第34話「無念の決着」
「どうするっす?」
「知るか!」
「そんな事を言って結局は逃げるんすよね。」
「あぁ? ケンカ売ってんのか?!」
そう言ってまたしても互いに撃ち合う。そしている内に何やら異変に気付く。
銃を撃っても撃っても音が聞こえない。それどころか撃ち合っている相手の声も聞こえない。
そんな中、暗闇の中からとてもニコニコした1人の女性が現れる。
「あらあら、こんな所で仲間割れして、先生からの教訓ですよ。仲良くしましましょう、はい。」
「アンダンテ先生……」
「あなた達にはもうお互い声は聞こえないはずです。おとなしくこの戦場から離脱してくれませんか?」
そう言って手をスナップきかせて前に伸ばす。すると、カイのすぐ横の窓が音を立てずに割れて行く。
「先生を怒らせない方が、身の為ですよ?」
今度は胸の前で両手首を合わせて手を開き何やらエネルギー弾でも出てきそうな構えを取り
「最後の警告です。おとなしくこの戦場から離脱してくれませんか?」
しかし、返事はなかった。アンダンテは軽くため息をつき『ハッ』と気合を込めると
カイとナンバー4はいきなり後ろへ5mも飛ばされ、2人が慌てて起き上がった時、アンダンテは空中に浮いていた。
アンダンテの周りの空気が蜃気楼のようにねじ曲がっていて、それはまるでオーラのようにも見える。
「おもしれぇ。おい!」
「わかってるっす!」
そう言って、同時に駆け出す。しかし2人にはお互いの声は届いていないはず、さすがは兄弟と言った所か。
アンダンテもその行動を予想していなかったのか、驚きが隠せないといった顔をしている。
しかしこちらもさすがは先生、素早く対応し再び例の構えを取る。
それを見たカイは己に能力である、風を操る力で走るナンバー4と共に衝撃から身を守り、
ナンバー4は己の能力である、どんなものでも貫く力を銃弾に込めて引き金を引く。
そうして放たれた、銃弾は見事にアンダンテの横腹に命中する……が、
アンダンテは何ともなかったかのようにそこに浮き続けている。
「先生はですね、空気の振動を操り、わずかにですがあなた達から見た座標をずらす事が出来ます。
だからひやひやしましたよ。たった今銃弾が先生のお腹の横を通って行ったのですから。
さて、最終警告も済ました所ですので、お説教タイムと行きましょうか。
あなた達は暗殺の分野には優れていますが、このように面と向かってぶつかり合う事には慣れていないみたいですね。」
そう言って空中に浮かんだまま両手を開き、再び例の構えを取る。
ナンバー4が急いで次の弾をリロードしているが、無念にもカイの能力も間に合わず、再び2人とも吹き飛ばされる。
今度は5mと言う距離ではなくビルから飛び出さないぎりぎりの所まで吹き飛ばされる。
その被害は2人だけではなく周りの装飾品だらけの壁ごともぎ取って行く。
「くっそ……」
カイが瓦礫となった壁の中でそう呟いていると、アンダンテとの距離が50mも開いてるにも関わらず
カイの耳に超高音質でアンダンテの声が聞こえる。
「先生相手にそこまで良く頑張りました。花丸を上げます。
それとあなたは任務成功率を100%を誇っているのでショックを受けると思いますが、
よく考えてみてください。あなたの任務はここの機関のボスの暗殺です。
まだその条件が満たされていない今、任務は続行と言う事になりますね。」
「そうか……それを聞いて安心したぜ……悪いが少し眠らせて貰……う……」
紅葉はナンバー1に思い切り飛びかかっていた。
ナンバー1は避ける事も受ける事も無く、その場で立ち尽くしている。
そして、それは見事にナンバー1の頬に命中。
しかしほとんどダメージは無く、余裕の表情で
「ほぉ、おもしろい。この俺様に体力でのケンカを挑むとはな。」
そう言って、今度は紅葉の頬を殴り飛ばす。
あり得ない力で殴られた紅葉はカエデの時、同様、5m近い距離飛ばされる。
そして紅葉が殴り返す。この動作を続けているうちにどんどん紅葉は後ろへ押されていく。
「(やば、次殴られたらビルからたたき落とされる。)」
そんな事を考えていると、不意にパンチをくらってしまった。
そして紅葉はガラスを突き破り漆黒の夜の世界へ突き落された。
先生は強し。
戦闘相手がナンバーであろうと、この余裕。
さすがは教師ですね。