第19話「未知の領域での出来事」
手を洗う音が聞こえ足跡が遠ざかって行く。
紅葉は恐怖が通り過ぎて行った事に安心する。
そして気付く。今の状況に……
「あ! って!? なんだこの状況は!?」
「あ~う~。紅葉君、大胆すぎるよ~。」
「あ、いや。違うんだ。これはそのスパイのせいで……」
「それなら別々に入ったらいいのに……なるほど!
そうゆう作戦だったんだね。初めから言ってくれればいいのに~」
「そ、そんな事は置いといて、さっさと出ような?」
そう言って密着状態から解放された2人、そしてトイレを出る。
そのまま学園も去り、アンノウンの要望で遊園地に行く事になった。
「まったく、遊園地に行く時刻じゃないだろう……」
「う~。場所決めてって言ったの紅葉君じゃん……
それに夜の12時まで開いてるからきっと大丈夫だよ」
「ちょ、おま、12時まで遊ばさせる気かよ!」
「ダメなの?」
アンノウンは子供みたいな無垢な瞳で紅葉を見つめる。
紅葉はその瞳を少し困った顔で見つめ返すが、よそ見した瞬間
電柱柱とぶつかりそうになる。それを何とか、かわしてやっと返事をした。
「いや、いいけどよ……何かキャラ変わったな、お前。」
「へ、変?」
「いいや、こっちの方が明るくていいよ。」
そんな会話を仲良く楽しそうに交わしながら歩いて行く。
この2人には電車やバス、タクシーと言った乗り物に乗る
と言う事が頭に浮かばないのだろうか、ずっと歩いている。
しかしそのうち紅葉がその事に気付いたのだろうか、タクシーを呼び止めた。
だが、アンノウンがものすごく戸惑っている。
この様子から察するとアンノウンはタクシーと呼ばれる乗り物に乗った事が無いようだ。
いや、ここまで戸惑われるとバスや電車にも乗った事が無いのだろう。
そんなアンノウンは勇気を振り絞りタクシーへと乗る。
中は意外と普通で一般の車と違う所は後ろのドアが自動で開く事と
前に料金のメーターがあることぐらいだ。それとタクシー独特の香り……
紅葉はもう慣れたのか少し疲れたような顔で外を眺めているが
アンノウンからすればここは未知の領域、興味津津といった顔でいろんな所を物色し始める。
シートベルトを伸ばしては手を離し引っ込めたり、
背もたれを上下させたり、前の座席の頭を置く枕を取って見たりと、
その様子を見た、紅葉はそんなアンノウンにとりあえず注意をし止めさせおとなしくさせた。
どうやらアンノウンは車すら乗った事が無いようだ。
とすると遊園地にも言った事が無いだろう。紅葉はとっさに推理してみた。
行き先を伝えたタクシーが勢い良く発進する。
しばらくアンノウンは外の景色を楽しんでいたみたいだが、それに飽きたのか
思い切り背もたれに、もたれこみ足を上下させている。
アンノウンは暇があったら足を動かす癖があるようだ。
紅葉も少し暇になったのか、その事について少し突っ込んでみる。
「そう言えば、図書室に居た時も足ぶらぶらしてたよな」
「見てたんだ……どこからどこまで?」
紅葉は墓穴を掘ったと冷や汗を流す。
わざわざ、部屋を一度出て気付いて貰ったのに実は気付く前から見てました
となると、大変な目に合わされるかも知れない。
そこで紅葉は少し強引に話を変えてみる事にする。
「あ、いや、その、可愛らしいなと思って、あはははは。」
「可愛らしい?」
何やら真面目な顔付きで聞き直してくるアンノウン
そんな真面目な顔をされると今さら嘘とは言えず(実際に可愛いが)
こちらも真面目な顔で返事をする。
「あ、うん。可愛らしいよ」
「……ありがと。」
少し照れたようで、少し赤い顔を少し下に向け相変わらず足を動かしながら返事する。
何でそんなにマジなんですかーーーーーー!?
っと心で叫ぶ紅葉。そんな時にアンノウンから予想もしなかった事を言われる。
前回から思ったんだけど、こういうシーンは、書いてて照れるよね。
だから恋愛は苦手なんですよ><
あぁ、恥ずかしい恥ずかしい