第64話「本音の別れ」
「ようこそ、龍門機関へ。生き残るべき存在よ、歓迎するぞ」
「ふざけるな……。アンノウンはどこへ行った? お前はそこへ行けるんだろ? 俺をそこに連れてけ!!」
「喚くな! ……彼女もまた生き残るべき存在だった。だが私もあいつを救ってやる事だけは出来ないんだ」
「お前……。いい加減にしろよ。生き残るべき存在、生き残るべき存在ばっかり言いやがって。そんな者、誰が一体何の為に、何の基準で選んでいるんだよ!」
紅葉は、今にも殴りかかりそうな勢いでレーテーに迫る。
レーテーはチャックをしめたコートに拒まれながらも、なんとか体育座りをして答えた。
「生き残るべき存在とは、私の友だ。私の基準で、私が救いたいから選んだ。まぁ、もっともお前達にその記憶は無く、恐らくは今この時の記憶でさえ失ってしまうだろう。だから俺の思いをせめて最後に、お前に伝えた」
「そんな戯言信じれるか……!」
「そうだな。嘘だと思ってもらっても構わん。これからは友としてでなく、機関のメンバーとしてお前たちと過ごさなければならないのだからな」
レーテーは河川敷の石を積みながら言った。
紅葉と、アンダンテはただそこで茫然と立つ事しか出来なかった。
「そろそろ、一時の別れだ。高杉紅葉よ。そして先生」
レーテーは立ち上がり、アンダンテと紅葉の手を握る。
そしてすぐに、紅葉とアンダンテの意識が落ちた。だらしなくその場に倒れこむ2人。
レーテーはその二人を抱え、闇へと姿を消した。