第12話「当意即妙之蛙鳴蝉噪」
「そ、そうだ。お前今妙に機嫌いいよな~。いつもなら、!? ……」
ナンバー3は話の途中でその言葉を止めてしまった。
と言うのも自分の顔の横を何かがかすったからだ。
恐らく空気を圧縮されて作られた空気の刃。
ナンバー3の右頬に切傷を作り、後ろの時計台の鐘を鳴らし傷つけて行く。
その鐘がうるさく鳴り響いている中、鬼は言う。
「今の私は機嫌が悪い。」
モミジは自分と対等に話してくれた少年と同じく対等に話せた事に機嫌が良かった。
しかし逆にその事に機嫌の良い自分が居る事に対して機嫌が悪かった。
ナンバー3は少し焦りながら和協しようとする。
「お、おいおい。落ち着けって、俺はそんなつもりで言ったんじゃあねぇよ
ほ、ほら。これ喰うか?
粉ポテト、さっき防壁の近くで買ったんだけどよ。って過程。」
しかし、モミジからの返事は無い。
沈黙を好まないナンバー3はさらに口を動かす。
いや、動かせさせる。
「私は粉ポテトが食べたいです。」
「な? 食べたいだろ?」
モミジは自分が思ってもいなかった言葉を
自分の口で発したので驚きを隠せない様子。
そしてナンバー3を睨みつける。
「おぉおぉ怖い怖い。そんな目で睨みつけるなよ。
俺の能力はディアパソン(交渉介入)って言ってな、
動物に言葉を話させる力だ。動物ってことは鬼も人間も例外じゃねぇぜ?
まぁ、お前が声帯を壊してたら別だけどな。良く考えてみな、
そんな力しか持たない俺は直接攻撃系ではないんだよ。
お前と今ケンカしてもバカ見るだけだろ?
俺は1対1より1対多の方が得意なんでね。」
「よくそれで、ナンバー3になれたもんだね」
「俺には人並み外れた話術があるって話。
一度この話術で混沌を招いた事もあったけなぁ~。」
「じゃあ、あんたを倒せばナンバー3。」
「その前におさらばって感じ。」
ナンバー3は特に空を飛んだり闇に消えたりする事は無く
屋根の上をひたすら走って去って行った。
追いかけたら絶対追いつくが、モミジは追いかける気が無くなった。
これもあいつの話術の内なのか?
そんな疑問を胸に、モミジは再び下に目を向ける。
しかしそこに2人の姿は無かった。
これで終わったら、良い終わり方じゃないですか?
いや、良くないか^^;
当意即妙之蛙鳴蝉噪はナンバー3さんの事ですよ~。
そして今更ですが、なぜ鬼? と思った人も居るんじゃないでしょうか?
要は差別を受ける人物が欲しかったのです。