない。

そういう意味でも、ふたりには頑張ってもらわなくては!

ウェラディアは気合いを入れるように、味噌風味の豚汁を椀ごと口をつけて飲み込んだ。


「そういえばおまえら、中庭のあんな片隅でいったい何の話してたんだ? そんなに人に聞かれたらまずい話してたのか?」

急に話題を変えられて、ウェラディアは、どきりとして、食事をする手を止めた。


「いや? まぁ……デュライ……が、試合が終わって、ちょっとな。あとは――そういえば、王女の話なんかしてたかな」


「王女の話? みそっかす姫さまでも、現れたのか?」

ぐ。やーめーてー。

カルセドニーの口からだって、みそっかす姫なんて聞きたくない。

耳を塞ぎたいけれど、できないジレンマに、唇を噛みしめてしまう。

椀の底に垣間見える白い粒々。

これがいわゆる、みそっかすというものだろうか。


「そうそう――っと、デュライは殿下に憧れてるらしいから、みそっかす姫なんて渾名は口にしない方がいいぞ」

「え、や……別にその、憧れっていうか、そういうんじゃなくて……」

本人なんですけど。とはもちろん言えない。


「え、そうなのか? 憧れを抱きたくなるくらい、王女って美人になったのか? 殿下といえば、滅多に王城にいらっしゃらないけど、おまえどこかで拝見したことがあるのか?」

立て続けに質問を繰り出され、ウェラディアはたじろいだ。


そこを突っ込まれてしまうと、まずい。というか、チャンスか。

これはむしろチャンスなんじゃないか?

言え、言ってしまえ、私!

そうしたら……楽になれる――。

ゴクリと、生唾を嚥下する。


「お、俺は――」

「カルセドニー、おまえ自分が会ったことがないからって、デュライにがっつくなよ。だいたい亡き王妃殿下は、どちらかというと愛らしい方だったんだから、王女殿下も、美人と言うよりは、可愛らしい方なんじゃないか?」


可愛らしい――。

ロードナイトの口から、そんな風に言われるとは思わなくて、意識するように、両手で頬を押さえてしまう。

言葉を遮られたことなんて、一気に吹き飛んでしまった。

落ち込んだ気持ちが、ふわりと浮かび上がって、口元が緩んでしまう。


「あ、なるほど……可愛らしい方ね……なるほど」

繰り返す言葉にも、陶然とした響きが籠もってしまったかもしれない。


「可愛らしい方か……どちらかというと、儚い印象だったんだが……それはそれでぜひ、お近づきになりたいなぁ……決勝戦には、殿下も公式に出席されるのかなあ? 試合自体はすでにご覧になっているって話だけど」


「え、殿下が王都にいらしてるのか? そんな話、初耳だぞ」


「らしいぞ。俺も姿まで見たわけじゃないが、確かな筋からの情報だ」

突然始まった自分の話題に、ウェラディアはぎくりと身を強張らせたまま、口を挟むことができない。しかも、一瞬カルセドニーに目線を向けられたのは気のせいだろうか。

と言うか、あれ? カルセドニーにまで儚い方とか言われたような……。


どうしよう――言う? この状況で言える?

「俺――」


カラーンカラーン……。

鐘の音。

カラカラに乾いた口を開き、掠れた声を出したところで刻を告げる鐘の音が響いた。


大きく鳴り響く金属音に、食堂にいる誰もがおしゃべりを止め、騒然としていた天井高い空間が、一瞬、水を打ったように静かになった。

その音色が最後の余韻を残して掻き消えた途端、時間が流れだし、人々はみな慌てたように立ち上がったり、食事の残りを掻き込んだりしている。


「おっと、開一刻の鐘か。俺は街に下りないといけないんだった」

ウェラディアたちのテーブルで、いち早く立ちあがったのはカルセドニーだった。


「いくら、街の闘技場でやるのは集客が違うと言っても、一日の間に王城と街を行き来させられるのは勘弁して欲しいよなぁ」

いかにも疲れたような顔をして、肩を回してみせるけれど、王都住まいのカルセドニーのことだ。本当は王城と街の行き来なんて、慣れてるに違いない。


くすくすと笑っていたら、髪をくしゃりと掻き混ぜられた。

ん? どういうことだろう?


「代わりに勝ってやるから、楽しみにしていろ」

じゃあな。と言い捨てて歩き出した背中は、どこか照れているようにも見える。

訳がわからずに茫然としていると、再びぽんと頭を抑えられ、ぐしゃぐしゃと髪を乱される。


「そういうことだ。今日はもうゆっくり休んで、無理はするな」


『代わりに勝ってやるから』

まるで、おまえの想いは、俺達が引き取ってやる――そう言われたようで、胸が震えた。


「あ……ありが、と……」

絞り出すように吐き出した言葉に、振り返らないままの背中が、手を上げて応える。


真っ白い光が射す出口へと歩いて行く姿が、何故か滲んで見えた。

 

あ、そいえば。アルファポリス様のファンタジー大賞に

エントリーさせて頂いてたんですが

携帯のランキングバナーは別に貼らなくては

いけないってわかってなくて

やっと貼りました…もう20日過ぎてるけど!

wwww

どういうわけか携帯の方

最終ページにうまく表示されなくて

全ページについてます…

うざくてすみません


日曜日は21時更新予定

【次回予告】

第八章-暗闇の中、記憶の澱

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