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神の鬱  作者: 紅きtuki
絶望編
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第53話「闇への誘い」

「高杉紅葉よ。無駄な抵抗は止せ」


 誰も居ない屋上。肌寒さを感じさせる強い風。そして日光を完全に遮る空一面の雲。

 そんな中、佇むように散乱しているゴミを蹴り飛ばしながら、名を呼ばれた紅葉が落下防止の為のフェンスに勢い良くもたれ掛かった。

 金網のきしんだ音が一瞬にして広がり、またすぐに風の不規則な雑音が耳を打つ。


「私は何も、お前に危害を加えようとしているわけではない」


 そう言いながら紅葉の通った後を悠然と歩くレーテーは、風に小刻みに揺らされるコートの裾を鬱陶しく思ったのか、わざわざ歩きやすいようにと開けてあったチャックを限界まで閉め、そのまま小さな歩幅で足早と紅葉と近づいていく。


「風は煩わしいだろう。私は風が嫌いだ。だからこそ、早々と聞き入れてほしい」


 レーテーのその言葉に、紅葉は思わず不審そうな顔を浮かべたが、その疑いを口にするまでも無く、レーテーは話を続けた。


「知っているかな? 戦争が起きる事を」


「そんな事を俺に伝えて、お前の目的はなんなんだ!」


 フェンスにもたれ続けている紅葉の問いに対して、レーテーは紅葉を指差し静かに答える。


「何度も言わせるな。お前だ。私は手荒な真似はしたくない。お前が素直に言うことをきけないと言うのであれば、さっきの女に協力を煽ってもいいのだぞ? どこに逃がしたのか、この私が分からないとでも思っているのか?」


「待て! あいつは関係ないだろう!」


「どちらにせよ、巻き込まれるんだ。早かろうが遅かろうか、大した差ではない。そんな事より、お前の答えはどうなんだ?」


 レーテーは紅葉に向けている手に心剣を出現させ、それを首元に宛がう。

 しかし、紅葉は依然と強がった態度で返答する。


「目的も良く分からない奴について行けるわけないだろう!」


「そうか。協力してくれるのか。そう言ってくれると信じていたぞ」


 レーテーは半ば強引に紅葉の手を引っ張り、背後に現れた暗闇に入ろうとする。


「おい! だれも協力するなんて言ってないぞ!」


「目的が分かればついてくるのであろう?」


 講義する紅葉をよそに、レーテーは歩み続け、紅葉諸共そのまま闇に飲まれて行った。


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