第6話 「名の無き学園」
「あなたは誰ですか?」
豪華で小さな部屋にその声が響き渡る。
そしてあまり間を置かず返事が返ってくる。
「私かい? 私はこの学園に入学する事になったレベル9……
悪いね、いきなりこの学園のナンバー5になってしまって元ナンバー5には謝っていてくれ。」
「そうですか。あなたが明日から入学する事になった2人のうちの1人ですか。
申し遅れました。私はこの学園の校長を務める者です。あなたは分かっていると思いですが特別クラスです。
今後よろしくお願いします。天真爛漫之天邪鬼神よ」
天真爛漫之天邪鬼神と呼ばれた人物は部屋を出て行き、残されたもう1人は
自分以外誰もいない部屋で呟く。
「まったく……この世界は人ではない者まで住まうのですね……要は妖怪と言ったとこですか。面白い世界です。」
今、紅葉は防壁を守る門番から足止めを食らっていた。
面積20万kmもする大きな街を守るのだ。当然、外部者の侵入など許すはずもない。
それも血だらけの男を背負って、少女をお姫様だっこしてると言うのならばなおさらだ。
「だから、さっきから言ってるでしょ。
この男の人を早く治療しないと取り返しのつかない事になるって。」
「そんな事は理由になりません。」
紅葉は呆れ顔でやれやれとため息をついた。
そんな中、門が急に開きだした。恐らく、街から誰かが出てくるのだろう。
相当古い門なのか、ゆっくりと開く門と壁の間に摩擦音が聞こえる。
そうしてやっと出てきた人は女で頭に角が生えている……
右と左にバランスよく2本生えている。しかも、所所破れた服はどこか鬼を連想させる。
しかしその破れた服の上にボロボロの布をかぶっているせいか、風来坊も連想させる。
その事に誰も驚かないせいで、紅葉はコスプレだと考えた。
門番もニコニコしながらその人を眺めている。
「おっ! あんた、学園の新たな生徒さんだね。まぁこっちだよ。ついてきな。」
その鬼風来坊は紅葉にそんな事を言ってきたが、
紅葉はそんな事に何一つ記憶に無かった。
しかし、鬼風来坊はぐいぐいと紅葉の腕を引っ張り、再び街に戻ろうとする。
紅葉はこれは街に入るチャンスだと思い、黙ってついて行く事にした。
門番はポカーンとして紅葉たちを見送る。
「しかし助かったぜ。ありがとう。だけど、学園には聞き覚えがないんだ。」
鬼風来坊は『時期に分かる』と言い残し去って行った。
そのついでに怪我人を病院に連れて行ってもらった。
そのまま紅葉はヘルの家へ帰って行く。そしてヘルに唐突にこう言われる。
「紅葉、明日から学園に行っても貰うわよ」
紅葉がうわ~っと小声で叫んでいたらヘルは説明を続ける
「あんたがどうゆうとこに住んでたかは知らないけど、
行く当てがなくて当分私んとこでお世話になるんでしょ?
だから学園にいってもらうの。と言うのもこの街では学園にいって心剣の勉強をすると
生活保護金が貰えるのよ。そしてもう一つ、プロテクションパーソナリティになって貰うわよ。」
「プロテクターパーソナルコンピューター?」
「プロテクションパーソナリティ! この街の防衛者になれって事。
そうすると生活保護金が倍になるのよ。」
「いや、無理です。すいません。俺には自宅警備員が限界です。すいません。
しかも心剣なんて知りません。すいません。」
「もう遅い! 予約しちゃった。」
紅葉の必死の抵抗も虚しく、結局紅葉はプロテクションパーソナリティにされてしまった。
しかし、鬼風来坊の言ってた事が急に気になりだした。なぜ、あいつはこの事を知っていたのか。
そして日は沈み、やがて夜が明ける。
まだ明るくなり始めたばかりだと言うのに、紅葉はヘルとフラウのボディプレスにより目を覚ました。
半分イライラして半分ドキドキしながらちゃぶ台に着く。
そのちゃぶ台の上には、焼き魚に味噌汁、漬物に白ご飯と、和風の朝食が並べられていた。
ヘルが作ったのだろうか? そんな疑問を考えながら黙々とご飯を口に運ぶ。
そしてそれを食べ終わるとヘルと家を出た。
フラウと静葉は学園の年齢制限で行けないらしく、家でお留守番をする事になった。
「朝から学校……もう帰りてぇ、実家に。」
「帰りなさいよ。何でここに居るのよ?」
「知らねぇよ。俺が聞きたいところだ。」
こんな会話を重ねつつ登校していく。
やがて、学園と思われるところに着いた。
しかしそれは紅葉が予想していた物とは大きく違った。
校門をくぐった所にいきなりでかでかと噴水が立っている。
そしてあちこちに花が咲き、とても輝かしい。
たったそんな事で紅葉はガチガチに緊張しだした。
天真爛漫之天邪鬼神、絶対零度之白銀少女、最強最凶之酷寒極寒
もう察している方も居るかも知れませんが、この世界の通り名は、
この様に、4文字の漢字+之+4文字の漢字と言う構成です。