第37話「結果の後の逃走劇」
ナンバー1は思う。この男はなぜこんなに必死なのだろうと。
何がそこまで必死にさせているのだろう。ナンバー1を倒した所で何も得れるものは無い。
ちゃんと手続きを済ましていればナンバー1と言う称号は得られる。しかし、こいつはそんな事はしていない。
もしその手続きを済ませているのならその知らせがナンバー1の所に届くからだ。
もちろん完全記憶能力の持ち主であるナンバー1がその事を忘れるはずがない。
何がこの男を必死にさせているのだろう。
「貴様はなぜ、そんなにも必死なのだ? 俺様と本気で対等して何か得られるものでもあるのか?!」
そう言って紅葉の頬を殴る。
「なぜ、そんなにも必死なのかだって? 当たり前の事、聞くんじゃあねぇよ!
お前が俺の友達を傷つけたからだ!!」
それだけ? ナンバー1にはその言葉しか浮かばなかった。
もちろん次来る紅葉の攻撃を防ごうと言う考えなど浮かびはしなかった。
その結果、ナンバー1は紅葉のケンカの素人のパンチをまともに食らってしまう。
今まで、衝撃を抑えるために少しばかり後ろに下がっていたのだが、今回はそれもしないで地面に仰向けで倒れてしまう。
「大事な仲間の為に必死になる事はおかしい事か? 例え自分が何かを失ってもそれを守ろうとする事はおかしい事か?
例えそれが命でも、だ。お前には居ないのか? 何かを失ってでも守りたい何かが……」
地面に大の字で仰向けのままナンバー1は返事をする。
「ふ……ナンバー98風情が吠えるな。俺様にも守るべき物ぐらいある……」
そこに少し間をおいて、
「それは誇りだ。しかし、守れなかった。たった今壊された所だ。」
「だったらそれは、誇りを失って何かを守れたんじゃないのか? それとも何かを得る事が出来たんじゃないのか?」
その時、上から何かが降りてきた。ドンと言う鈍い音と共に何か暑苦しい声が聞こえる。
「ブラボー!! いやぁ、泣かせてくれるねえ!!」
そう言って鼻水と涙だらけの顔でハグをしようとしてくる。
モミジは一番元気なので、いち早くその事に対処し、この場から姿を消した。
紅葉も一度ナンバー1と顔を合わせ全力疾走でナパームとは別の方向に逃げる。
その横でさっきまで仰向けで倒れていたナンバー1が並んで逃げている。
「お前、倒れたんじゃないのかよ!? て言うか、おとなしく倒れていろよ!!」
「ふ、ふざけるな! なぜ俺様があれの餌食にならなければならないのだ!?」
お互い、残り少ない力を使いタックルをしながら長い廊下を逃げていく。
ここは、大東市第7区域「区域ナンバー574」
主に、科学の研究を進めている区域だ。そこには、いくつもの研究所があった。
この街全体、科学は進んでいるがこの区域とその周辺はさらにすごかった。
そんなたくさんの研究所の一つに人型機械、Human Instru Mentalism、
通称HIMと呼ばれる物を研究している所があった。
この、HIMは最初は体が不自由の人の為に作られた医療用ロボットとして研究されていたのだが、
途中、方向が変わり現在では医療だけでは留まらずに警備や戦闘機の様にも扱われつつあった。
そんな研究所にまた、ひとつ新たなHIMが生まれる。
それは、赤い液体に浸されているカプセルから追い出されるように出ると、
「インストールデータ19が問題無くインプットされました。」
と報告するとカプセル以外何もない無人の白い部屋から別の部屋へと移動する。
無人と言うのは生み出されたHIMが正常に動かず暴れた時の為に監視カメラで見張っているためだ。
主に研究員がそのカメラを通してHIMの安全を確認してからやっと対面する事が許される。
異常も無く正常に動き出したHIMを見て研究員たちに安堵の話声が生まれる。
「今回は成功のようですね。」
「一時は新たな機能の搭載によりどうなるかと思ったがちゃんと動いてくれてよかったよ。」
「さて、このHIM19,3はどのような仕事に付けましょう?」
などなど。
2時間話し合った結果、このHIMは人間の護衛役になった。
そして、インターネットにその事を掲示すると、掲示してからたった2分でいきなり落札された。
落札されたと言うのはこのHIMの販売は、オークション形式なのだが開始してから2分で即決価格が
出てしまったのだ。そして肝心の値段は2億9800万だった。
こうして、このHIMはとある人物の元へと届けられたのだった。
いきなりの発展ですね^^;