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安全圏では何も起きない俺が、最悪の状況でだけ最強になる  作者: 能力者管理委員会


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第1章5 【 結果 】

 最初に戻ってきたのは”音”だった。


 遠くで鳴るアラーム。

 低く、規則的な警告音。


 「……っ」


 目を開けると、天井が見えた。

 白い。さっきの部屋だ。


 「……」


 喉が痛い。

 全身がひどく重い。


 体を起こそうとして、諦めた。


 ああ、これ。

 交差点のときと同じだ。


 「終わった…のか?」


 記憶が、無い。

 歪みが迫ってきたところまでは覚えている。

 だが、そこから先がまるっと抜け落ちている。


 「……はぁ」


 結局記憶には残らないか。


 ガラス越しに、人影が動いた。

 扉が開く。


 「意識、戻りましたか」


 一ノ瀬だった。

 いつもと同じ無表情。

 でも、どこか少しだけ違う。


 「……どうなりました?」

 

 「実験は、終了しました」


 それだけで察する。

 

 「俺、やっちゃいました?」


 「はい。やっちゃいました」


 即答。


 胸が、ぎゅっと縮む。


 「歪曲現象は完全に消滅。

  再度兆候も無し」


 「……死者は?」


 「あなたが死んで無いのなら、ゼロです」


 その言葉に、少しだけ息を吐いた。


 「そりゃよかった」


 本心からの言葉だった。

 でも。


 「代わりに」


 一ノ瀬は続ける。


 「あなたのデータは、非常に問題のある結果を示しています」


 ……デスヨネー


 「発動中、あなたの生態反応は通常範囲を完全に逸脱しました。

  脳波、筋電位、知覚処理……」


 彼女はタブレットを見下ろす。


 「能力……というより、”状態遷移”に近い」


 意味は分からないが、ろくでもないころくでもないこと


 「……俺、何をしたんですか」


 「知りたいですか」


 一ノ瀬は、俺を見る。


 「正直、あまり」


 「それが正しい判断です」


 即答だった。


 え、そこは否定しないの?


 「あなた自身が、その時間を”認識していない”ことが、

  最大の防波堤です」


 防波堤?


 「もし、発動中の自分を自覚できるようになれば――」


 少しだけ、声が低くなる。


 「あなたは、もっと危険になります」


 背中が冷えた。


 「……あれ、モンスターですか」


 「いいえ」


 一ノ瀬は、はっきり言った。


 「あなたは、モンスターを終わらせる側です」


 その言葉の重さが、すぐには理解できなかった。


 「今回の歪曲体は、通常なら数十人の犠牲が出てもおかしくありません」


 「……」


 「ですが、あなたが発動した”何か”は、

  能力の成立条件そのものを破壊しました」


 つまり。


 「殴ったとか、凍らせたとかじゃない?」


 「ええ。

  『存在できなくした』」


 ぞくり、とした。


 そんなの、強すぎる。


 「……で、俺はこれからどうなるんですか?」


 一ノ瀬は、少しだけ間を置いた。


 「あなたは、

  ”未分類特異事例”として仮登録されます」


 「日本語でお願いします」


 「日本語なんですが」


 「……」


 一ノ瀬は深いため息をつく。


 「要するに――」


 彼女は、静かに言った。


 「あなたは、自由ではなくなります。

  監視対象です。まぁ、必要に応じて、出動要請もあります」


 「……拒否権は?」


 「ありませんが?」


 即答、二回目。


 天井を見上げる。


 「まあ……知ってました」


 どうせ俺だし。


 「でも」


 一ノ瀬が言う。


 「あなたを無理に使うつもりはありません」


 「……ほんとですか?」


 「あなたの能力は、

  ”追い込まれたとき”にしか機能しない」


 だから。


 「あなたを追い込むこと自体が、

  最大のリスクになります」


 皮肉な話だ。


 俺は、力を持ってしまったせいで、

 力を使えない。


 「……それで、いいです」


 正直だった。


 「できれば、このまま普通に――」


 言いかけて、止まる。

 普通って、なんだ。


 「一つだけ、伝えておきます」


 一ノ瀬は、扉に手をかけた。


 「今回、あなたが消した歪曲は――」


 振り返る。


 「誰かが意図的に発生させたものです」


 「……え?」


 「つまり」


 彼女は言う。


 「あなたの”条件”を、

  試している人間がいる」


 背筋が、凍った。


 どうやら俺は――

 ただの事故に巻き込まれただけじゃ、なかったらしい。


 


 

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