第26話「疲労の中の青春」
結局、学園のナンバー2で称号が侵入阻害之超御嬢様であるウィルフルに助けて貰った紅葉たちは傷を癒すためにモミジの自宅に行く事になった。
モミジが言うには治癒効果の高い薬が家にあるそうだ。
アンノウンは現在、紅葉におぶられている。
足を撃たれたアンノウンは歩く事も出来ないらく、
今も頬を赤く染めながら紅葉の背中にへばりついている。
「あ~う~。ホントにいいの? 重くない?」
アンノウンは最初、紅葉におぶられる事を拒否したのだが傷がひどく歩けないと言う事で仕方なしに了承したのだ。
「いいっていいって、第一お前が撃たれたのは俺のせいなんだから。それより大丈夫か?」
うん……とやはり顔を赤くしたまま小声で返事するアンノウン。
ウィルフルのなぜか持っていた包帯で止血はしてあるのだが痛い事には違いない、
にも関わらず紅葉を心配させてはならないと言う気持ちで痛いとは言えないかった。
と、その様子を楽しそうに見つめるモミジ、
今もその楽しそうな目線を紅葉にぶつけていて、紅葉はその目線が痛かった。
そしてとうとう我慢が出来なくなったのか、いきなり叫び出した。
「いやぁ~。青春してるねぇ!」
モミジに対して反対側を見ていたアンノウンがその台詞にビクッと反応する。
紅葉も罪悪感でおぶっていたからあまり意識してなかったのか、急に顔が赤くなり出した。
「こ、これは、俺のせいでこうなったんだからこれくらいして当然だろ!」
「いや~。ごめんごめん、分かってても言いたくなるのだよ。」
と自分の後頭部をさすりながら謝りはしたがやはりどこか楽しそうに見えるモミジ。
後ろを良く見ると顔を真っ赤にして今にも溶けてしまいそうなアンノウンが居た。
自分の事を気軽に彼女やお嫁さんと言ったりしてるくせに密着したりするだけで
すぐに赤くなってしまうアンノウンだった。
「着いたよ。って言ってもここは私の本当の家じゃないけどね……」
そう言われて顔を上げたらそこには超豪華で超大きいマンションがあった。
とても奇麗に整われている庭に完全と思わせるセキュリティー。
恐らく、ナンバー5に入っている身なので家賃などを安くして貰っているのだろう。
「これめんどくさいんだよね……」
「これって、あの暗証番号打つやつか?」
うんと呟くと野球のピッチャーの様な綺麗なフォームで何かを空に投げた。
すると、どこかのベランダに掛けられている教会にありそうなベルが激しく鳴り始める。
どうやらモミジが投げた物は圧縮された空気のようだ。
すると、超強化ガラスが物音鳴らさずに開き始め、それを見たアンノウンが、短い距離くらいは歩こうと考えたのか、背中から降り始めた。
「さ、中に入ろう。あ、それと中に入ると能力が無効化されるからね。」
どうやらここは学園と同じ設備が整っているようだ。
それにしても紅葉はあのベルを鳴らすとなぜドアが開くのかが気になりはじめた。
そして中に入ろうと足を一歩先に出した、その時開いた
ドアからものすごいスピードで何かが飛び出してきた。
「ゴフッ!」
飛び出して来た何かは見事に紅葉に腹に命中!
そのまま飛び出して来た何かと共に地面を3mほど転がった後、
紅葉はお腹の痛みを気にしながらその物体を確認する。
「おねぇちゃ~ん! おかえり~!」
物体から女の子の声が聞こえたかと思ったら急に殴られた。
とてつもない力で殴られ再び3mほど飛ばされる、ノーバウンドで。
死ぬくらい痛い思いをしつつも強打した顔をさすりながら視線を前に戻すと、そこには
モミジと瓜一つの少女、いや、モミジよりひと回り若くしたような少女が居た。
「私の妹のカエデ(楓)だよ。仲良くしてやってくれ。」
そして視線をカエデに変え、
「もう……私はこっち、人違いだよ!」
「そ、そうか、よろしく。(殴った事は謝罪しないのな……あと、ドアを開けたのはこいつか……)」
今日一日でいろんな事があったのか、疲れ気味の紅葉はしぶしぶと中へ入って行く。
この後、さらなる疲労が待ってるとも知らずに……
青春してるねぇ!