第44話「部外からの研究者」
「ほぉ。力でこの俺様と競い合うつもりか。」
この街の住人でない、他の街から来た部外者は大きく胸を張り余裕の表情でそう言う。
腰に手を当てている所が余計に偉そうに見える。しかし、すぐにその表情は消えてしまった。
と言うのも大きく胸を張り、腰に手を当て、余裕の表情でそういった次の瞬間、地面が歪み、波打ったのだ。
それのおかげでバランスを崩した後、地面は追い打ちをかけるかのようにそのまま波打ちながら、どんどん波を強くし部外者と共にほぼ巻き添え状態の秋葉、諸共、飲み込んでしまったのだ。
やがてそれは牢屋の様に網目状になり固まった。
それを確認したハルアはさっきまでの部外者以上の余裕と偉そうな態度で、
「力? 違う違う。要はここの問題よ。」
そう言って小さなで手で自分のおでこを2回、軽くつついた。
「貴様~。小賢しい真似を!」
「さっき、私の蹴った大型乗用車は地面を破壊したよね。あなた達を覆うその地面はさっきのその衝撃に反応して、部外者であるあなた達を捕捉したのよ。あ~。暴れても無駄よ、この牢屋は大規模な爆発でも崩れないわよ。それに君はこれから本物の牢屋に行くのよ。」
「なに!? 貴様からケンカを売ってきたのだろうが!!」
「その言葉を何人の人が信じてくれるだろうね? ぶ・が・い・しゃ・さん?」
そう言って無理やり会話を終わらせると、今度はレイの方へ向かい
「はい、この話は終わり。あの子には可哀想だけど仕方が無いよね。あとは街の防衛者に任せるから、私たちは学校へ行こう?」
そう言ってレイの手を掴みこの場を去って行った。
場所は変わり、ここはとある研究室。
今は別の街から来た研究者を交えての研究成果報告交流議会の様だ。
話し合っている内容は超能力の具現化。
これが何の役に立つかは分かっていない、分かっている事は、そこが未知なる領域だと言う事。
良い結果が残せなくとも、そこが未開の地ならば捜索するのが彼ら研究者としての宿命だ。
宿命と言っても誰かに命令されて仕方なしにしている訳ではない。
彼らは自分の意思で研究をしているのだ。そのせいで権力や命を落とす者もいる。
しかし、彼らはそれを悔やんではいない。
例え、研究者として戻れなくても彼らは研究者だった、と言う事を誇りに生きていくからだ。
そしてここに研究成果報告交流議会に招かれたサイエンスと言う男が居る。
黒のフレームの眼鏡に綺麗に整われた黒の短髪、
そして黒色の白衣と言うどこか矛盾した服を身に纏う、全身黒の研究者だ。
この男はこの街の住人ではない。しかし、同じ研究者として認められこの男はここに居た。
「私の研究で行くとこの薬を飲むと――――」
研究者の1人が自信を持って発言するがサイエンスは話を中断するように割って入った。
「いや、それは無いね。ありとあらゆる薬を熟知した私が言うんだ、間違いない。
この研究報告書を見る限り、この薬を服用した者は力が暴走してしまい、やがて死に至るだろう。」
サイエンスにはありとあらゆる薬を作り出す能力が備わっていた。
これだけでもこの世界では上位の能力者だ。
しかし、これは一度自分の知った薬しか作り出せないと言う欠点もあった。
だからこそサイエンスは薬の勉強をした。薬の知識でサイエンスを超える者はいないだろう。
その知識っぷりのおかげで中にはサイエンスは不老不死と言う噂まであるくらいだ。
この力は研究者の中では有名で羨望と嫉妬の的だった。
「次は私の番かな? では、単刀直入で言う。私は能力の具現化に成功した。
お手元にある研究報告書に目を通したまえ。今までは体に直接関係する事に捕らわれ過ぎたのだ。
薬を服用するなど体を改造したりなど、な。
それに万が一、成功しても能力者に後遺症を残してしまう恐れがある。これではだめだ。
そこで、だ。私はまずその事から離れる事にした。
その結果、能力者は体の周りに力を漏らしている事に気がついた。
良く考えて見れば、おかしいと思わないか?
力を無力化する力はなぜ、身に纏っている服も傷一つ守る事が出来るのだろうか?
瞬間移動する力はなぜ、服ごと移動できるのか? と。
そこに私は目を付けたのだ。
そしてその周りに漏らしている力だけに干渉する特殊な装置を作り出した。
周りに漏らしている力か……そうだな……この力をイグズィストとでも呼ぼうか。
そしてこの装置、これをイグズィスタンスと呼ぼう。」
サイエンスはそう言ってさっきからサイエンスの横にあった
一般男性の身長よりも2回りくらい大きい位の物体に掛っている
布を勢い良く引っ張り、足下に捨てた。
読み返してみると、今の私より書くのが上手ですね……
なぜだ^^;