番外 フネスリーデン国のさる王の御代
第六章「魂の半分 7」で、クラーエスが読もうとしていた物語
……フネスリーデン国のさる王の御代、盛大な園遊会が催され、たいまつに照らされた夜の園庭の片隅で、第九王子が美しい魔女と出会った。魔女は生身ではなく、影であった。
魔女は園遊会に人と共に遊ぶ純白の孔雀の影を手にしたいために来たのだと告白した。影となって訪れたのは、自分はリンディルラーウの塔にとらわれの身であるからだとも、告白した。魔法使いを塔に閉じ込めるのは国の安寧のため、災いを退け国家を守る魔法なのだと。遠い昔、王命を受けて青霧の向こうの黄昏の国へ旅をし、戻ってこれた時、王国の平安のために塔に住むことを運命づけられたのだと。塔の中にひとりぼっちなのだと。長大な無為の時間を塔の中に影を集めたり、自身が影になって触れることの叶わない外の世界を彷徨ったりしているのだと。そのようなことを魔女は打ち明けた。
塔の扉を開くことが出来るのは、神器を持つフネスリーデン国王のみ。
数年後、第九王子は謀反する。
外遊の途にあった王の帰国を許さず、諸王子をすべて監獄塔に幽閉したのだ。
だが、第二王子のみ、さる侯爵の手引きを得て難を逃れる。
侯爵領は豊かで広かった。
王国は二分され、戦乱は幾年も幾年も続いたが、第九王子はついに侯爵と第二王子を破り、国王となって神器を手に入れた。
そうしてようやく魔女の囚われた塔の扉を開いた時、魔女は出会った頃のままに美しい姿をあらわしたが、王となった第九王子は妃と世継ぎに恵まれた白髪の老王となっていた……




