温かい日々
あっという間に数日が過ぎ、僕はお店の雑用も随分と慣れてきた。
秋本さんと新藤さんとも、毎日夜に寮で酒を酌み交わし仲良くなっていった。
僕が来るまでは各自部屋で買ってきた食事を済ませ、店以外ではあまり話す事もなかったそうだが、僕が来てからは三人で一緒に帰り、途中の店で酒とおつまみと食事を買い、それまでほぼ使う事がなかったLDKで三人で飲むのが楽しみになっていた。
この日は営業が終わった後、山口さんが奥さんも呼んで歓迎会をしてくれるとの事だった。
奥さんは美容院を経営しているという。
お店の近くの居酒屋に集まり、酒が進むと皆の話が弾んだ。
山口さんも新潟から上京してきたそうで、東京の有名店で修業をしたのちに、今のお店を開いたとの事。
夢を持って故郷を離れて出てきた人たちが集まる街ならではの話が聞けた。
また休みの日がやってきた。
この日は寛太郎さんからのバイト先の飲み会に来ないか?との誘いだった。
夕方、神谷町の駅で待ち合わせをした。
寛太郎さんのバイト先は、その近くにある有名芸能人などもよく家族で休日を過ごしに来る高級な会員制の施設だった。
寛太郎さんに指定された場所で待っていると、寛太郎さんが迎えにきてくれた。
そして僕を連れて他の人たちと合流する予定の表参道にある居酒屋に向かった。
合流先の居酒屋に入るとすでに他の人は来ていた。
集まったのは三十代くらいのとても美人な女性二人と四十代前半くらいの男性だった。
「この子?日比谷公園で寛太郎さんが拾ったって子」
「ドラマみたいで面白いじゃん!」
どうやら寛太郎さんが職場の人に話した話が広まって、興味を持った人が来たようだった。
向けられる好奇な目に僕は照れながら乾杯した。
話は弾み、僕のこれまでの話を皆が面白がって聞いてくれた。
寛太郎さんは隣で静かにビールを飲みながら、時々僕の肩を叩いた。
飲み会がお開きになり解散した後、僕と寛太郎さんは並んで夜の青山アパートの前を歩いた。
とても風情ある佇まいに胸がジーンとした。
しかし青山アパートを見るのはこれが最初で最後になった。
そうこうしているうちに八月は終わり、自宅通いの職人さんの山本さんがお店にやってきた。
二十代後半の落ち着いた感じの人だった。
「本当に助かったよ。ありがとう。店の事はもういいから就職活動に専念してください。これまで通り寮にはいてくれていいから。でももったいないな~、床屋になるならいつでも言ってよ」
山口さんは笑顔でそう言ってくれた。
読んでいただき、ありがとうございます。
文章を書くのは初心者なのでよみづらい所も多々あるかとは思いますが、よろしくお願いします。




