第31話「挑戦的な敵の罠」
「それが1人能力が無効化する人が居まして……簡単な話、
私の力で7階まで上がれないと言いますか……」
「いや、そんな遠まわしに言われても俺しか居ないじゃないか……
ってそれはどうゆう事ですか??」
「さ、作戦を変えますわよ! 確か2番目に警備が手薄の場所が1階にあったはず、
そ、そこから参りますわよ!」
結局、紅葉の質問には答えて貰えず、腕を引っ張られながらビルの反対側まで迂回する。
「っと、ここまで来たのはいいけどよ、このガラス、超強化ガラスなんだろ? どうすんだよ。」
そう、紅葉が言った通りこのビルは全体に超強化ガラスを張っている。
そんな時、紅葉の疑問に動作で答えるかのようにカイが小型の懐中ライトみたいな物を取り出し、
紅葉に見せるように電源を付けると同時に光で出来た剣が出来上がった。
それをガラスに向け、まるで水を切るように円を描いていく、
そして抜け落ちた綺麗な丸いガラスをナンバー2は地に落ちる前に吸盤でガラスの中心を捕らえ横に丁寧に置いた。
「さ、行くぞ。言っとくがガラスの縁に触るなよ? 火傷するぜ?」
「いやいや、それ以前にそのライトサーベルはなんだよ。」
これか? と言いながら再び電源を入れ紅葉の腹に刺して来た。
しかし何事も無かったかのように光は紅葉に遮られる。
「これはガラスにだけ反応するんだ。便利な代物だろ? 隣町からわざわざ手に入れたんだぜ?
この街は科学が進んでないからな、手に入れるのに苦労したぜ。しかし、利点もある。
今見たように、対策がされてないんだよ。これを隣町で使おうとしてもまったく効果ないからな。」
そんな事を言いながらずかずかと中へ入って行く。その様子はこんな状況はもう慣れたと言う事を語っていた。
皆、かなりの経験者なのだろう。紅葉だけが今の状況に着いていけず1人置いてけぼりになっている。
そしてここはさっきも言った通り、会議室でいろんな書類がまとめられている。
紅葉は、そんな大事な書類をこんな部屋に放置するか? なんて考えながら手当たり次第に書類に目を通す。
「何してるんスか?」
「いや、お前たちの言うように有力な情報が無いか調べてるんだろ。」
「お前……本当に馬鹿だな? ここにある物全部ダミーに決まってるだろ!
敵さんがこんな親切に情報を提供してくれると思ってるのか?
もし、本当にそうならナンバー2は初めからこの部屋を狙ってるだろ。
しかし……この事には俺もビビった。恐らく、侵入が気付かれている。
じゃなきゃ、こんな事はしない……」
「かなり挑戦的な機関っすね……まるで敵に侵入されている事は分かっていると告げるような罠……
本来ならば、その事は告げずに利用するのがセオリー……」
「それに、なにやら警備が思っていたより手薄のようですわ。それは私たちを確保しようとしてないと言う事……
それから察すると、何かほかにも罠があるはずですわ。そう、警備を怠っても敵を制圧できるほどの罠が……」
何だこいつら……どこの映画の主人公だよ……なんて考えながら再び置いてけぼりを食らう紅葉。
確かに、この3人の言ってる事は正しい。素人の紅葉にも説明されてからだがその事に気付く。
その証拠にこの大事な書類を置いてる部屋の警備が必要以上に薄い。
本当に大切な物ならたくさんの監視カメラや、大勢の警備員が居てもおかしくない。
それにも関わらずこの警備……誰かの意思でそうさせてるようにも感じる。
それに仮にもここは13の機関の一つだ、機関のメンバーがここら辺を徘徊してもおかしくはない、
それにも関わらず誰にも会わないと言うのは逆におかしい。
「待てよ! じゃあ、ここには誰もいなくてこの建物自体ダミーと言う可能性が―――」
「いや、それはないっすね。機関の住所は正式に記録されているっす。その記録すら嘘と言うのなら、もう手遅れっすね。
そんな事が出来るようになってる頃には膨大の権力がこの機関にあるはずっす。
自分たちはそれをさせないために動いてるんスから。この機関に権力がもうあるのなら、今、何をしようが手遅れ何すよ。」
「ちょっと待てよ。話が読めねぇ。第一俺たちは何をするためにここに居るんだ?」
「戦争だよ……」
火傷するぜ?
使ってみたかったんですよ~。
あれ? 使い方間違ってる?