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第47話「鬱の始まり」
優々とそびえ立ち、荒れ狂う大地。
轟々と音をたてる風。
深々とそれ以外語らない景色。
「どう言う事だ……? 能力を急に失うことなんて、ありえるのですか?」
そんな場所で、二人の男が会話を進める。
「……ありえない事も無いが……それは理論上の事であり、前例は見たことはない。だが、奴からはそんな素直なものは感じないのだ。まるで、認められたかのような威圧感を同時に放っている」
――あぁ、これは利用できるかもしれないな――
「行くぞ、レーテー」
一人の男が、禍々しい闇と共に禍々しい心剣をその手に出現させると、颯爽と歩き出す。
「リレベイトを解除しても良かろう。いや、奴は解除するべき相手だろう」
風が男の衣服を激しく揺らした。