第17話「気紛れの検査室」
「お前! 俺に何か恨みでもあるのか!」
「う~。全部実話だよ? 何か変な事でも言った?
昨日だって裸と下着は一緒って言ってたし……」
昨日の事がすべて裏目に出る紅葉だった。
それにしても怒られて少ししょんぼりするアンノウン。この様子から見て
彼女は素で言ってるようだ。それにしても、ものすごい天然さんだった。
そしていきなり表情変えて、さらに問う。
「っで、今日はどこに遊びに連れて行ってくれるの?」
「は? 会うってそうゆう事か?」
「うぅ~。ただ会うだけなんてつまんない。どうせならもっと楽しい事しようよ!」
「急にキャラ変わったな……まぁ約束はしたし、遊ぶんだけど……
あいつのいないとこで遊ぼうな?」
急にキャラが変わったアンノウンも可愛らしいなと思いつつ、とりあえず大事な事を告げる
「あいつって、あのおばさん?」
「うん、まぁ……そうだが、えーと……実は俺、国家レベルの重大任務を受け持っていて
遊んでいたら怒られるんだよ、だから見張り役のあいつにばれない様に遊ぼうぜって事。」
「なるほど~。すごいんだね、紅葉君って! っで、どこに行く?」
やはり天然さんだった。それと、彼女はとにかく紅葉と遊びたいらしく
しつこく行き先を聞いてくる。今まで遊んだ事が無いのだろうか?
「あ、えーと。俺、ここに来てあまり時間たってないんだ。
よく知らないから適当に決めちゃって、じゃあ見張り役がキレそうだから
俺はそろそろ行く。待ち合わせは例の図書室の横のトイレな。」
「あ、う~。いっしょに登校したかったのに……」
半ば強引に話を切り上げヘルと共に急いで
いじけ虫となったアンノウンから離れる。
と言う訳で何とか距離を取った紅葉だったが相変わらずヘルの様子が怖いので
検査室(保健室)で様子を見て貰う事をお勧めしたら危うく氷漬けにされる所だった。
紅葉に無効化できる力が無かったら彼はもうこの世にはいなかっただろう。
しかし、目的も無いくせに気分で検査室に通う事にした2人。
ホントにただの気紛れらしい。
「何で、検査室になんかに行くんだよ?
さっきは怒って俺を氷漬けにしようとしたじゃないか」
「授業まで時間あるし、暇つぶしよ。」
そんな話をしながら検査室に向かう2人。
やがて、紅葉にはあまりいい思い出の無い検査室に着く。
失礼します。と一声かけてから中に入る2人。中はやはりたくさんの機器に囲まれていた。
そんな危機の中にポツンと取り残されたかのように地べたにあぐらをかいている
科学者らしき人物が1人、そう、半ば強引に真犯人を見つけろと言ってきたあの先生だ。
その先生の名をサイエンスと言う。
胸のあたりに名前の書かれたネームカードみたいなものが安全ピンでとめられている。
「君は……紅葉君かね? 今の状況でも報告しに来たのかな?」
「あ、いや。俺はこいつの付き添いです。」
そう言ってヘルを指さす。
その指の先には機械の上の乗っているバスケットの中のお菓子を物色しているヘルが居た。
そして、その本人はこう言う。
「今日もおいしそうなのがいっぱいあるじゃない」
紅葉はその台詞を何推測してるんだと半分引きながら聞き流していたが
サイエンスからその台詞に対する返事が返ってきた。
「あぁ、好きなだけ食べると良い」
以外にも優しいサイエンスさんだった。
その見た目とは裏腹に思いもしなかった台詞が出てきた事に硬直する紅葉だった。
それは人を見かけで判断してはいけないと言う良い例だった。
そしてこの時、確信する。ヘルの狙いはあのお菓子だと言う事に。
カリカリと軽めの音を口元から漏らしながら近寄ってくるヘル、
その手には大きな梅の入った袋が握られていた。
そしてその袋を紅葉に差し出す。
「ん」
「んって……食べていいのか?」
「いいのよいいのよ。貰える物は貰っときなさい。」
そうしてその袋を受け取る紅葉。今すぐには食べずにそれをポケットにしまう
そして二人はこの場を離れる。何と言うかとてつもなく失礼だった様な気がする……
アンノウンは本当に可愛いですね~。
え? ほんと、親バカじゃないすよ?
これが言いたいだけ。とかでも無いですよ?