第33話「ぶつかり合う二つの勢力」
ナンバー2は紅葉の手を無理やり引っ張り、追いかけてくるナンバー1と逆の方向に走っている。
いつもの余裕のない顔から察するように、ナンバー1相手ではかなり分が悪いらしい。
「おい! 何で逃げるんだよ! あいつが黒幕なんだろ!?」
「あいつはどこの機関にも属していませんの! だからここに居るのはおかしいのですわ。
恐らく、一時的に雇われてここで待ち伏せをしていたと言う事になりますわ。」
「だからって逃げる事無いんじゃ……」
「えぇ、あなたはね。しかしわたくしはあなたほどの力じゃ身につけていませんの。
!? そうですわ! あなたは何のためにここに呼んだのか忘れていましたわ!」
そう言って急に立ち止まり、
「いってらっしゃいまし!!」
紅葉を無理やり後ろに尽き倒した。
かなり本気で追いかけていたナンバー1は急には止まれずにそれに躓き、顔面を廊下で強打していた。
その間にもナンバー2は全力で距離を取り、廊下が暗いとい事もあるがあっという間に見えなくなった。
そして、顔面を強打したナンバー1は大きな目で紅葉を睨んでいた。
「貴様。この俺様に躓かさせるとは、いい度胸だな!」
「今の不可抗力でしょ……いや、そんな事はどうでもいい、お前、どうして悪い奴なんかの味方するんだ?」
答える前に倒れている紅葉の上から本気のパンチが飛んできていた、
紅葉はそれを回る事により回避したが、殴られた廊下がそこを中心に崩れていき、
やがて紅葉もそれの巻き添えを食らい一つ下の階へと落とされる。
背中を強打した紅葉は肺の中の空気を一気に吐き出し、瓦礫の上をのたじり回っていた。
「俺様が何をしようが俺様の勝手だ! 今の俺様は機嫌が悪い! せいぜい死んでしまわぬようにな。」
そう言って、またしても倒れている紅葉にパンチを仕掛ける。
「まったく、これだけの兵を雇うのにどれくらい金がかかるのだろうな。」
「さぁっすね……」
カイは今、大量の兵に囲まれいる。倒しても倒してもきりがなく、次から次へと現れる。
そんな中、1人の男が前に現れた。
「正解は0。道を間違えた、愚かな生徒に先生からの教訓だ。
この兵は影の戦士、何体倒そうと無駄だよ。私を倒さない限りね」
「まさか、先生が現れるとはっすね……ナパーム先生、まさかあなたまでもが……」
「何か勘違いしてないか? 私もちょうどこの機関を調べている所だ。
今の君の台詞からすると私の方が得ている情報が多いみたいだ。
まったく単独でこんな事をして、またナンバー2の命令か。
さぁ、君たちは大人しく帰りたまえ!!!」
ナパームがそう叫ぶと同時、たくさんの兵が爆発を起こした。
そして10秒くらい経ち、爆発の煙が晴れた時、カイはその場に居なかった。
ナパームが視線を上に向けると、通気口の入り口の壊れた鉄格子がブラブラとぶら下がっていた。
その時、ナパームの後ろから人影が近づいてきた。ナパームはその人物に困った様な顔で、
「すみませんが、先生。あいつらの事、頼んでいいですか?」
「えぇ、任せてください。」
紅葉は今、ナンバー1の攻撃をろくに防ぐ事も出来ず、6階くらい下に突き落とされている。
これ以上するとビルが本気で崩壊するかもしれない、と思わせるほど上を見上げるとぽっかりと穴が開いていた。
「ッハーッハーッハー!! 何をしている。もっと俺様を楽しませろ!」
そう言ってまたしても倒れている紅葉は相手にパンチを仕掛ける。しかし紅葉は今度は避けずに受け止めようと試みる。
「(あの攻撃力が能力による物なら普通に受け止めれ……っ!?)」
今度は紅葉もろともさらに1つ下の階に叩きつけられた。
紅葉が下の階に叩きつけられてからすぐ、上からナンバー1が降りてきて、
「まさか、俺様の力が能力か何かと思っているのか? だとしたら大間違いだぞ!
高杉 紅葉! Aクラスのナンバー98。」
「なぜ、俺の名を……?」
「俺様は瞬間記憶能力と完全記憶能力を合わせ持つ、一瞬で物を覚え、一度見た物は忘れる事は無い。
ハイパーサイメスティック・シンドロームと言うらしいのだが、それがどうした?」
「チートじゃあ……ねぇか……まったく、何でお前にみたいな人間が力を持っちまうのかな!」
そう言って、紅葉は立ち上がり、ナンバー1に殴りかかる。
ナンバー1の力は天然です。
なぜでしょうか?