第11話「落着の後」
少年が孤独の道を歩いてきた鬼を呼び止める。
孤独と言う道を歩かせないために。
「逃げるなよ! まずはヘルがお前に、お前が俺にごめんさいすんだよ!
同じ学園の仲間として当たり前だろ! そんな事!」
鬼は思わず振り向いてしまう、少年と少年の横で顔を引きつらしているヘルが居る。
そして、少年がヘルの手を持ちこっちへやってくる。
「まずは、ヘルがごめんなさいするんだ。こいつは何も悪いことしてないだろう?」
ヘルは一瞬戸惑ったが紅葉の言葉に納得したのか、
顔を下に向け小さな声で言う。「ごめんなさい」と。
「次はお前が俺にごめんなさいって言うんだ」
「ご……ごめん……」
いつもの鬼なら恐らく謝罪しなかっただろう。
しかし今、鬼は鬼ではなく仲間として見てくれている紅葉に
同じ仲間として謝ったのだろう。
出会って2日、たったこれだけの期間で仲間と言って良いのかは
鬼には分からなかった。しかし少年は良いと言うに決まっていた。
知り合った時から仲間と言うに間違いなかった。
そして唐突に少年は問う。
「お前、何かあったのか?」
鬼はなぜか泣き出してしまった。なぜかは少年には分からなかった
と言うのも不意に聞いたら鬼はなぜか泣き出してしまった。それだけだったからだ
特に大泣きする事は無く、目から滴が垂れているくらいだ。
それを見た紅葉はおろおろとして
身長が小さめの鬼と目線を合わせる。
そしていざ、目線が合うと目を少しずらしてしまう
「あ~……俺でよかったら話聞こうか?」
鬼は何も言わないで、そっぽを向きひたすら泣いている。
今まで孤独の中で過ごしてきた鬼にとってはこんな変哲もない問いかけが
心に良く響くのだろう。
しかし泣くばかりで何も答えてくれないとなると紅葉はすごく困る
「あ、え~と……名前は?」
「モミジ……」
やっと話してくれた。その事に紅葉は安心する。
「そうか。そうだ、一応聞いておこうかな。その名前、漢字ある?」
ここの住民は漢字の名がない。だからあえて聞いたのだろう。
「本当は無いけれど、特別に与えて貰った。」
「へ、へぇ……なんて言うの?」
「紅葉……紅って書いて葉っぱの葉でモミジ」
紅葉は少し驚いたが、世界は広いから同じ名前があってもおかしくない
と整理して納得した。
「じゃあ、私はもう行く……」
どこか悲しそうでうれしそうな鬼、モミジは霧になり消えていく。
そして残されたヘルに紅葉は問う。
「お前、元ナンバー5だったんだな。」
「そ、そうよ。あいつからナンバーを取り戻すために……って、なんか文句ある!?」
「ねぇよ。けどな暴力は良くねぇだろ。」
「この学園は力ずくで倒したら元のナンバーが返して貰えるのよ!」
「それでもだ! それでも暴力で解決しようとするな。わかったか?」
「わかってるわよ……そんなことぐらい……」
紅葉は小声で承知するヘルを笑顔で頭を撫でようとした。
しかし撫でれなかった……
と言うのも頭を触る直前、手を握られ背負い投げされてしまった。
背中を土とはいえ地面に強打してしまい、息を一気に吐き出してしまう。
「ゴフッ、全然分かってない……」
「あんた、どうやってあの鉄球小さくしたのよ!」
しかしそこに紅葉の意識は無かった。
腹に鉄球をぶつけられ立って居るのがやっと、という時に
挙げ句の果てに背負い投げ。最後に無念の声を残し眠りに着いた。
そんな状況を学園の屋根で見つめるモミジとナンバー3
いや、正確にはそんな状況を見つめている時にナンバー3が現れたと言うべきか。
しかし、屋根と言うのはこの学園には屋上がない訳ではない。
屋根ではないと2人の様子が見えないからだ。
「今さら何の用? 私にふっとばされに来たの?」
そのまま下の2人を見つめながら脅すように言う。
「まさか。それにしても鬼は目が良いねぇ。この距離であいつらが見えるのか。
視力は9と言ったところか。それにしてもこの学園は広いよな。って感心。」
しばらく沈黙が続いたが男が慌てるように話す
どうやらこの男は会話が途絶えると落ち着かないようだ。
「そ、そうだ。お前今妙に機嫌いいよな~。いつもなら、!? ……」
ナンバー3は話の途中でその言葉を止めてしまった。
話の進め方が強引なので、不自然かもしれませんが、気にしないでくさい^^;
ってか、気にしないで><