新しい出会い
ドラム缶バッグ1つは寛太郎さんが持ってくれ、僕は残りのドラム缶バッグ1つとハードケースに入ったギターを持ち、寛太郎さんに連れられて電車に乗った。
着いたのは都営三田線の白山駅。
地上に出て、緩やかな坂道を少し歩いた所にあるジョナサンに寛太郎さんと僕は入った。
店内は明るく、ファミレスの匂いが漂っていた。
僕たちは窓際の席に座った。
「好きなの頼めばいいよ」
そう言って寛太郎さんがとメニューを渡してくれた。
僕はとんかつ定食を注文した。
「その床屋さんはすぐ近くだから、朝8時にここに来るよ」
寛太郎さんはそう言って、ドリンクバーを追加で注文し、会計を済ませて帰っていった。
僕は、時々ドリンクバーの飲み物を飲みながら夜を明かした。
夜の白山は静かで、街灯が柔らかく道を照らしていた。
明日の朝が、怖いような、楽しみなような、不思議な気持ちだった。
八日目の朝。
8時少し前に、ジョナサンの前に立っていると、寛太郎さんがやってきた。
「行こうか」
歩いてすぐの、その辺りでは一番賑やかな通りに面した建物の2階にその床屋さんはあった。
寛太郎さんに続いて階段を上りお店に入った。
「おはようございます。昨日電話した……」
寛太郎さんが声をかけると、山口さんはほうきを置いて、にこっと笑った。
三十代後半くらいの、穏やかな顔立ちの男性だった。
「鈴木翔太です。よろしくお願いします」
僕は頭を下げた。
「とりあえず入って。話は中で」
店内は白が基調の明るい店内で改装したばかりのような雰囲気だった。
これまでの経緯を僕は全て山口さんに話した。
「うちは今、三人で回してたんですけど、一人急に辞めちゃいましてね。9月になったら自宅通いの職人さんが来る予定なので、8月手伝ってくれたら助かります。9月から就職活動してもらって、寮には落ち着くまでいてもらって大丈夫ですから。応援しますよ」
山口さんはにこやかに笑って言ってくれた。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
僕は深々と頭を下げた。
「じゃあ、さっそく今日から手伝ってもいますね」
山口さんはそう言って満足そうに頷き、手を差し出した。
僕はその手を握り返した。
9時頃、二人の従業員が出勤してきた。
山口さんが簡単に僕を紹介してくれた。
「今日から手伝ってくれる鈴木翔太君。寮に住むから。未経験だから掃除とか雑用とか二人で教えてやってくれ」
「秋本です。よろしく」
北海道出身で26歳の落ち着いた雰囲気の男性。
「新藤です。よろしくお願いします」
18歳で九州出身との事。まだあどけなさが残る顔に、お洒落な髪型。
突然の新人の登場に戸惑いながらも、二人はそれぞれ自己紹介をしてくれ、笑顔で迎えてくれた。
その後、すぐに仕事は始まった。
まずは開店前の準備から始まり、あっという間に夜になり、営業が終わった。
片付けをし、店を閉めた後、山口さんが、寮に案内してくれた。
店から徒歩20分くらいの古い13階建てのマンション。
3LDKの部屋で、LDKは共用。
6畳くらいの個室が僕に割り当てられ、窓からは路地が見えた。
「布団は押し入れにあるから使ってくれていいよ。わからない事とか困った事があったら二人に聞いてくれたらいいから」
そう言って山口さんは帰っていった。
山口さんが帰った後、翌日店が休みなのもあり、秋本さんがコンビニで酒を買ってきてくれ、慎ましいいながらも歓迎会をしてくれた。
今までの経緯も話し、二人とはすぐに打ち解けられた。
その夜、僕は久しぶりに布団で眠る事ができた。
固いベンチではなく、柔らかい布団の上で体を横たえると、肩と背中のこわばりが少しずつ解けていくようだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
文章を書くのは初心者ですので、読みづらいところは多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。




