第45話「力の消滅」
「なぁ……こんな授業あったっけ?」
日光が勢い良く照り注ぐ運動場。最近暑いな~、と素直な感想を漏らす
高杉 紅葉は以前経験した授業とはかけ離れた内容の授業を見て呆然としていた。
以前は普通に話を聞き、黒板に移された内容をノートに書き留めるだけだった。しかし今は違う。
周りの話を聞く限り体育の授業らしく、例の熱血先生がいる所もあって体育には間違いなさそうなのだが、
目の前の光景は紅葉の知っている体育とは微塵も一致してなかった。
「これ……死ぬぞ……」
「何寝ぼけてんのよ。あんたが入学した時はペーパーテスト期間だったから平和な事しかしてないけど、今は違うわよ」
紅葉があまりにも過酷すぎる授業内容に呆然としているその横で色の白い女の子が返事をした。
彼女はヘルと言う名で今は学園のナンバー6だ。
彼女はとある事情で体が若返ってしまい、不自由な生活を送っている。
そんな彼女は捨て台詞の様に返事し終えると、石灰で描かれた円に入って行く。
円の大きさは15mほどでまぁまぁ大きく、その円の外で他の生徒がなぜか見守る様な目で見ている。
良く見ればその円に、元前髪が長かった女の子がスタスタと中に入ってきている。
そう、アンノウンだ。足の怪我は完治して今も元気に円の中へ入ってきている。
以外にも同じクラスで今までその存在感の薄さで紅葉に気付いて貰えなかった。
「力が弱まったとは言え、ノウンちゃん……手加減しないわよ。」
「あ~う~。手加減してよぉ。」
学園のナンバー7であるアンノウンは前髪を切ってから今までに無かった存在感を溢れさせ、
その可愛らしい容姿で注目の的になっている。(主に男子に)
ノウンちゃんと言うあだ名も貰って学園生活を満喫していた。
そして、2人が今からしようとしている事、それは超能力の使用を許可された戦いの模擬戦。
ある時は電気が飛び交い、またある時は水がばら撒かれ、またまたある時は灼熱の炎に包まれたりする。
そんな危険な事を平然としようとしていた。
そして、学園のナンバー6、7との戦いだ。規模が今までは異なってくる。
他の生徒が息を殺し、巻き添えを食らわない様に身構えた時、笛の音が鳴り響く。
と同時にヘルは剣を出し、アンノウンは本を出す。
お互い使い慣れた個々の武器を構えると、ヘルは手を前に出す。
すると何の予備動作も無くいくつのも氷塊が手から飛び交う。
これをアンノウンは待ってましたと言わんばかりにレンガで出来た壁を地面から出現させ、
全ての氷塊を粉々にしながら周りに跳ね飛ばしてしまう。
しかしその内の1つが不幸な事に紅葉の方へと飛んで行ってしまった。
「い!?」
「あ、紅葉君!!」
アンノウンが思わず、紅葉の方を向き無防備になってしまう。
それをヘルが見逃す事は無く、あっという間にアンノウンに近づき、必要最低限力で
背中を押すと、バランスを崩してしまったアンノウンは円の外へと飛び出してしまった。
場外へと落とされたが本人はそれを気にする事も無く紅葉の元へと走って行く。
「大丈夫!? 紅葉君! あ~う~。ごめんね、怪我無かった!?」
「おう……俺にはなぜか無力化できる力が備わってるから平気だ。」
高杉 紅葉には超能力と呼ばれる力を無効化する力が備わっていた。
超能力と言っても、物を浮かすなんて可愛らしいものではなかった。
無条件に炎や氷、雷や水を出現させたりするのなんて当たり前、
ひどいものなら体力が尽きなかったり、密度を操作できるなんてものまで存在する。
そして、高杉 紅葉はそれを一切受け付けない。なぜこんな力を持ってしまったかは不明。
しかし元々この世界の住人ではないからと言われてしまえばそんな気もするが……
そんな理解不能な力に高杉 紅葉は少しずつこの力に自信を持つようになってきた。
しかし……
「痛って……」
不意に痛みを覚えた紅葉は痛みの元を見る。
すると、左腕にガラスの様に鋭くなった氷の破片が刺さっていて、血が溢れ出ていた。
「なんでだ……俺は超能力と言う名の異能の力を無効化できるんじゃなかったのかよ?」
誰も答える事は出来ないと分かっていながら問うように口ずさむ。
案の定、その問いかけに誰も答える事が出来なかった……
さぁ、良い所で終わりましたね~。
この先が楽しみですが、もう書置きが残って無いんですよね~^^;