第38話「サイエンスのお菓子」
今、高杉 紅葉は真夜中の暗い道を1人で歩いている。
任務が終わった後、ナンバー2や4を探したのだが結局見つからず、
ナンバー1とも離れ、挙げ句の果てまで追いかけて来ていた先生とも離れた。
そんなかんだで、紅葉は春の香りが少し残る夏にも関わらず肌寒い暗闇を帰っていた。
「そっか、俺の着ていた上着はナンバー2の野郎が勝手に……ってどこにやったんだ、あれ……」
そうして2時間掛け、紅葉は無事ヘルの自宅へと到着した。
玄関の鍵は開いている。恐らくヘルがわざわざ紅葉の為に開けていてくれたのだろう。
そんな些細な優しさに少し感動するくらい心体ボロボロなのだ。
紅葉が靴を脱ぎ視線を前に戻したその先には台所があるのだが、
そこで机の上で眠っているヘルが居た。机にうつぶせにもたれかける様に眠っている。
その前には誰の為なのか、オムライスと思われる食べ物が二つ用意されていた。
秋葉(紅葉の妹)とフラウ(ヘルの妹)はもう食べ終わったのか食器が台所の洗浄台で水につけられている。
「そいつは……俺の分か……」
自分の事を待って、食事も取らなかったヘルの優しさを踏みにじった事を後悔しながら紅葉は壁を見る。
そこには、服が掛けられおり、紅葉が来ていた服も掛けられていた。恐らく、ナンバー2(の手下)が家の届けたのだろう。
そして、ヘルの方を見直す。するとそこには信じられない光景があった。
さっきまで気付かなかったのだが、ヘルの顔がどことなく幼く見える。
紅葉は疲れてるんだな、と無理矢理、心で整理してそのまま台所で眠ってしまった。
紅葉はある悲鳴で目を覚ました。眠たい目をこすり、視線を悲鳴の元へと向けると、
そこには幼くなったヘルが鏡の前で悲鳴を上げていた。
そして、悲鳴を上げ終わった後、紅葉と顔を合わせるとさっきまでの事態は忘れたのか、
急に怒りに燃える顔で、
「あ! 昨日は夜遅くまでどこに言ってたの!!」
と、お怒りモード突入と同時に紅葉は土下座モードに入ろうとした時、2階から妹と思われる人物が降りてきた。
ヘルはその人物を見て紅葉を殺すような勢いで怒っていたがその動きが止まる。
「あ、お兄ちゃんとヘルさん、おはようございます。朝から仲が良いですね。」
と微笑み洗面所へと向かう。ヘルと紅葉は目を丸くして妹と思われる人物を見送り、
その人物が洗面所の鏡を見た時、ヘルと同様に叫んでしまっていた。
時は過ぎ、登校まで30分を切った頃、やっと心の整理がついたのか、
落ち着いて会議を進める3人。3人と言うのは紅葉と秋葉とヘルだ。
どうやら、ヘルは体が幼くなってしまい、秋葉に至っては体が大きくなり、思考までもが大人っぽくなっていた。
ヘルは9歳前後、秋葉は15歳くらいになってしまっただろう。
結局、原因が分からないのでサイエンスと言う検査(保健)を担当している先生に相談する事にした。
紅葉とヘルは早速、学園へ向かい、秋葉はもう少し心を整理してから学園へ向かう事にした。
ヘルは学園に着くなり、紅葉の手を引っ張り走り出した。
「おいおい! 前みたいに氷の上を走れないのかよ?」
「そうだ! その手があった!」
と、立ち止まりしばらく沈黙が続いた。
10秒くらいか、いや、20秒はたっただろう。
前を向いていたヘルはゆっくりと後ろを振り返り半分泣きそうな顔で
「能力が使えないよ~」
と情けない声で紅葉を困らせた。
外見だけかと思っていたが、能力にも性格にも影響があったようだ。
結局、能力が使えないナンバー6はそのショックで走る気力を失ったのか、とぼとぼ検査室へと向かい始めた。
そうして、検査室のドアをガラガラとゆっくり開けるとそこには、いつもの様にサイエンスが回転式椅子に座っていた。
「どうかしたのかね? あぁ、紅葉君か。犯人は見つかったかね? ん? その子供は……?」
「あ、いや~。犯人は置いといて、とりあえずこの子供なんだけど……こいつヘルなんだよ……
なぜかは分からないが、子供になっちゃって……」
半泣き状態のヘルの代わりに紅葉が説明すると、サイエンスは横に置いてあったお菓子入れのバスケットを見ると、
「ま、まさか……ここに入っていたカリカリ梅を食べたんじゃ……本物のお菓子入れはそっちに……」
そう言って紅葉のとなりの机を指さした。そこには同じ入れ物にお菓子がたくさん入っていた……
ロリ化してますね~
過去の作品なので、客観的に捉え易いです。