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神の鬱  作者: 紅きtuki
絶望編
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第52話「自己中の三人」

「小娘よ。この俺様が、街を破壊しながらここへ来たことはどう思っている?」


 エグセントが一体のアンドロイドを心剣で一刀両断にしながら質問をする。


「それは……」


 それに対して、エグセントに背中を合わせながら冷や汗を流す秋葉は言葉を詰まらせた。


「ふん。答えたくなければ答えなくとも良いわ。……そんなことより、この状況をなんとかするぞ」


 二人の周囲では、複数のアンドロイドたちが戦闘態勢をとっており、完全に包囲されていた。

 そんな中、一体のアンドロイドが秋葉を目掛けて飛び掛る。

 思わず頭を抱え、しゃがみ込む秋葉。エグセントはすかさず、秋葉の上を回転しながら心剣を振り、飛び掛ってきたアンドロイドを撃退する。

 そうして、さっきとは逆の位置で背中合わせになり、エグセントは再び心剣を片手で構え直す。


「思ったよりやるではないか、こいつら。簡単に逃亡できないように陣形を組んでいるとはな」


 エグセントがぼやきをこぼしていると、また一体のアンドロイドが、今度はエグセント目掛けて飛び掛った。

 それに対して、エグセントはアンドロイドの中心部分を心剣で突き貫くと、そのまま動かなくなったアンドロイドを床に振り捨てる。


「ガラクタ風情が、この俺様に直接攻撃したところで、どうにもならんわ!」


 そして、アンドロイドの頭部分を踏み潰す。そこから一瞬の火花と共に、僅かな煙が舞い上がり、無機物が焼けた嫌な臭いが周囲に広がった。

 そんな中、秋葉が小さな声で話し始める。


「あの、エグセント様。私も戦ったほうが良いですか……?」


「戦えるのであればな。この俺様に力を貸せ。これは自己防衛だ」


 分かりました。とまたしても小さな声で呟いた秋葉は、その右手に心剣を出現させた。次にその場で心剣を大きく横に振るう。すると左肩辺りから一気に振るわれた心剣から、凄まじい衝撃波が生まれ、空間が歪み、そして自然と空間が割れた。比喩でもなんでもなく、背景と言う存在に彩られた空間が、まるでステンドグラスが割れるかのように、断片化し落ちていく。しかし次の瞬間には、秋葉の前方に居るアンドロイド達が皆、破壊されてぐったりと動かなくなった風景がそこにあった。


「さっきの酒呑童子って人の能力をアレンジした力です。あ、すみません鬼でした」


「ハッーハッハー! なるほど、天才って訳だ! だったら、この俺様も遠慮はいらんな! ハーッハッハッー!」


 エグセントは、さっきまでの暗い雰囲気からがらりと変わり、大笑いをする。そして、秋葉と同じく心剣を大きく振るった。縦の方向に。すると振るわれた心剣の直線上の物体、即ち床、壁に直線状の亀裂が入り、まるでモーゼの奇跡の如く崩れ裂けていく。そしてその裂け目に、アンドロイド達はなす術も無く次々に落ちていった。

 

