第28話「幻想破壊の祖」
「ところで、お前の本に色々と書いてあるらしいがそれって何なんだ?」
「う~? これ? 私の心剣だけど……要はメモ帳かな。」
「なるほど、それだけか?」
「書いてる物を具現化できるけど……」
どうやら、実際にアンノウンの本に書いてある物は具現化できるそうだ。
能力名はエンバディカタログブック/皆無目録、と言って
この力を宿している者はアンノウン唯一人らしい。
「そんな力を持っててもナンバー5に入れないのか?」
「う~……その質問は何かの嫌がらせかな?
一応称号もちゃんと、僅有絶無之具現目録
ってのがあって、これでもナンバー7なんだよ? 少し前までは6だったけど……」
「そんなに強いのか!?」
紅葉が目を丸くしてアンノウンの顔を見た、その時
アンノウンが問いに答える前にモミジが割って入った。
「前髪が長いねぇ……伸ばしてるの?」
「ううん……切りに行くのが面倒なだけだよ。」
「じゃあ、私が切ってあげるよ。けが人に対して言う台詞じゃないけどね。
こう見えて散髪は上手だよ。」
「じゃあ、……よろしく……」
そしてモミジが散髪の準備に取り掛かろうとした時、インターホンが部屋に鳴り響いた。
そしてインターホンから少し前に聞いた声が聞こえる。うぉほん! と作ったような咳の後に、
『ここはモミジさんの自宅でしょうか?』
高性能なのかモミジはわざわざインターホンの前に行かずにその場で返事をする。
「そうだよ。」
『そうですか。では、タカスギ コウハ君はそこに滞在中でしょうか?』
紅葉は一度モミジと顔を合わせ、不審そうにその場で返事する。
「はい、ここにいますけど……」
『そうですか……少しお話したい事ありますので用事が終わりましたら、
学園の方へ足を運んで頂けないでしょうか? もし今からでもお時間を頂けるのでしたら
そこまでお運びしますが、如何いたします?』
紅葉はアンノウンのビフォーアフター後が見れなくて少しがっかりしながら
めんどくさそうに答える。
「今から行きますよ。」
そうしてお邪魔しました、と言いながら部屋を出て、しばらく歩き
セキュリティーが厳重なガラスの自動ドアをくぐった先には、
想像はある程度ついたが案の定、学園のナンバー2が傘を差して待機していた。
後ろから夕焼けの光を浴びて、金髪が見事なまでに美しい。
紅葉がその美しさに少し見とれていると、ナンバー2は丁寧に礼をし、
「こちらですわ。」
そう言って後ろを向き堂々と歩いて行く。その先にはリムジンと呼ばれる車が5、6台止まっていた。
何やら怪しそうなスーツを着た、サングラスの男たちが無線で何かを話している。
他にもナンバー2の為にドアを開ける者や、ナンバー2を守るために周りを徘徊してる者もいる。
そこで紅葉は一つ気になったのだが、ナンバー2となればある程度の力は持っているはず、
なのにこんなにも警備を固める理由は……?
そして、その疑問を今も車に向かって歩いている本人に並んで歩きながら問いかける。
「な、なぁ。あんたって学園のナンバー2なんだろ? なのに何でこんな警備を?」
「えぇ、確かにわたくしの力を持ってすれば、例え実弾を持って来ようが負ける事はありません。」
しかしそのような動作を、なぜ、わたくしがしなくてはなりませんの?
それにあなたのようにわたくしを超えた力の持ち主が現れかもしれません。」
「理由は良くわかったけどよ。俺がお前を超えると言うのがいまいちわからねぇんだが……」
「いえ、わたくしだけではありませんわよ? 恐らくあなたはナンバー1すら超えてしまっているでしょう。そんなあなたに折り入ってお願いしたい事があります。」
その時、紅葉はたくさんのボディガードが見守る中、綺麗に転んでしまった。
慌てて起き上がろうと、うつ伏せの状態から仰向けになり
立ち上がろうとした時、白くて長い指が目立つ綺麗な手が紅葉に差し出された。
一瞬、紅葉はその綺麗な手に見とれていたが、慌ててその手を辿り、差出人の顔を見る。
そして、綺麗な手が良く似合う綺麗な顔付きをしたお嬢様は軽く笑いながら
「あなたのその力で幻想を破壊して頂けないでしょうか?」
あれ? 最弱設定で書いてたはずなんだけどなぁ……