第30話「戦闘の前の作戦」
紅葉は今、問題を抱えている機関の前に居る。機関の前と言っても堂々と前に立っている訳ではない。
怪しまれない程度の距離を取ってある。それと、
食事と軽睡眠を取った紅葉はかなり元気を取り戻し余裕を取り戻したせいで、
考える力も取り戻したのか、今の状況にものすごくへこんでいた。
そして何よりも紅葉は夜行性なのだ、この習慣を紅葉に付けた物は言うまでも無くネットだろう。
そんなネットだらけせいで考え方が少し変わっている紅葉は機関と呼ばれる建物を見て、真底がっかりしていた。
と言うのも、機関と言うからには兵器をたくさん装備した、大がかりの砦を想像していたのだ。
そしてその期待を見事に裏切った建物の本来の姿はどこにでもありそうな高層ビルだった。
しかしここもセキュリティーが厳しく、星の数のように監視カメラが付けられている。
「さて、侵入と言うからには見つからないように忍び込まないといけない訳だが
もちろん力押しする気は無いのだろう?」
「当たり前の事を聞かないでほしいっすね。まったくこれだからろくに学校に通わない不良は――――」
そこまで言って言葉を伏せるナンバー4、しかしそれには原因があった。
ナンバー4の弟であるカイは兄の頬に銃口を向けながら、
「俺の任務成功率を知ってるよな? 兄貴? それに比べてお前はどうだ?
最近、任務でへましたらしいじゃあねぇか?」
「誰に口聞いてんすか?」
そう言って素早くお互いに発砲し合う、サプレッサーと言って消音効果のある物を装着しているのか
音はかなり小さい、しかし完全に消音した訳でもなく紅葉たち以外無人の空間に銃声が鳴り響く。
お互い初発をかわし、距離を取り、再び発砲体制へと移り、発砲体制に入るとほぼ同時に発砲する。
初発は2人とも頬のすぐ横を通り過ぎて言ったのだが、2発目は違った。
発砲された弾はお互いぶつかり合い、角度をランダムに傾けながらこの場を去って行く。
そして3発目はなんと二つとも空中で静止している。
よく見ると真中にナンバー2が立っており、撃ち合った2人の直線状で銃の軌道から外れた場所で手を伸ばしている。
「お止めなさい! こんな時に仲間割れなどと言う浅はかな行動は許しません!
まったく……それにサプレッサーと言う物は消耗品なのでしょう? こんな所で消費して……
それにしても今の状況を把握していますの? 侵入ですのよ? 侵入!
そんな状況で大きな音を立てて……」
ここで大きなため息をつきながら紅葉の方へ振り返り、
「お怪我はありません? そう言えばあなたの怪我はわたくしの方で完治させていただきました。
任務に障害を齎したら困りますので。」
「あ、いえ。怪我はありません……」
「では、わたくしはこのビルをあらゆる角度で観察して警備の軽そうな場所を探したいと思いますわ。」
「どうやって?」
見て居れば分かりますわ、と小声で軽く笑いながら以前初めて出会った時に様に空中を見えない階段で上がって行く。
一段一段上がるのは遅いくせに見る見るうちに遥か空中へ上がって行く。
そして首が少し痛むぐらいに見上げた時、カイが話しかけてきた。
「そういや、お前は新顔だな、何か戦歴とかあるのか?」
「いや、何も……」
「なんだ、素人か……」
「そういや、お前さっき任務成功率がどうたらこうたらって言ってたな、で、その成功率はどれくらいなんだ?」
「100%だ。」
「ふ~ん……」
紅葉は任務と言う物を人生で一度もやった事が無い、
あえて言うのなら夏休みの宿題とかだろう。そしてさらに言うと、その成功率は0%を誇っている。
だからあまり実感がわかないのだ。そんな事を話し合っていると空中からナンバー2が降りてきた。
そしてナンバー2が言うには7階の第456号室が警備が手薄のようだ。
ここは会議室の様で本来ならば警備が濃いのだが、あくまでもそれは会議中の話である。
会議中の警備員などは今は会議の為の資料の保護を任されているらしい。
「さて、行きますか?」
カイが場を仕切るように言う。それに首を縦に振って答える残りの3人。
その時、ナンバー2が何かを思い出したかのように声を漏らす。
「あっ!」
「どうしたんっすか?」
「わたくしとした事がとても大事な事を忘れていましたわ。」
唯でさえ物静かな空間にさらなる沈黙が生まれる。
「それが――――――」
この作品、かなり過去に書くのをやめて、完結させていないんです。
ストックが底を付いたらどうしよう……