「エ、エグセント様! 駄目ですよ! これ以上破壊したら!」


「固い事を言うな。これが最後だ。そしてよく見ておけ! 最後に相応しい華麗な破壊をな! ッハーハッハッーハッー!」


「建物が崩れる……?」


「今のお前なら耐えられるだろう? 俺様と同じく、天才なのだからな!」


 建物自体の振動が強くなり、瓦礫が落ち始める。動揺する秋葉と意気揚々とするエグセント。そんな二人の上から、聞き覚えのある事がした。


「今度は、またお前達か。やれやれ、お前達と出会ってから不幸が続くよ」


 視線を上に向ける秋葉とエグセント。すると、さっき出来た裂け目から、ひょこっと一人の少年が現れた。


「今の俺は機嫌が悪い。殺してやろうか?」


 そう言った少年は、エグセントが追ってきたレイだった。そして遅れて上から二人の少女と、一人の中年の男が現れる。


「ぞろぞろと仲の良い事で」


 レイがそう良いながら、遅れて来た3人に視線を送る。

 そこには、レイと共に居た少女型ヒューマノイドハルアと、エグセントのよく知るサイエンス、そして大きな白いカッターシャツをぶかぶかに着た少女が居た。


「君は今、すごく不安定な状態だ。大人しく避難したまえ」


 サイエンスがレイに話しかける。


「ふざけるなよ? 元と言えば誰のせいだと思ってやがる」


 しかしレイはサイエンスに威圧的に返答すると、すぐに視線をエグセントに戻し、エグセント目掛けて大き目の瓦礫を能力で飛ばす。

 エグセントはその瓦礫を心剣で粉々にすると、その際に舞い上がった塵の向こうからレイの冷淡な声が聞こえた。


「そんな事より、お前が先だ」


 レイが、床に手をつく。すると、手に触れている箇所の床が粉塵へと変わり、ぽっかりと穴が開いた。そのままレイは灰でも撒くように散らすと、まるで蛇のようにうねりを上げ、エグセントへ襲い掛かる。また、その際も床が穴を拡張するように粉塵へと変わり、蛇の様な粉塵を長く大きくしていく。


「くだらん! こんなもの!」


 エグセントはその蛇の様な粉塵を切り裂こうと心剣を振るった。しかし粉塵は、綺麗に心剣だけをかわし、瞬く間にエグセントを襲う。

 しかし隣に居た秋葉がまたしても空間を歪み割り、次の瞬間には粉塵が吹き飛んだ風景があった。


「へぇー。やるじゃん。にしても、あれだけの砂鉄に纏わりつかれたと言うのに、傷一つ無いないとはねー」


「なんでなんですか?」


 相も変わらず、冷淡なレイに秋葉が唐突に問う。

 しかし、その質問の意図を掴めないレイは逆に質問をする。


「急に何言ってんだよ?」


「何でみんなすぐに暴力と破壊ばかりするんですか!? 話し合うって選択肢は無いのですか?」


 それに対して秋葉は少し声を震わせながら改めて質問した。

 しかし秋葉のその質問に少しイラついたのか、レイは心剣を片手に出現させ、斬りかかる。


「あるわけねぇだろ?」


 冷や汗を流し、剣を構える秋葉。必死に間に割り込もうとするエグセント。一足遅れて動き出すサイエンス達。しかし、実際にレイの剣を弾いて秋葉を守ったのは、さっきエグセントと一戦交えたばかりの酒呑童子だった。

 レイの心剣が一歩踏み出したサイエンスの前に突き刺さり、床と剣の甲高い音が響き渡る。一方、剣を弾かれたレイは酒呑童子の前に静かに着地し、酒呑童子を無視するかのように己の心剣へ歩き出した。そして辺りに改めて沈黙が生まれてから、酒呑童子は振り上げていた腕をゆっくりと下ろし、秋葉を見つめる。


「私の力に良く似たものを感じた。もしかして、あなた?」


「誰だっていいんだよ、んな事はよ。やれやれ、俺がどんどん安いキャラに成り下がっていくぜ」

 

 さっきまで酒呑童子の事を無視するかのような態度を取ったレイが、ゆっくりと心剣を引き抜きそのまま酒呑童子へと剣先を向けた。そして続けて話す。


「のこのこと簡単に俺の前に姿現しやがって。ついさっき次は殺すって言ったよなぁ?」


「私はあなたに用事は無いわ。悪いけど、この子攫って行くわね」


「おい! まてこら!」


 レイが汚い言葉で酒呑童子を止めようとする最中、酒呑童子は秋葉の手を掴みまたもや光に包まれていく。しかし近くに居たエグセントがとっさに秋葉の手首を掴み、エグセント諸共光に包まれ、この場から姿を消した。



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