第25話「侵入阻害之超御嬢様」
静かな空間に銃声が鳴り響く。それと同時にアンノウンが地面にひれ伏す。
よく見ると足を撃ち抜かれたらしく大量の血液があふれ出ている。
モミジと紅葉はそれを見て一瞬思考が停止した。そしてその一瞬の間に男が話し始める。
「結局は君たちが悪いんすよね……意図的な物じゃ無いにしろ被害を受けたのこっちなんすよね。
弁償すると言うのならまだマシも、逃げようとされちゃあこっちも黙ってはいられないっすよ?」
そして思考が再開された紅葉が立ち上がり、アンノウンの元へ走り出す。
「おい! 大丈夫か!?」
「うぅ~……痛いよぉ~。ごめんね、撃たれちゃった……」
「なんで、お前が謝るんだよ! 悪いのはあいつじゃねーか……」
そう言って立ち上がり、怒りに燃えた目で男を睨みつける。
そして決意を決め、紅葉が走りだそうとした時、何者かの声が聞こえた。
「御待ちなさい! あなたにはその者が倒せなくてよ?
それでも闘おうと言うのなら止めませんけど。」
そう言ってきたのは傘をさした金髪の女の子だった。
金色のドレスを着ている事や話し方からしてどこかのお嬢様なのだろうか?
「わたくし、あなたの事を思って言ってますの。分かってくれませんか?
ま、まぁ。死にたいと言うのなら好きして頂いて結構ですけど……」
だんだんと距離を縮めてくるその女の子を見て紅葉は驚いた。
何とその女の子は目に見えない階段を下りてくるかのように空中を少しずつ降りてきているのだ。
「ナンバー2がこんな所に何の用っすか?」
「ベルクラージュ、あなたを止めに……これは命令です。そんな無駄な事はお止めなさい。
もしこの命令に反すると言うのならわたくし、
全力を持ってあなたと対峙させていただきますわよ?」
ベルクラージュと呼ばれた男は舌打ちをして
「運が良かったすね……」
男はそう言い残しこの場を去る。それを見た女の子は安心したのか
ほっと溜め息をついて降りながら自己紹介をする。
「自己紹介が遅れましたわね。わたくし、ウィルフルと言って
プロテクションパーソナリティの司令部を務めてますの。
ちなみに称号は侵入阻害之超御嬢様ですわ。
この度はわたくしの部下が迷惑をかけてしまって申し訳ありません。
観覧車の方はわたくしが弁償しておきますわ。被害は恐らくゴンドラの外傷のみ……
遠慮はいりませんこと。それよりあなたのお友達の怪我の方が……」
そう言われ紅葉はアンノウンの方をに目を向ける。そこには女の子座りして
自分の傷を見る目に大粒の涙を浮かべるアンノウンが居た。
「紅葉君~、痛いよぉ……」
初めて体験する激痛に涙を隠せないようだ、少しでも衝撃を与えたら大泣きするだろう。
そんな様子を見た紅葉は自分の痛みに気付く。その痛みの元を辿ると手の平から大量の血が流れていた。
そしてさっきまで怒りで忘れていた痛みのあまり叫んでしまう。
「痛ったーーーーーーーー!!!」
ウィルフルって女の人の名前に相応しく無さ過ぎな気が……