第49話「心配の中で」
「紅葉君! 紅葉君!」
『……ん?』
「紅葉君! 紅葉君ってばっ!」
『アンノウンか?』
「あーうー。返事してよっ!」
『なんだ?』
「紅葉君っ!!」
紅葉が目を覚ましたのは、風に揺られる白いカーテンに包まれたベットの上だった。
ぼやける視線で辺りを見渡すと、ベットの横で丸椅子が倒れており、その上を跨ぐ状態で今まさにアンノウンがベットに寄りかかっていた。
今、立ち上がったのだろう。丸椅子は静かに揺れ転がり、アンノウンが寄りかかった為か、ベットが僅かに震えていた。
そのまま視線を元に戻すと、そこには髪を切って顔が良く見えるようになったアンノウンがこちらを真っ赤な目で見つめていた。
「ごめん。私のせいで怪我させちゃった……」
「いや、待て。今、俺は状況が掴めないのだが……なんで俺は眠っていたんだ?」
「それはこっちの台詞よ!」
視線をアンノウンのさらに奥に向けると、保健室の扉に寄りかかるヘルと目が合った。
それを機にヘルが口を開きだす。
「たかが氷片で大袈裟に倒れちゃってさ!」
「待ってよ! そんな言い方ひどいよ!」
そしてその台詞に、アンノウンが激しく抗議する。
「大体、なんで氷の破片が腕に刺さっただけで気を失う訳?!」
その言葉に、紅葉は何かを思い出したかのように自分の左を腕に視線を向ける。ぐるぐる巻きにされた白い包帯に赤いシミが出来ていた。
そしてそんな紅葉をよそに、口数を減らす事無くヘルは攻めの言葉を発する。
「そもそもあんたは超能力は無効に出来るんじゃなかったっけ!?」
「待ってってば! あーうー! 紅葉君は何も悪くないよ!」
そんな言い争いの2人に、当事者である紅葉は再びベットに横たわると静かに言い放つ。
「心配すんな。こんなもの、寝てたら直るさ。アンノウンもヘルも責任を感じることねぇよ。分かってるよ。ヘルも心配でこんなところに居てくれてるんだろう? さっきの言動はその裏返しだよな。だからアンノウンも分かってやってくれ」
「せ、責任なんて感じてなんかない!」
紅葉の言葉に、ヘルが扉から大きな音を鳴らして部屋から出て行く。
その態度にさすがにアンノウンも苛立ちを隠せ切れず、表情から怒りが伝わってくるが、紅葉はアンノウンの手を押さえ、言った。
「一番、責任を感じているのはあいつなんだ。だって自分の攻撃で傷つけてしまったんだから」
アンノウンは丸椅子を起こして再び座った。