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あの夏の冒険  作者: 土御門惟愛


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プロローグ

 僕の家が他の家とちょっとちがうな~と思い始めたのは小学生の低学年くらいだったかな。

 僕の父さんは住み込みの人も一緒に暮らす忙しい商家の次男。とはいえそんなに大きな商家ではない。全盛期には七人もの住み込みの人がいたそうだけど、今は長男の叔父さんが継いで、お祖母ちゃんと二人でやっている。

 そんな家だから、昔は祖父ちゃんの休みはお盆と正月三ケ日くらい。父さんも子供の頃から学校から帰ったら毎日すぐに店の手伝い。

 家族で旅行に行った思い出も、休みに親にどこかへ連れていってもらった思い出もない。

 そんな家に育った父さんだから子供の頃から理想の家族像を思い描き続けていたのも無理はない。

 僕の家族はそんな父と母、そして4歳年下の妹の四人家族だ。

 小学校の二年生くらいの時だったか、学校帰りに友達と遊ぶ約束をして家に帰ったら父さんは車のエンジンをかけていて妹と母さんは玄関で出かける準備をしていた。

「帰ったか、買い物に行くから、ランドセルを置いてきなさい」

 父さんはエンジンの暖機をしながら言った。

「ごねん、友達と遊ぶ約束しちゃったから行けないんだ」

 僕は申し訳なさそう言った。

「家族で行くって言ってるのに自分だけ何を言ってるんだ」

 と父さん。

「すぐに電話かけたら間に合うんじゃない?」

 と母さん。

「今日は友達と遊びたいから……」

 と僕が言うと父さんは怒った顔で、もういい。と言って母さんと妹を乗せて車をスタートさせた。

 友達の家から帰ってきたら家族は先に帰っていて、父さんは僕に一言も口をきかない。家の中はお通夜の夜のような空気になっていた。

 父さんは怒るといつもこうだ。

 口をきかなくなる。何を言っても無視。謝って何が悪かったか父さんの考え道りの事を言えば同じ事を数時間に及んで言い続ける説教の後、元に戻る。

 でもこれってどうなの?子供にとって親に無視されるほど怖いことはないよ。親に見捨てられるのって子供からすると何よりの恐怖だから。

 これじゃ、逆らうんじゃなくても自分の考えも言えたもんじゃない。

 でも決して悪い人ではないのはよくわかってる。とても家族思いで、休日には毎週のように遠くの色々なところに僕たちを連れて行って、父さんは僕たちのことを自分の全てだと思ってくれている事はわかっている。

 でも、成長するにしたがって父さんの理想にそえないこともたくさん出てくる。

 一事が万事だけど、例えば小遣いを貰い始めて小遣いを貯めて何かを買っても、一言の相談もなくコソコソと何かをやっている……となる。かといって相談をすると、のめり込むのはお前の悪い癖だ。と余計に警戒されることになる。僕はいつの頃からか本当にコソコソしないと何もできなくなった。

 そんな僕も大学生になったけど、長い年月でもうその頃には僕と父さんの間には埋められないくらいの亀裂ができてしまってた。

 父さんは小さな自営業を営んでいた。僕が中学生の時にバブルが崩壊して、数年間はほとんど影響なかったんだけど、だんだん不景気が個人事業レベルまで浸透してきて、その頃にはうちは開店休業状態だった。家計は火の車。

 母さんはパートに出て、僕は学費や自分の身の回りのお金をバイトで稼いで月に5万円だけど家に入れてた。その頃になると父さんは毎日酒を飲んでは荒れてた。あの頃の食卓の空気は二十年以上たった今でも夢に出てくることがあるくらいのトラウマになってる。

 いつも矛先は僕に向いてた。無言でいても父さん以外の誰かと話をしていても、いつどんなところで地雷を踏むかわからない。砂を食べているような食卓だった。

 そして大学四年生の夏、その日はおとずれた。

その夜も僕たち家族は無言で食卓を囲んでた。テレビがついていて視ているわけじゃないけど、そっちを向いている方が無難だったからテレビを視てた。母さんと父さんが二人で何かを話し始めたのはわかってたけどそのままテレビを視ていたら、急にテレビの電源を切られて、父さんは僕に怒鳴り始めた。

「そうか!家族が話をしてるのにお前には他人事なんだな!」

 始まったか……。

 話はどんどんこじれて、と言ってもこちらは特に反論はしない。ひたすら収めるように努めてるんだけど。

 その時は就職活動で思うように稼げなくて、その5万円が入れられない月も時々あった。話はお金の話に……。もう味噌も糞も一緒くた。

 高校の学費を出してやっただの何だの……って。もう僕もこの日は何だか虫の居所も悪かったのか、だんだん腹が立ってきた。

 土下座をして謝れ!って言ってきたから、

「阿保らしいわ!やってられんわ!」

 って言ったら殴りかかってきた。サッとかわしたらその勢いで父さんは転んだ。それを見て、今だ!ってとりあえずいつも持ってる鞄だけを持って家を飛び出した。

 夏休みに入ってたけど幸い通学定期が数日残ってたから、とりあえずは梅田に出てこれからの事を考えようと僕は電車に乗った。

 そうして僕のあの夏の冒険は始まった。

読んでいただき、ありがとうございます。

まだ書いている途中ですので間が開くこともあるかもしれませんが週に1回か2回くらいは投稿できればと思っていますので、よろしければお付き合いください。

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