第18話「緊張の女性用トイレ」
こんなかんだであっという間に時は過ぎ、とうとう放課後が訪れてしまった。
そして終りのチャイムがなり次第、どこかへ行くヘル。
今から会う約束をしてる紅葉にとってそれは好都合だが
あまりにもそのヘルの行動が怪しすぎる。絶対何か企んでいる、紅葉は心の中でそう思う。
しかし、今の紅葉にはそれを突き止める時間が無い。紅葉も急いで目的の地へ急ぐ事にする。
そして例のごとく17分かけ図書室に着く。しかし待ち合わせ場所は図書室ではない。
その図書室の横のトイレである。なぜその横のトイレにしたかと言うと、
それには紅葉の秘策があった。と言うのも案の定、図書室の中にはヘルがうろついていた。
紅葉はこれにより密接が防がれるのを防いだのだ。ヘルは今ものんきに中で本を読んでいる。
紅葉はこんな時こそ気を利かせてロンリネスを使ってくれれば、
いいじゃないかと心の中で呟きながら、横のトイレに向かう。
トイレには当然だが男性用と女性用がある。もちろんこの学園も例外ではない。
ここのトイレにも普通に男性用と女性用があった。しかしその周りにアンノウンの姿が見えない。
そんな状況になり紅葉は少し推理してみる。
アンノウンの天然度からすれば女性用トイレの中に居てもおかしくないと……
しかし紅葉は男、まさかそんな所に堂々と入る訳にはいかない……
だからと言ってこんな所でアンノウンが出てくるのを待つ時間も無い……
と言うのもいつ待ち伏せに飽きたヘルが出てきてもおかしくないからだ。
トイレの外から呼べば早いがヘルがその声に気付く可能性がある。いや、気付くだろう。
周りは誰もいないおかげでとても静かなのである。
なんとかひそひそ話ぐらいならできるだろうが、
そんなボリュームでアンノウンが気付くはずがない。
そして悩みに悩んだ結果、紅葉は一つの案が浮かんだ、
案と言っても単純で簡単だ、そのアンノウンの居ると思われるトイレへ突入するのだ。
しかしこれは決して無謀ではない。
さっきも言ったが、今、この周りには誰もいないのだ。しかも来る様子も無い。
しかしやはり何か抵抗があるのか頭を抱えて考え込む紅葉。
とうとう少年は意を決し禁断のエリアへと足を踏み入れた。
「おーい、アンノウン居るか? 俺だ、紅葉だ。」
紅葉はヘルには絶対聞こえないくらいのボリュームでアンノウンに呼びかける。
しかし返事は無い。それにしてもこのトイレ、トイレのくせにとてつもなく広い。
普通の学校の教室1個分くらいはあるだろう。そんな広いトイレのくせに中は異様に綺麗だった。
誰が掃除してるんだろうとか思いつつ奥に進む紅葉。
そして大きな鏡のある洗面所らしき所に着く。その大きな鏡の前に長い前髪を整える少女が居た。
「なんだ、やっぱりこんな所に居たんだ。」
「え!? だ、誰!? 紅葉君!?」
アンノウンは女性用トイレに男である紅葉が入ってきた事に驚いては無く、
単純におめかし、している所に男の人に話しかけられた事に驚いているようだ。
そんな中、紅葉を恐怖のどん底に陥れる声が聞こえる。
「はぁ~あ、結局、紅葉もあの女も来なかったわね……
絶対、図書室で待ち合わせしてると思ったんだけどな~」
その声を聞き硬直してしまう紅葉、もし自分が女性用トイレに居る事がばれたら
どうなる事やら……しかもアウンノンと一緒に……
しかし硬直しているのは紅葉だけである、むしろアンノウンはいきなり硬直状態の
紅葉を見て疑問を顔に浮かべている。
と言う事はアンノウンは今朝ケンカした相手の声も忘れていると言う事になる。
「やべ……」
思わず声を漏らしてしまう紅葉。ここまでの距離は約5m
その時、紅葉はとっさにアンノウンの手を掴み共にトイレの中に入り鍵を閉める。
「あ! うぅ~、強引だよ~」
「シッ! どうやら俺を探しているスパイが来たようだ、少し静かに。」
「は、はい!」
トイレ全体は広いくせに中は意外と狭く、ほぼ密着状態だった。
いや、体制的にはアンノウンが抱きついている状態である。
2人が入った所は和式らしく真中に大きな穴をあけている。そのせいでもっと狭く感じる。
アンノウンは初めて触れる男の子の肌に緊張が解けないらしく、心臓を大きく鳴らしている。
その鼓動が肌を伝わり紅葉にも伝わってくる。
しかし紅葉はそんな事よりもこの事がばれた時が怖いらしく、その事に緊張している。
やがて、手を洗う音が聞こえ足跡が遠ざかって行く
かなり無理矢理なとこが多発してますね^^;